勝ち目のない
マリア、ユウヤは氷で出来た人形に苦戦していた。どんなに撃ち込んでも固く傷ひとつ付かなかった。どんなに魔力を込めても駄目だった。
「ならよぉ! これならどうだ!」
《رصاصه أصعب من الروح احم نفسك من تدمير العدو وتدمير السماءات.》
マリア自ら考えた弾を装填して撃ち込んだ。すると氷人形の左腕が吹き飛んだ。そしてマリアの回りに魔力の渦が立ち込める。
骸 福
ー臨界点突破ー
手に持っていた銃が変形する。そしてマリアの体内に入り込む。
《終わりを告げる悪神》
【天帝銃神】
マリアは手をあげると空に幾つもの術式が展開し、そこから銃弾の雨が降り注いだ。氷の人形は形も残らずに散っていった。ランギル本体には当たらなかったが二体倒すことができた。
「へぇ今の世代は臨界者が多いね。あの頃は数人しか居なかったからねぇ。」
「よそ見とは余裕だね。」
「そんなことはないさ……君だけでここまで追い込まれたのは初めてだよ。」
「そうは見えないけどね……!?」
フィフスはランギルから一旦離れてマリアたちと合流する。
「危なかったな。もう少しで凍るところだった。」
マリアが学園長の腕を見ると凍りついていた。学園長の常時発動している空間魔法を通り抜けて凍らせていた。
マリアが回復魔法を使うかと訪ねると自らの体温を上げ、氷を溶かした。腕の感触を確かめながらランギルを見た。
「詰まらないな。」
「何が?」
「本気で来なよ。アーサーくんたちと殺ったように……あの人はやるなといったけど堪忍袋の緒がきれたからね。君は本気で来ないのなら抉り取るよ?」
ー神格解放ー
空間が抉れ、虹色に輝く空間が出現した。マリアたちは戸惑う。
《空間神》【アストライア】
空間が抉れ、そこから現れたのは服装も雰囲気も変わったフィフスが空に立っていた。フィフスは空の空間を固定し足場を作っていた。
「やれやれ……面倒なことになってきましたね。神を相手にするとは……そして神を喰える時が来るとはなんていい日だ。」
《九尾》【ナイン・オブ・レイン】
《空間魔法》【届かない空間の壁】
ランギルは悪魔化してアーサーの能力を見に纏った。ユウヤも臨界点を突破し臨戦態勢が整った。
ランギルはアーサーの能力を使い、九本の尻尾がフィフスを襲うが空間魔法による壁に激突する。しかしその魔法が凍り砕け散り、フィフスの脇腹を抉った。
「学園長!」
ユウヤが叫びながら死鎌をランギルへと振り投げる。ランギルは余裕の表情で防御もしない。死鎌が辿り着く間際、凍りつき散って行った。
その隙を逃すまいと、マリアがランギルへと接近して左拳を打ちつける。
しかし左拳はランギルへと届かなかった。拳は徐々に凍っていく。マリアは距離を取ったが左拳は完全に氷結し動かさなかった。
「どうです?僕の固有魔法【魔氷結】の味は?」
「魔氷結?」
「この魔法は全てを氷結させます。ほらこの空間と運動能力がだんだんと凍っていくでしょ?」
フィフスが支配している空間を凍らせていき、体が自由に動かせなくなっていた。
「僕の魔法は視認した対象を氷結させるんです。残念ながら1つしか氷結できないのが難点ですがね。」
笑いながらランギルはそう答える。なんでも氷結してしまえばフィフスたちの勝ち目はない。しかし誰かが囮になれば勝てるかもしれないが博打にしか過ぎない。かといって防御に専念すれば氷結の餌食になってしまう。どうすることもできなかった。
 




