それぞれの戦い
グレンたちを見送った船内の空気は淀んでいたがすぐに気持ちを持ち直した。
現世に亡者の進軍が開始する5時間前に差し掛かるが、未だ塔にはたどり着けない。そして船が突如として切り裂かれた。急いで脱出し黒い大地に降り立つとそこにはケンセイとランギルがいた。
「あの方の元には行かせない。」
「そう言うことなのでここで死んで貰いますよ。」
イツキが前に出ようとした時、イロハらに止められた。
「イツキたちは行って……」
「イロハ……」
「ここは俺たちが引き受ける。」
「……」
「行くぞ……時間がない。」
「解っている。」
「行かせると思っているのですか?」
ランギルが氷魔法にて道を寸断しようとしたとき空間が抉れ、刈り取られた。その発生源を見ると歩いてくるフィフス学園長の姿があった。
「イロハちゃんたちの言うとおりだよイツキくん。君らは希望なんだ。この戦争を終わらすためにね。」
「学園長……」
イツキはみんなに任せ走り出した。そしてフィフスはイツキらを追わせぬよう空間魔法で道を遮断し、さらにランギルとケンセイを分断させた。
「分断させてよかったのですか?皆でなら私たちを倒せましたよ。」
「こうでもしなくちゃ皆が本気で戦えないでしょ?僕はね……怒っているんだよ?未来ある生徒を殺されて傷つけられて黙っている先生はいないんだよ。」
フィフスは普段はにこやかに過ごしているが今回は穏やかではない。怒りが混み上がっている。
「マリアくん、ユウヤくん……やるよ?いいね?」
「「わかっているさ」」
ユウヤは血鎌を構え、マリアは骸福を向けている。ランギルは様子見のため氷槍を1万本形成して射出させる。フィフスも空間魔法を駆使して抉り取る。マリアとユウヤは魔法を展開しながらランギルに攻撃する。マリアは幻弾と炎の拡散弾を装填して撃ち込む。ユウヤは鎌から放たれる残撃を打ち込んだ。
ランギルは両方に氷壁を出現させ防いだ。しかしフィフスはランギルの頭上にまで接近していたが、氷の空気を吸ってしまいランギルから距離を取った。肺が一瞬凍ってしまったが、無理やり空間魔法で凍った部分を抉り取り応急処置する。
「これに気づくなんてすごいですね。ちゃんとしないと駄目ですか。」
《妖嘛解放》【氷魔悦楽】
妖嘛へとなり、氷で形成された魔神を二体呼び出してマリア、ユウヤの元へ向かわせる。フィフスにはランギルが戦うことになる。
「自ら死ににくるとは笑止千万……」
「死に来てはいない。未来を守るために僕たちはここにいる。」
ケンセイは鞘から刀を抜くと、殺気が身体中を伝わるのを感じた。ベルトはホーク家に代々伝わる刀の[鷹蛇丸]を鞘から抜いた。イロハも新たに打ち直された魔武器の[安恒]と[安絃]を構え二刀流となる。ラルドは魔武器である極細ワイヤーを収納する甲手を嵌め魔力弾を展開させている。
暫くの間にらみ合いが続くが、動き出したのはケンセイだった。
「!?来るぞ!」
《拾捌之型》【暴乱滅鷹】
凄まじい残撃の弾幕が襲いかかる。しかしその弾幕はワイヤーにより切り裂かれた。目に見えないワイヤーが空間に張り巡らされて蜘蛛の巣のようになっているため切り裂かれたのだ。それを操るようにケンセイの動きを止めた。ベルトとイロハは両側から回り込みながらケンセイに斬りかかる。
「それで動きを止めたつもりか?」
ケンセイの身体から黒い炎が上がりワイヤーを燃やした。最高硬度で燃えにくい鉱石の[硬炎石ミストルテルス]を使用しているため燃えることはないがそれを燃やすとなるととてつもないことである。
ーフェネクスー
身体中から炎が上がり刀にも炎を纏っている。距離が離れているというのに熱気が伝わってきている。しかも不死鷹という悪魔はすべてを燃やし無に返すと伝わっている。
ケンセイが炎の刀を上に翳す。その行動を見たベルトはイロハたちに回避を促したが遅かった。
《悪剣術壱之無炎》【悪炎柱】
地中から無数の炎の柱が吹き上がる。みんなはなんとか回避することが出来たが少しの火傷を負った。さらにその吹き上がる柱はベルトたちに向きを変え襲いかかる。
《神風仙術》【明鏡止水の心得】
《ホーク回避術》【天眼】
【追尾防御弾】
+
【氷拡散弾】
ベルトは視力に魔力を張り巡らすと周りが遅くなる。その柱を鷹蛇丸にて消していった。
ラルドは柱に向けて魔力弾を放つ。魔力弾が柱に直撃すると凍りついた。さらにラルドはワイヤーでベルト吊り上げケンセイに斬りかかるが避けられてしまう。
イロハは心を落ち着かせながら脱力する。そして炎柱が襲いかかる。呑み込まれるがそこにはイロハは居なかった。空中に移動していた。次々に炎柱が襲いかかるがその軌道を見切り避けていく。そしてケンセイの死角に入り斬る。ケンセイはラルドに気をとられていたため一瞬の判断が遅れたため背中を斬られた。




