開門と裏切り
イロハたちはまだ戦闘が続いていた。納刀した状態のケンセイに苦戦していた。次第に劣勢となりベルトの部下の骸が増えていく。どうにか戦況を変えられないかと考えたいたとき援軍がやってきた。
「帝国四騎将【剣武】ヒューズ・ミハエル……押して参る!」
ヒューズは現れて早々ケンセイに接近して剣にて攻撃する。鞘で防がれるが右足に仕込んである短剣にて蹴りあげる。それに気をとられている間、持っていた剣を離して新たに想像した剣を持ち斬る。ケンセイは一旦その場から下がるが右袖が僅に斬れていた。ケンセイはヒューズを見つめる。ヒューズの肉体が完璧に仕上がっており剣の技術は申し分ないと思い鞘から刀を抜こうとしていた。
「250年ぶりに抜こう。貴様を好敵手としてな」
鞘から抜いた刀は紫色に変色しておりオーラが漂っているようで不気味と感じたベルトは皆に下がるよう促したがそれは遅かった。ケンセイの技が既に放たれており、ヒューズも攻撃を負わされていた。ベルトの右腕が落とされていた。部下たちは訳もわからないような顔を浮かべながら胴体と分かれている。イロハも咄嗟の判断が鈍り、傷を負うが致命傷にはならなかった。
「ほぅ……誇ってよい。私の残撃をくらって生きていたのだから。」
「見えなかった……いや見えていなかった。速いどころではない。」
《鷹無剣術陸之型》【雨鷹天刃】
雨のように降り注ぐ残撃が降りてくる。ヒューズは剣を大量に想像して盾を作り上げる。イロハは神速守砂塵にて身を守る。ベルトは痛みに耐えながら鷹稲改で防ぐが破られ吹き飛ばされてしまう。ケンセイは楽しませてくれた情けで爪のような残撃を放つ。
避けられないと覚悟し眼を閉じるイロハ。しかし攻撃がなかなか襲ってこないと思い眼を開けると包帯で傷だらけのイツキが妖力の壁を発動し守っていた。
「待たせたなイロハ……」
「イツキ!!」
消息を経っていたイツキだが彼には今まで感じ取れていた妖力が感じられない。
「お主は……イツキ・イーステリア。特記戦力としてお主を排除する。」
《壱之型》【夜鷹弧月】
斜めの残撃がイツキを襲う。しかしイツキは避けずその攻撃を素手にて掴み振り払った。そしていつの間かケンセイの懐に迫り一撃を入れ、吹き飛ばされた。吹き飛ばされながら体勢を整え、弐之型【宵の鷹】を放つ。しかし放つ前に腕を掴み投げ飛ばした。
「貴様……」
(ケンセイ、ランギル……門まで来なさい。準備が出来ました。)
「貴様らはもう死ぬ運命にある。」
ケンセイは姿を消した。イツキはその妖力を追うと獄界の門に集結していることがわかった。みんなを連れそこに転移する。
転移すると巨大な門があり、その上にはハザマがいた。続けてランギル、ケンセイが転移してきた。そして……傷だらけのリカたちも集結した。
「凄いですね……十本指が壊滅してしまうなんて……ノールは何してるんですか」
「う、うるせぇよ……これでも再生してんだからよぉ」
「嘘だろ……」
「倒したはず……」
ハザマの横でグジュグジュと音をたてながら再生しているノール。そして再生が終え立ち上がると怒りを露にしたがハザマに止められた。
「これで勾玉は全て揃いました。」
「揃ってねぇだろ……勾玉は今シエルが持っている。シエルが閉門の準備をしている」
「何か勘違いしてへんの?シエルは来てはりますよ?ほらそこに」
「!」
ハザマが指を指した方向を向くとシエルが浮遊していた。そしてハザマの近くに歩みよった。
「なにをしているシエル……」
「……皆さんありがとうございます。これで開門することができます。」
「裏切ったのか?」
「初めから裏切っておりませんよ。利用していただけです。これはハザマの為に……そしてユナの魂を代償に開門する。」
シエルは眠っているユナの魂を呼び出して門に吸収された。歌魔法を発動する。門が徐々に開き始めた。どす黒い瘴気が流れ始める。リカは何か察したのか黒い棒を取り出し放り投げると門に引っ付いて開門を防いでいた。リカは手で術式を組んで構えていた。
「やりおるね。彼女を殺すのは無理やので門の奥で待っておるよ。あぁ来てもいいですが亡者は君たちを殺そうと進軍を開始してます。あっそうそう彼女返しますよ。」
そう言ってハザマは開け掛けている扉の奥へ入っていった。途中でひょっこりと顔を出して黒い穴が出現した。そこから血を流してヒナが落ちてきた。イツキは急いで駆け寄り脈を確認したら手遅れの一歩手前だった。しかしイツキの妖力では限界があった。
リカはさらに大罪を呼び出して結界を維持するよう頼んだ。
「っけ……やってらんねぇがマスターが死んじまうと後味悪いからなぁ手伝ってやるよぉ」
「出た~隊長の照れ……見もの~」
「言ってやるな…隊長はマスターが大好きなんだよ。」
「てめぇらちゃんとしやがれ!」
アーロンたちは無駄口を叩きながらも結界を維持するよう魔力を放出し始めた。イツキはどうしようもないと諦め掛けたとき
「守護者がそんなことで狼狽えるなバカが」
敵であるはずのヒルドが歩いてやってきた。




