病と聖なる力
魔法の準備に取りかかっているフェルトとエルザの魔力は最高潮に達していた。そんな中現れた人物がいた。
「結界か……こんなもの。」
その男はリカの結界術式を解析し、それを突き破り侵入してきた。エルザは立ち向かおうとしたがフェルトに引き留められた。
「姉様……今は集中しないと。」
「しかし……。」
「私たちには頼もしい仲間が要るじゃないですか。」
「何をしているかはわからないが、王女様方さようなら……、」
《土魔法》【土竜】
土魔法で作られた竜がフェルトたちを襲う。フェルトたちの前に透明化を解いたディアゴが現れた。土竜に触るとそれを支配してその男に襲いかかった。その男は土竜の魔法を解除した。
「何者だ。」
「名乗るならそちらから名乗るのが常識出はないのでは?」
「これは失敬……私は闇ギルドトライデントオーガマスターエイムスと言う。」
「俺は元魔王軍魔人9騎将第1位ディアゴだ。」
「魔族が人間に加担するとはなんと酔狂な」
「私はただこいつらと利害が一致しているから加担している。」
「なら貴方も死んで貰おう。」
「お前ら……発動までの時間は?」
「あと30分ってとこですか……。」
「そうか…それまでにあいつを倒す。」
「できるかな?」
【風弾・水竜・闇炎・炎弾】
4種の魔法を同時に放つ。それを支配して跳ね返す。それがずっと続く。しかし急にディアゴが苦しみだし膝を付いた。
「そうか…お前が魔法は自分が認識したものを支配する能力か…あの方から聞いた。それは強い魔法だが弱点がある。それは病魔には勝てないことだ。」
ディアゴの支配者とは自分が認識したものを支配する能力。強すぎる魔法には必ず穴が存在する。認識出来ないものは支配できないのだ。例えばハザマの未来攻撃もそうだ。彼が触れることが出来なければ無意味な魔法なのだから。
「がはぁ……」
「私の魔法は病魔です。貴方の病はマロリーワイス症候群といいます。」
マロリーワイス症候群
食道と胃の境目の部分(噴門部ふんもんぶ)が傷つき、粘膜が縦に裂けて出血してしまう状態を言う。嘔吐による腹圧上昇から強い圧力がかかってしまうために起こる出血のこと。
「そんものに…。」
ディアゴは血を吐き捨て立ち上がる。エイムスが風魔法で止めをさしてきた。ディアゴを襲う風が鏡によって跳ね返りエイムスは解除するまもなくくらってしまった。
《鏡魔法》【鏡反射】
「この魔法は……セーレか。」
「お久しぶりです。ディアゴさん助太刀いります?」
「まったく次から次へと。」ら
「ところで皆さんの反応がないのですが…どうなりました?」
「ハザマの策略によって殺された。」
「そうですか。私だけ連絡ないからおかしいとおもったんです。じゃあディアゴさんの力になってあげますよ。」
《鏡魔法》【鏡吸】
鏡がディアゴの状態異常と傷を吸いとった。そして鏡世界にエイムスとディアゴを送り込んだ。誰も居なくなった場所でセーレはフェルトたちに鏡の加護を与えて世界に入っていった。
鏡世界……鏡の中にあるもうひとつの世界。鏡がたくさんありそこから移動することができる。ただし使用者の権限がなければ外には出れない。
「やりますよ。」
「そうだな。」
「魔族ごときに遅れはとらん!」
《病魔》【天然痘】
天然痘
強い感染力を持ち、全身に膿疱を生ずる。致死率が平均で約20%から50%と非常に高い。仮に治癒しても瘢痕(一般的にあばたと呼ぶ)を残す。天然痘は人類史上初めて撲滅に成功した感染症の一種である。
《付与効果》【状態異常】
セーレの状態異常を無くす付与効果が与えられ病魔は全て無効化された。
《支配魔法》【鏡光線】
周りの鏡より高出力の光がエイムスを襲う。エイムスは風魔法で威力を弱め土魔法にて壁を作って守る算段だったが、その策は潰えた。光は風の結界を破り土の壁を貫いてエイムスを貫通した。
「ば、ばかな…。」
エイムスはあっさりと倒れた。彼の傷口から黒い瘴気が漂い、セーレの身体に入り込む。
変化が起きた。セーレは皮膚が黒く変色し咳き込みながら倒れてしまった。
「よもやこの状態の私にさせるとは。」
《第三魔法》【病魔形態】
エイムスは病を司る滅魔魔法を使用する魔導師である。病を操り敵の体内に送り込むことにより病気を発症させる魔法。
さらに第三魔法とは滅魔魔法の使用者をその魔法自体に変化させる禁忌の魔法。一度使用するとその魔法を解くと2度と魔法が使えなくなる。
「その魔娘が患っているのはペスト菌の黒死病およびコロナ肺炎COVITだ 」
黒死病
地球では特に14世紀の大流行は、世界人口を4億5000万人から3億5000万人にまで減少させた。
この世界でも500年前に5億人を死滅させた病である。
とくに腺ペストの流行が続いた後に起こりやすいが、時に単独発生することもある。かなり稀な病型。腺ペストを発症している人が二次的に肺に菌が回って発病し、又はその患者の咳やくしゃみによって飛散したペスト菌を吸い込んで発病する。頭痛や40℃程度の発熱、下痢、気管支炎や肺炎により呼吸困難、血痰を伴う肺炎となる。呼吸困難となり治療しなければ数日で死亡する
COVIT19
2019年に発生した新型コロナウイルス感染症のこと。世界保健機関 (WHO) による国際正式名称をCOVID-19といい、SARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2) がヒトに感染することによって発症する気道感染症(ウイルス性の広義の感冒の一種)である,2020年に入ってから世界中で感染が拡大し、2022年8月までに感染者数は累計6億人を超え.世界的流行をもたらしている。
初期の頃はワクチンなどが生産されておらず世界で大量の死者を齎した未曾有のウィルスであった。
「魔族には効かないはずでは…。」
「私の特殊な調合により魔族にも被害をもたらすよう研究に成功した。」
「セーレ助けてやる」
ディアゴが動き出す。エイムスを殴り付けるが粒子となり消える。ディアゴは奥の手を使わざるを負えなかった。ディアゴは魔力を極限までに高めある魔法を発動した。
《滅人魔法》【支配人】
ディアゴは忘却魔法の一種である滅魔、滅神、滅龍と続く希少魔法を使う。
これは人を滅ぼすために習得していた。ディアゴは使おうとはしなかった。優しさゆえに滅ぼすことを躊躇ったため封印していた。セーレを仲間を守るためにそしてハザマを倒すために使うと決めたディアゴの覚悟である。
「そんなものにぃ!」
「病魔はぁ消え失せろぉ!」
《滅人奥義》【支配昇華ドミネートフルミネート)】
ディアゴはこの空間すべてを支配し、エイムスを異空間へと押し潰した。エイムスを倒したお掛けでセーレの病魔は去っていった。そしてフェルトたちの魔滅聖王が発動する。
王家に連なる清き我らが命じます
強大な魔の力を撃ち倒し
人々が安心できる世界を…
雷の結界 雪の結晶 これを六に別ち
聖なる力はここにあり
迫り来る脅威からこの地を守りたまえ
ー 【 魔 滅 聖 王 】ー
王国全体に聖なる魔法が発動した。ハザマに操られている下位の魔族は聖属性の魔法を浴びて消滅していく。さらに魔王の力にも影響を与えて弱体化に成功した。ディアゴたちは鏡世界にいるため効果はないが暫くは出られないであろう。
残りの敵は十本指と闇ギルドマスターそして魔王、ハザマが残った。クロト教諭たち帝も戦闘を終えたが甚大な被害になったため動けずにいた。最終局面がそこにある。