撤退とそれから
イツキの提唱付きの妖術を発動し、巨大なクレーターと土埃が舞う。しかし砂塵を払い楽叡は片腕を失い現れた。
「貴様…よくも儂の身体を…傷つけたな!」
【狂気を快楽に…
「何やってるのよ楽叡…」
「哀華…邪魔だてするな…貴様とて…」
「落ち着きなさい。あの方から撤退しろと言われたわ。」
「ぐぅ…わかった。貴様は次こそ殺す!」
楽叡は怒り狂い、何かを提唱し始めた。
イツキたちは鳥肌が止まらなかったが、楽叡と手を哀華が捕まえ、中止させたのだ。楽叡は怒りの矛先を哀華にむけるが正気を取り戻して、去っていった。
楽叡たちが去ったことに安堵したイツキたちは座り込んだ。このままだと勝機はないと感じたからだ。
数分たちようやく立ち上がり、横で気を失っているナハトを抱えて、ディランへ飛んでいくのだった。
ディランの街の入り口の門の所へと戻ると、騒がしく門前で戦闘をしている魔物達がおらず、代わりにアルベルトや警備隊の姿があった。
「魔物がいない?」
イツキの声に最初に反応したはアルベルトだった。
「どこいってたのよですか。」
「何があった?」
アルベルトの元へ駆け寄ると、警備隊たちが囲んでいて傍からは見えなかったが、何者かが横たわっているのが見えた。
イツキたちは気になりアルベルトたちを軽く、手で押し退けて倒れている少女を見る。
「イロハ!」
そこに居たのはイロハであった。
楽叡との戦闘で大きな傷があるが塞ぎきっていなかった。息も絶え絶えで、なんとか生きているという感じである。イリスがなんとかして修復魔法を掛けたのだろう。
イツキの声に反応するかのように、イロハは目を開ける。
もう言葉を発することが出来ないイロハは、目が閉じられていった。気を失ったのだろう。
「今…治す。」
反転妖術【再聖】
イツキの発した妖術が、イロハの体を包んでいき、袈裟斬りの傷などが塞がっていく。だが傷口は治っていくが、イロハは目を覚まさない。
それもそうだ傷が治ったとて体力は戻らない。
この反転妖術には欠点がある。他者に使用する場合妖力を大量に消費する。いくら無限に近いイツキでさえも例外もなく気を失った。
イツキが目を覚ますと、見慣れぬ天井だった。
「俺は…確か…。」
『気を失ったのよ。馬鹿ね反転妖術なんて使うからよ。気をつけないと死んでしまうわよ。』
イザナミに起きた直後怒られてしまった。反転妖術なんて滅多に使用しなかった。それと反動のことも忘れていた。馬鹿と言われても仕方ない。
ディランで一番の宿のベッドの上でイツキは寝ていたのだった。ベッドの横では、今までずっと看病していたのだろう。イロハが、包帯だらけで目の下に隈を作って眠っていた。
イツキが目を覚ました事に気づいたイロハが声をあげる。
「イツキ、私を助ける為に無理を…ごめんなさい。」
そして深々と頭を下げる。
「独断で動いた挙句、無様にやられた。あまつさえイツキの手を煩わせてしまった。
「いい。生きてるだけでも御の字だ。」
謝罪の言葉を述べていたイロハの言葉を途中で遮り、イツキは笑みを浮かべる。
「動いてくれたのだろう? お前はそういう奴だからな。」
「イツキ…。」
扉が開かれると、食べ物を乗せた盆を持ったリカが入ってきた。
「イツキ起きたか。」
その瞬間、ぱあっと表情を明るくしてイツキの近くによる。
「よかったな。」
「心配をかけたな。」
イツキは感謝を2人にするのであった。落ち着くまで、三人は宿で話し込んでいた。