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解放

気を失っているナハトを見て、いはほっとする。もしまた楽叡智の妖術で操られでもすれば、

今度こそナハトを守り切れる保証が無い為である。


「足手纏いができとるのにまだやるのか?」

「足手纏い?誰だそれは。」


イツキがそう言うと、楽叡はさらに笑い始めた。


「そこの人間を庇いながらどうやって、儂と戦おうかと考えているのに?」


イツキの考えている事は、お見通しとばかりに楽叡は笑う。


「ナハトはギルドに引き渡す為に、必要だから守っているだけだ。」


イツキがそういうと、楽叡が口を開いた。


「主がそういうのなら別にいいのじゃが。遠慮無くその男を殺すつもりで行くつもりじゃ?』


 イツキは内心で舌打ちをする。


「人間なんて守る価値がない。放っておくのが賢明じゃがなぁ。」


イツキはその言葉に、聞き捨てならないと感じ口を挟む。


「価値を決めるのは勝手だ。だがそれを他者に強要するのはやめろ。諦めが悪いのは人間の欲だ。」


少し苛立ちを見せたイツキの様子に、ニヤリと楽叡は笑う。


「どうやら主は愚かな人間みたいじゃな。」


そういうと、楽叡は狂気染みた笑みを浮かべながら、高速でナハトを殺そうと駆け出す。


「させん。」

《守符》【四天柱の守護結界】


イツキは即座に四つの柱の呪符を放ち、結界妖術を発動し、ナハトを外部からの攻撃を庇う。

先程までとは、比べ物にならない速度でイツキは動いた。


力も速度も人形とは格段に違い、本当の力を発揮する。

イツキを見ても笑みを絶やさない楽叡。

現返によって復元された手に、紫のオーラで包まれた手刀で、楽叡の攻撃を受け止める。


「へえ?それが本当の力ってわけじゃな?楽しめそうじゃ。」

「お前たちの存在は危険だ。ここで祓わせてもらう。」


イツキはそういうと自分の手刀を手前に引いて、相手の状態をずらした所に、右足で思い切り蹴り飛ばした。


「………ッ!」


 流石にイツキの力を見誤ったのか、蹴られた瞬間に痛みに顔を歪める楽叡。


「力も速度も段違いじゃな。でも敵わないって程でもない。」


本来の力を発揮しているイツキに、力では一歩足りない楽叡だが、妖術使いとして戦い続けてきた経験からか、少しずつイツキの力を、上手くいなしながら、戦いに順応していく。


「なかなかやる。」


ナハトを守りつつ戦っているとはいっても、イツキは守るために必死ではあった。


この世界に来てハザマと戦い破れるイツキだったが、この楽叡は、哀華とともにハザマとは別格の強さだと、イツキは内心認め始めている。


「確かに主は強い。儂には到底及ばんよ。」


嗜虐的な面を持つ楽叡は、イツキを絶望に落とそうと真価を発揮する。


かごめかごめ 籠の中の鳥は いつもかつもお鳴きゃぁる(お鳴きやる) 八日の晩に 鶴と亀が滑ったとさ、ひと山 ふた山 み山 越えて ヤイトを すえて やれ 熱つ や


突如、楽叡はかごめ歌を歌うように詠唱を始める。すると、イツキの周りだけが暗転して暗闇が覆い隠す。


「この歌は…。」


楽叡の体がぼやけ始めたと思うと、複数人に増えたかの如く錯覚し始める。徐々に数は増していき、イツキを囲むように回り始める。


その複数人に増えた楽叡たちが一斉に、紅い目となり妖術を放つ。


かごめかごめ 籠の中の鳥は いつもかつもお鳴きゃぁる八日の晩に 鶴と亀が滑ったとさ、ひと山 ふた山 み山 越えて ヤイトを すえて やれ 熱つ や(お灸を据えて、やれ熱や)

籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に つるつる滑った

鍋の鍋の底抜け 底抜いてたもれ


楽叡の魔力の高まりを感じつつも、だんだんとイツキの意識が朦朧としていく。

これが楽叡の持つ奥の手であった。

どんな強者を相手と対峙しても生き残って来れたのは、


楽叡の持つこの【拘亡神霊こうぼうじんれい】という、妖力の渦を用いた、幻術を見せる技のおかげであった。


イツキの力を上回る程の、強力な楽叡の技にはまってしまい、の意識は混濁していき、ついに意識を失ってしまう。


「その年齢でたいしたものじゃ。」


そう言って、意識を失ったイツキに、一歩近づいた瞬間であった。

ぞくり、楽叡の全身に悪寒が走った。


「今のは何じゃ?」


周囲はかごめ歌の影響に満ちており、この空間は完全に楽叡智 が支配している筈である。

また一歩近づこうとすると、楽叡の体が、無意識に震え始める。


「なんじゃ!」


 そして違和感の正体、無理やりに答えを見せつけるかの如く、意識がない筈の”イツキ”の口から、詠唱が紡がれる。


Infinite skies, infinite time, you demons living in infinite reason

The seven worlds will part and regenerate and become a star The foundation will eventually become a sword to ward off enemies

The restraint of a thousand hands is a sword of light that can't reach, shooters of power that can't be seen, drop the darkness, a storm fanning the flames, scattering

Light bullet, celestial body, gojo, heavenly sutra, jewel, small crimson, gray turret Beyond the bow, a meteor vanishing


楽叡は、致命的なミスを犯してしまった。

イツキの意識を断ち切ってしまった事で、これが本物だという錯覚に陥ってしまった。

倒れた彼は戦闘人形であり本来の彼は、リカの草魔法で視認出来ていない。

だが、現状のように意識を無くしてしまえば、そこにいるのは脅威を排除しようと動く、本来の力を持った退魔師の体現を許してしまうのだ。


この世界に来てからイツキは、明確な殺意を抱かせた相手を除き、ギルドの対抗戦や、コウガといった者達が相手でさえ、その相手の強さに極力合わせて、相手の様子を窺いながら戦っていた。

今は自分より弱くとも、いずれは自分に届き得る、もしくは超えてくれるかもしれないという、期待を持っていつあは戦っているからである。


 しかし、そんな彼の力を最大限落とし、相手の強さを直に感じられるように、魔力を抑えて戦った事が裏目に出て、術に耐えられない程まで、力を落としてしまった。

 これは相手の力を見誤った楽叡の過失である。


 【七剣流星グランシャリオ



膨大な妖力の光に楽叡は飲み込まれていった。

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