問題の解決
「行ったか?」
「気配がない。多分大丈夫だろう。」
倒れた2人の背後から本物のイツキたちが土の中から出てきた。倒れた2人は本物に近い選択人形である。特級と戦う寸前にリカが用意したものだ。
「で?あそこまでする必要はあったのか?」
「まぁいいじゃねぇか。本当ならあんなスプラッタな光景がお前に訪れたんだしよ。それにあいつの戦闘能力も見れたしな。」
「んーそうだな。それよりもナハトをさがさねぇとな。」
イツキたちはナハトを探すべく歩き始めた。
哀華との戦闘で地面のあちらこちらが削れていたが、そこまで被害が及んでいないように見受けられる。
これも哀華の妖術なのだろうと、判断するイツキであった。
「まずはシェルパとやらを探すとするか。」
そして目の前に立派な屋敷が現れ、気配を消して屋敷の中を歩いていると、数体の蜥蜴型の妖嘛が、イツキを見つけると襲ってきた。
『グオオオオッ!』
人間の住む街で最近は生活をしていた為に、屋敷の中に妖嘛がいるという状況に、違和感を感じ始めたイツキであった。
《草符》【這い寄る草蛇】
『グルルルル』
蜥蜴型の妖嘛を拘束し、そのまま床をずっと放置していた。そのあと爆散させた。
こうして屋敷中を歩き回るイツキを、魔物が襲ってきては拘束し、あちらこちらで魔物たちが、爆散している。
「あれ?こっちはきたような?」
「お前…方向音痴だったのか…。」
先ほど来た部屋の前にたどり着いたイツキであった。
「いっその事、この屋敷ごと斬り捨てるか。」
そんな冗談がイツキの口から漏れ始めた頃、ドアを開けると書斎のある部屋に辿り着いた。
そこにはこの屋敷の主である犬人族のシェルパが、呑気に本を読んでいた。
読んでいた本から顔をあげてイツキを見た。
「……おや? ここに君たちがが来るという事はまさか哀華様が?」
信じられないといった顔でイツキを見る。
「倒してはない。撒いただけだ。」
溜息を吐くシェルパだが、焦った様子は見受けられない。
「おとなしくナハトと街を襲わせている男に会わせよ。」
「これ以上暴れられても困りますし、分かりました。」
椅子から立ち上がったシェルパは、捕らえられているナハトの部屋へと案内を始めた。
「元々、魔薬を使って街を襲わせようとする計画は、とある部下の案でね、私は知らなかった。」
言い訳のような事を突然口に出すナハトだが、命を助けて欲しくて、言っているようには見えなかった。
「さあ、こちらですよ。」
書斎からあまり離れていない場所の部屋に、ナハトは囚われているようだった。
部屋の中に入ると、縛られていナハトと、その前に老人と数体の魔物がいた。
「シェルパ様、どうなされましたか。」
突然、彼らの主が入ってきたのだから、驚くのも無理はない。
「すまないが、お前たちは外に出ていてくれ。」
シェルパがそういうと、すぐにビッジたちは頷いた。
部屋を出る時に、イツキの方を見たが、疑問を口にすることなどせずに、素直に出ていった。
「イツキ君、約束通りナハト君を解放するので、好きにして頂いて構わないですよ。」
「そうか…ナハトはこのまま連れて帰らせてもらおう。」
特に言及する事も無く、シェルパは頷いた。
「ファース……件の男の名前なのですが、ディランの方に宿をとっています。今は屋敷にいないので、折り返しそちらに向かわせるという事でどうでしょう?」
いやにイツキに協力的なのが気になったのだが、別にどう思っていようと、こちらが損をするわけではないので、イツキも素直に頷いた。
「まずはファースとや話がついたら、街を襲わせるのを、やめてもらおうか。」
「………。」
少し考える素振りを見せたシェルパだが、数秒後すぐに笑顔を浮かべた。
「それで構いません。」
交渉は成立したようだった。これでこの一件は無事解決となる筈だった。
だが、ナハトを連れてディランに帰る途中で、話は別方向に、転がっていく事になるのだった。