情報
街に戻ったイツキたちは、魔薬を魔物たちに投与している犯人を割り出す為に作戦会議を始めた。
その場所となったのは、ギルド《誠竜の牙》に、隣接されている酒場の一角であった。
会議に参加しているのは、イツキたち、そして警備隊の長を務めているアルベルトである。
アルベルトはイツキが魔物達に放った妖術を見て、ようやく”妖魔”の二つ名を持つイツキと知り、それまでの態度を一変させて、今回の事件の相談に来たのだった。
「イツキさんたちがギルドマスターから、指定依頼を受けたことは聞きました。』
開口一番にアルベルトがそう口火を切る。
「そこで、今回の事件解決の為に、私たちと連携を取っていただきたい!」
アルベルトが酒場のテーブルを叩いて、立ち上がりながらそう言った。
「具体的にどうするべきだ?」
アルベルトの言葉を聞いてもどこ吹く風のイツキの態度を見たリカが、変わりに答える。
「街に攻めてくる魔物たちを、イツキたちに防いで、その間に我々警備隊が街の中で、魔物たちに魔薬を投与しているやつらを探し出し捕らえるというものは?」
今までは魔物たちから街を守るために警備の人数を割いていた為に、犯人を探す事が出来なかったが、イツキ、リカたちがいれば、警備隊で犯人を捜すことに使えるので、事件解決に近づけると、アルベルトは言っているのだ。
確かにこの案は一考あるだろう、魔物の討伐に長けているイツキたちと、町に詳しい警備隊が調べることで、まさに適材適所と言えるわけである。
この案にはあまりにも穴がありすぎると思っていた。
「協力をしあうことは悪い案ではないが、この薬を投与している者は探したい。」
魔物を利用して町を襲わせている犯人に、あまりよくない感情を抱き始めていた。
アルベルトその言葉に、何か反論しようとしたが、すぐに思い返して口を開く。
「………分かりました。ギルドでも冒険者を雇って、街の防衛のクエストを促しているようですし、我々はその者たちと協力して、町を守りますので、その間に彼らに、犯人捜しをお願いします。」
その言葉にみんなは静かに頷いた。
今後の方針が決まった後、アルベルトが酒場を出て行ってから、イロハが口を開いた。
「あまり…気乗りしないの?イツキ。だったら…依頼をキャンセルして、戻る?」
イツキが前回の魔物たちに魔法を放った後くらいから、様子がおかしいことに気づいていたイロハがそう告げた。
「気を使わなくてもいい。俺は少しばかり街を散策してくる。何かあれば跳んでくる。」
そういってイツキは、椅子から立ち上がって酒場を出ていった。イロハとリカは部屋へともどり次に備えて準備を行うことにした。