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緊急依頼

薬草は使用者の怪我を治す回復薬として、多くの冒険者に使われているが、どうやらこの〈ディラン〉で流行っている危険な魔草とは、傷口に塗ることで、麻酔効果をもたらす薬を、穢れた魔力と配合することで、化学反応を起こし使用者の身体を狂わせる。人を襲う程の暴力性等を引き起こす。それが魔薬だ。


「その危険な魔薬の元となる薬を、売っている者を捕らろという事か?」

「………いや、それも重要なことなのだが、それどころではない事が、起きているのだ。」


 そこで話を一度切って、リキスは俺たちがいるのにも関わらず、煙草に火をつけ始めた。


「実は、その危険な魔草を魔物達に投与して、凶暴な魔物たちが暴力性を増し、集団となり次々と街を襲っているのだ。」


 どうやら商人を捕らえる等の話ではないらしい。誰かは分からないし、個人なのか複数なのかも分からないが、意図的に魔物達に薬を投与して、町を襲わせているらしい。


「今はまだ冒険者かれらたちが食い止めているが、怪我人も多数出ていて、魔物の数が増えるとなると、冗談では済まない。」


 魔物自体はそこまでの強さではないが、暴力性のある魔物が、徒党を組んでかなりの数で攻めてくるという。それでこそ魔物活性化スタンビートとなるだろう。


「その魔物達に薬を投与している不届き者を、突き止めて捕まえて欲しい。」


難易度がある依頼であると言える。単に攻めてくる魔物を、全滅させて欲しいとかであれば、イツキたちにとっては、そこまで難しくは無い。

しかし薬を投与している奴らを、捕まえるというのは、簡単なことではない。

そもそも、自分で使用している奴もいるのだから、単に所持をしている奴を捕まえても意味がない。

その中から魔物達に故意に投与している奴を捕まえる等、不可能ではないだろうか。


「そんな顔するな。この依頼は高難易度だが、誰でも受けられるようにして、人海戦術を使うつもりだったくらいだしな。」


 そして煙草の煙を吐いて、再度口を開く。


「そこで君たちに今回のこの依頼を【緊急依頼】として私が君に依頼する。未解決でも何か手がかりを見つけてくれるだけで、達成という事にする。」

「手がかりを見つけるだけ?持ってる奴を見つけなくてもいいのか?」

「君たちに依頼するだけでも、十分に価値があると私は見ている。」


彼らは二つ名持ちとして、大陸全土に知れ渡っている。つまり、この街でイツキたちが犯人を捜しているだけで、犯人にとっては恐ろしい程の重圧を与えることが出来ると、リキスは思っている。

それは犯人にとっては一刻も早く、この場所から逃げたいと思える事だろう。

それを利用してこの場から最悪犯人を遠ざけて、大量に街に攻めてくるであろう魔物共を一網打尽にするつもりなのである。


「犯人を捕まえなければ、同じことの繰り返しになる。今は目の前の危機から、街の者たちを救うことが最優先事項なのだ。」


 妥協という事ではあるが、確かに街のギルドを預かる人間としては、目の前の危機を取り除く事が最優先という考えになるのも頷けるというものだった。


 「まぁ俺は依頼を受けても構わないが、イロハたちはどう思う?」


 一緒に話を聞いていたリカとイロハに視線を向ける。


「…面倒な依頼だとは思うけど、ここから近い街も…危機だし、私としては解決するのが、妥当…受けようと思う。」

「俺はちょっとした実験台を探していたから、試せればそれでいい。」


イロハたちの確認を取ると、慌ててリキスは、止めに入る。


「待ってくれ、出来れば街の人間には穏便に頼む。街の人間を死なせてしまっては元も子もない。」


 リキスは慌てふためいて、イロハに手を合わせて懇願する。


 「別に…殺したくて殺してる…訳じゃないし…わたしは快楽殺人者ではない。」


 イロハの言葉に、ほっと胸を撫でおろすリキスであった。


「ではギルド長、貴方の緊急指名依頼は受ける事にしよう。」


  ーー【ギルド長、リキス緊急指名依頼】ーー

 ・ランク指定:なし

 ・内容:魔草を魔物達に投与している者を捕縛。

 (実際は何か手がかりが見つかれば達成とする。)

 ・報酬:100,000ミルド


 まさに破格と言っていい程の条件である。

 ギルドを出た三人はまず、ここまで護衛をしてきたナハトを探すことにした。ナハトなら情報を持ってるかもしれない。先程見せた薬がもしかしたら魔薬の可能性だってある。ナハトもまた容疑者の1人として疑いを掛ける。


「それで、どうやってナハトを探す?」

「まずは俺の魔法でナハトを探そう。」


 イロハを見ながら頷くリカだが、内心では、非常に便利だなと感心するのだった。


「話によれば、何度も街に魔物が襲撃してきたり、薬漬けの人間が、暴れたりしているらしいが。」


 街の人間はイース王国と変わらない程に、談笑している者たちが見受けられた。


「それは、俺たち警備の人間が安心感を与えているからさ!」


イツキたちの会話を聞いていたのか、ギルドの建物の前で、【風紀】と書かれている、腕章をつけている者たちが話かけてきた。


「この町の警備の者ですか?」


 イツキの言葉に警備隊の隊長らしき男が、口を開いて返事をする。


「いかにも、この町の警備隊は全員が優秀だからな。暴れている奴らは、逮捕だ!」


《草・草生魔法》【草名欄サーチ


  種族:人間 

  年齢:30歳 

  名前:アルベルト

  魔力値:25,000 戦力値5 

  職業:警備隊


 「戦闘力5かゴミ目…ボソ

魔力はなかなかの持ち主だね。」


男は照れたのか、見るからに機嫌が良くなった。


「はっはっは、やっぱり子供にも分かってしまうものなのかなぁ?」


 周りにいた部下たちも、アルベルトに愛想笑いを浮かべている。しかしアルベルトの魔力は優秀な警備隊というだけあって、部下たちの戦力値もそれなりに高く、17,000~20,000をキープしている。

これは冒険者ランクにしてもC相当で、下手をすれば、下位のBランク冒険者にも善戦できる程である。


「これで街の人たちが安心して、外を出歩いている理由が分かったかな?」


 大笑いをしている警備隊たちだが、その中の一人がぎょっとした顔でイツキたちを見ると、どうやらその警備隊の男は、少年イツキたちがあらゆる国や町で噂になっている二つ名持ちと気づいたようだった。


「隊長そろそろ行きましょう!こうしている間にも困っている人が、我々を待っているかもしれません。」


 馬鹿笑いをしているアルベルトが、その言葉にハッとして頷く。


「そうだな!少年少女たちよ、お前たちも何かあれば、我々の詰め所まで相談に来るのだぞ!」


 はっはっはと笑いながら警備隊たちは、イツキたちの前からいなくなってなった。


「一体何だったの?」

「さぁ?」


 イロハが溜息を吐いて、警備隊たちが走り去っていった方向を見ていた。


「では早速ナハトの魔力を探るとしようか。」


《草魔法》【草名探知サーチ】。


 〈ディラン〉の街全体を対象に、ナハトの魔力を探ると、すぐに現在ナハトが居る場所を感じ取れるのであった。


「ここから西にいった所にナハトがいるな。」

「では、早速行こうか。」


イツキたちは、先程別れたばかりのナハトの元へと向かうのだった。

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