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引き渡し

荷馬車の手綱を引いて、ナハトは街〈ディラン〉の中へ入っていく。イース大陸内でも2番目に冒険者が、多い町なだけがあり活気に溢れていた。

至る所に武器や防具、露店の数も王国の露店通りの比ではない。


 「凄い人の数だな。イースより多いのではないか?」


 リカが感嘆の声をあげながら周りを見渡す。


「それはどうか…分からないけど、この町は間違いなく…人が多いよ。」


イロハはリカにそう言う。

まぁそうだろ。こんなに賑わってるのはイースぐらいだと思っていたからな。


「色々見て回りたいでしょうが、まずはギルドに向かわせてください。」


 荷馬車を引いているナハトが、笑みを浮かべてイツキたちに言った。


 「そうだな。まずはこいつらを届けてからな。」


 そういって盗賊たちに視線を送ると、ギルスたちはびくっと身体を震わせた。彼らにとっては早く、イツキたちから離れたいと思っていた。

ギルドは一目で分かりやすい程の場所にあった。

ナハトがギルドの馬小屋スペースに荷馬車を預けて、イツキたちが盗賊たちと、盗賊の持っていた金品等を持ってギルド内に入る。

中に入るとギルド職員たちが、こちらに向けて手を振っていた。

テュレンの門番たちが、話を通してくれたおかげであろうが対応が早かった。


「あなた方が盗賊を捕縛された方々ですね?奥の部屋まで、ご足労願います。」


ギルド職員にそういわれてイツキたちは、盗賊たちを連れて奥の部屋へと通された。

部屋の奥で目つきの鋭い男が、こちらを見て立ち上がる。


「貴方たちが、盗賊を捕まえた人たちかな?」


どうやら今喋っているこの男がこのギルドの長だろうか。なかなかの圧を感じる。

ナハトは、ぱくぱくと口を動かしてはいるが、声が出ていなかった。仕方なく代わりにイツキが答える。


「この町に入る時にギルドにまず来るようにと、門番に言われたので来たのだが……。」


イツキが口を開いたことでギルド長が俺たちを見るが、その瞬間にハッとした顔を浮かべる。


「むッ! 君たちはイース王国の〈妖魔〉“イツキ”〈剣神〉イロハ”〈雑草〉リカでは?』


「剣神?」

「雑草…俺、そんなこと言われてんの?確かに草魔法使うけども…」

「ここでも妖魔っていわれるのか…。」


 今大陸中にその二つ名で騒がれている事を知らない張本人はその二つ名を聞かされて狼狽える。

妖魔って学園だけかとおもったが…外にまで広まっているとは…。


「はっはっは、成程!今噂されている盗賊団を捕らえた冒険者というから、どんな奴かと思ったが、ランクAのギルスたちを捕縛となれば、こやつらであれば納得がいくというものだ。」


ガハハッと大声で笑うギルド長らしき男は、合点がいったとばかりの顔を浮かべていた。


「私は〈ディラン〉のギルド《誠竜の牙(ドラグファング)》の長、【リキス】という、よろしく頼む。」


 そういってリキスは頭を下げた。


「しかし噂の盗賊団は40人規模だと聞いたが、他の者たちはどうしたのかね?」


 ギルスとその右腕の二人しかいないので、ギルド長は首をかしげる。


 「すまないがこいつら以外の盗賊は、皆殺しにしてしまったのでな、もうこの世にはおりません。」


 平然とそう告げるイツキにリキスは顔に冷や汗を浮かべた。


「そ、そうか、いやはや流石は、二つ名もちと呼ばれることはあるな……。」


 何やらひどい勘違いをされている気がするが、皆殺しにしたのは後ろに控えているイロハである。

いちいち説明するのも面倒なので、その事は黙っておくことにしたイツキであった。


「それで、こいつら二人が今まで貯めこんでいた金品等も持ってきたのだが、貴方に渡せばいいのか?」


イツキがそういうと、後ろにいたリカたちが、両手で持っていた盗賊たちの財宝をその場においた。


「律儀に届けてくれたのか?普通であれば捕らえた盗賊たちの持ち物は冒険者が、こっそり抜くものなのだがな。」


 それがこの世界の常識なのだろうが、イツキにその常識は通じなかった。それもそうだ世界をひとつ持っており、そこですべて賄えるのだから。


「そうなのか、まぁ別におれは、報奨金とやらがもらえればそれでいい。」

「成程、流石に大物だな。」


 リキスが部屋に備え付けられているブザーを鳴らすと、控えなノックと共に、ギルド職員が数人入ってきた。


「ではイツキ君、早速だが、盗賊はそちらのギルド職員に、引き渡してもらってよいかな。」

「どうぞ。」


 盗賊たちは入ってきたギルド職員たちに連れていかれたが、その顔はイツキたちから解放されて、とても嬉しそうだった。

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