ラルド
学園祭が始まる2週間前……に遡る
いつも通りエンデューロ支部は任務を行っていた。
今日の任務は密輸組織の壊滅であった。組織のアジトである屋敷をベルト支部長が様子を伺いながら拘束する機会を探っていたが、ラルドが命令を無視して一人で突っ込んでいった。
「お、おい!」
「あの馬鹿また!どうしますか?」
「どうしますかってねぇ……やるしかないでしょ。1班は外で2班は俺と着いてこい。」
ラルドの後を追うように屋敷の中に入っていく。しかし、屋敷の中に入るともう戦闘は終わっていた。ラルドには怪我は無かったものの組織の人間たちは死んではいないものの、重傷の人たちが倒れていた。
「任務終了しました。あとは任せます。」
「お、おい!」
「なんです?」
「最近の君はなんだかおかしいぞ?そんなに俺が頼りないか?」
「別に……それでは……」
帰っていくラルドの背中を見ているベルトは頭をかきむしった。クレース副支部長は止めようと声をかけようとしたが支部長に止められてしまった。
ラルドは自室に戻りベッドに寝転んだ。
支部長の言葉が甦って来たがもうどうしようもなかった。学園祭までにあれを買わなくてはと焦りが見えていた。次の日にはギルドの依頼を一人でやるようになっていた。
朝から夕方までは依頼を夜には任務をやるようになっており、彼の体はぼろぼろに近くガス欠寸前であった。
そして学園祭が始まる7日前にイツキがやってきてあのサプライズをやると言ってくれた。だがそれまでにはやり遂げなければならないと任務を命令を無視して一人でやっていたのだ。
それを見かねたベルトが学園祭前日にラルドを夜桜の地下に呼び出した。
「用はなんでしょうか?」
「用は言わなくてもわかるだろう。君の行動についてだ。なぜ1人でやろうとする?仲間を信じられないのか」
「そう見えますか?」
「君の行動は称賛されるようなものではない。だが任務は成功している。」
「そのような話なら俺は用があるんでこれで……,」
ラルドはそっけない態度でベルトに背を向け立ち去ろうとする。ラルドは背後から殺気を感じ防御弾を咄嗟に覆い防いだ。攻撃してきたのはベルト支部長だった。
「支部長!」
「クレースくんはなにも言うな。」
「いや……しかし」
「何すん……ですか!」
ラルドはベルトの攻撃を弾き返した。ベルトは空中で回転して元の立っていた場所に降り立った。しかしベルトの表情はいつもの砕けた感じではなく人を幾度となく斬ってきた修羅のような顔つきになっていた。彼の魔力が部屋中を覆い皹が入り始める。ベルトは腰に掛けてあるオプションワークスであり愛刀の<大蛇>を抜く。
「戦いたまえ……これからすることは模擬試合ではない殺り会いだ。」
ベルトの殺気に息を詰まらせるラルドだがオプションワークス【虎鎧】を着る。このオプションワークスはラルドの魔法弾の威力を上げる。さらに<義経>と<頼朝>を呼ばれる兄弟の刀を持つ。
そしてベルトが動き出してホーク剣術【破断】を繰り出す。
破断とは凄まじい勢いで螺旋状に地面を抉りながら突進して斬り刻む剣術のこと。
それを繰り出しラルドに襲うが、
強化装甲弾
+
闇炎防御弾
II
深淵追撃弾
魔法防御弾にて攻撃を防ぎ、さらにその攻撃の威力をベルトに跳ね返した。しかしベルトは一瞬の判断で回避した。
「やるねぇ…さすが次期班長だよ。」
「何すんだよ。これやったって意味は…。」
「あるよ。だからするんじゃないか。君は目的でないと動かないのか?そうじゃないだろ?」
「うるせぇー!説教すんじゃねぇよ!」
「だったら俺を倒すんだな。でないとずっと喋ってるよ。」
ラルドは怒りに任せて動き出した。動きが単調で分かりやすいためベルトはわざと斬られる寸前に避ける。怒りが頂点に達したラルドは第一級破壊弾魔法【殲滅方位弾】をベルトを囲むように展開して放つ。放たれた魔法弾はベルトに当たらなかった。ベルトはホーク剣術新式防御技【流鷹】という技で回避した。
この技は意識を刀に集中させたときにできる回避剣術。鎬から刀紋に少量の魔力を乗せることにより魔力弾を滑らせて全て弾いていた。
「君は怒りに任せるからうまくいかないんだよ。だから未熟なんだよ。」
「説教たれんじゃねぇ!」
ベルトは<黄昏>と呼ばれる三段突きでラルドの頭、鳩尾、心臓に打ち込まれ倒れてしまった。ベルトの以前の二つ名は【鷹の目】と呼ばれていた。ベルトの目は常人を遥かに越えていたためからである。その気になればその人の癖、呼吸、動きなど動作を把握できる。まさに化け物クラスである。しかしベルトはこれを嫌っており使うことはほとんどない。エンデューロ湾での取り締まりは彼が居てこその功績である。
【追加変化弾】
ラルドは遂に我を忘れてしまい真っ正面から馬鹿正直な突っ込んできた。ベルトは歩き出す。追加変化弾を避けてラルドの横を通過する。ラルドは軌道変更するために回転するができなかった。魔力が操作出来なかったのだ。ベルトは通過間際に魔力を操作困難にさせるツボを打ち込んでいた。ラルドは立ち上がれなかった。しかしラルドも笑っていた。それに気づいたベルトだが遅かった。
《術式魔法弾展開》
【絶装魔弾】
ベルトの足元を覆う魔法弾が光の柱となり立ち上る。ラルドがつい最近完成させた魔法弾である。殺傷能力は上がるが燃費が悪く起動するのに時間が掛かる。そのため発動時間は極めて短いため奥の手である。光の柱が収まると火傷をおっているベルトが立っていた。そして倒れた。
「君は強い……強いがゆえ過ちを……犯す。しかし間違いはいいことだ。だから君の気持ちは受け取った。行きなさい彼女の元へ。」
「し、支部長……」
「剣を交えてわかった。なぜそんなに焦っていたのかを……だから行きなさい」
「あ、ありがとうございます。」
ラルドは涙を堪えて痛む体を押さえながら部屋を出ていった。クレースは倒れているベルトに歩み寄る。
「支部長……貴方という人は手を抜きましたね?」
「そんなことはないよ。彼が強いがゆえだ。」
「しかしどうするんですか?」
「どうするもなにも彼は変わるよ。きっといい隊員に成長するよ。」
「いやそういうことじゃなくて……これどうするんですか?」
ベルトが回りを見ると部屋は跡形もなく崩れ去っていた。それもそうだ災害級のふたりがぶつかり合えばそうもなる。破壊音に驚いたクリスが慌てて夜桜の修練場に駆けつけてきた。この惨状に驚いたが正気を取り戻しベルトを怒鳴り付けた。回復魔法で直した後、後片付けと始末書をやるはめとなった。
ラルドだが公開プロポーズが成功し、ヒナが卒業後に入籍することになった。
大盛り上がりを見せた学園祭及び文化祭は幕を閉じたのであった。
以後、この音楽祭で告白すると恋が成就するという伝説が生まれたのであった。