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音楽祭

『これより!第4回イース魔術学園音楽祭を始めます!!』

『『『オォォォォ!!!』』』

『………』


思わぬ来客達に翻弄された二日目から日付は変わり、一週間にも渡る学園祭の最終日を迎えた俺のテンションはかなり低めだった。


『さあ!というわけで始まりました、音楽の祭典略して音楽祭!学園長の気紛れから生まれた比較的歴史の浅い行事ですが、会場となっている闘技場の観客席は既に満席状態となっています!!

いやあ、壮観ですねイツキ先生!!』

『……そうですね、一昨年度の音楽祭は映像で見た程度だったので、ここまで観客が居るとは思いませんでした。………ところで俺は何でこんなところに居るんでしょうか?』


さっきまで店をレイムとルーチェのコンビに任せて、闘技場の控え室でヒナさんとユウヤ(どうせなら、ということで参加)達と曲の最終チェックをしていた筈なんだが、なぜ学園長がいつも座っている解説者席に座っているのだろうか?


『いやあ、本当ならいつも通り学園長がそこに座る予定だったんですけどね?学園長がちょっと昨日お酒が飲めないのに、はっちゃけてお酒を飲んでダウンしてしまったので、急遽代理で学園長のパシ…もとい信頼の厚いイツキ先生を呼び出した次第であります!』

『今パシリって言い掛けましたよね?というか俺も一応これに出るんですが』

『大丈夫ですよ、イツキ先生達の出番はどうせ最後なので。』


いや、そういう問題じゃなくて。


『というかクロト先生とか骨か…コホン、スカル・ボーン先生とかを呼び出せばいいじゃないですか?』

『クロト先生は「面倒くさい」の一言で一蹴、スキン先生はどうせ呼んでも歌なんか聞こえないので却下です。』


骨川先生もといスカル・ボーン先生というのは学園名物の今年で160歳という今にも天に召されそうなお爺ちゃん先生だ。ちなみに担当教科は薬学。

というかクロト先生、あなたはいつでも安定のものぐさっぷりですね。


『まあそんなわけなので、諦めて解説者のお仕事頑張ってください。』

『………』


後で学園長に時間外勤務手当を請求してやる


『さあ!という訳で今回の司会進行は私ネル・アルゴと、頼まれたら何だかんだで断らないことで有名なイツキ先生の二名でお送りします。』

『人をそんなツンデレみたいに言わないでください。

というかさっさと進めません?さっきから演出担当の先生がいつ始まるかオロオロしてるんで。』

『おっと、失礼しました。実を言うと尺があんまり無いんですよね~。

そういうことなので、ここからはサクサクと進行して行きましょう、サクサクと!』


何で二回言った?それとあんまり裏の事情を語らないでください


「あ、イツキ先生、これ進行用のプログラムなので、一応これの通りに進めます。」

「了解です……。」


マイクの魔力供給を切ってネル実況が一枚のプリントを渡してきたのでそれを受け取る。


『それでは、先ずは第一組目!GMBの皆さんです!

GMBの皆さんは準備をお願いします!』

『GMB?』

『えっと……ボーカルのアヴェール君によるとグッドマンブラザーズの略だそうです。

どうやら同じ趣味を持つ男子生徒同士で集まったようですよ。』

『なるほど………もう帰ってもいいでしょうか?』

『何でですか!?』


いや、だってボーカルがアヴェールでアレと同じ趣味を持つ男子生徒共だろ?

もう既に嫌な予感しかしないんだが。


『おいおいイツキ、傷つくこと言ってくれるじゃないの?』

『おっと、どうやらGMBの皆さんの準備が整ったようです!』

『それでは迅速に始めて、迅速に退場して頂きましょう。ネルさんお願いします。』

『は、はい!それでは、盛り上げて頂きましょう!

聞いてください!GMBの皆さんで』

【やら〇いか?】

『ちょ』


いいのか?この曲がトップバッターとか俺だったら色々と萎えるんだが…。


俺の心配を余所に、闘技場全体にあの特徴的なイントロが流れ始め、舞台の上に居るであろう我が級友のイイ男に目を向ける。


「げ………」


そして、反射的に顔を顰めた。

舞台の上には、やはり青いツナギを着てマイクを持つイイ男が居て、更にその後ろに両手を広げて天を仰ぐようなポーズをとっている数人のこれまた青ツナギが居たのだが、その中にやけに目を引く金髪オールバックのマルフが居たのだ。


「何やってんだアイツ……?」

「どうしたんです?改心して常に己の貞操を狙ってくる級友(♂)を見つけたような顔をして。」

「どこからそのピンポイントな予想が出てくるんですか?」


まさに今がその状況だよチクショー



♪~何もかもが新しい世界に来ちゃったZE!

たくさんのドキドキ乗り越え踏み越え イ ク ぞ ~♪



かつて貴族であることに誇りを持ち、高圧的だった少年の現在の変わり果てた姿(精神的な意味で)を見て何故か妙な感傷に浸っている間にも曲はどんどん進んでいく。


「マジでこの曲をトップバッターにしても良かったんですか?」

「大丈夫ですよ~、一昨年もGMBの皆さんはこの曲で出てましたけど、やっぱりその時もトップバッターでかなりウケてましたから。

……そういえばマルフ君はどういう訳か今年から加入したみたいですけど、何があったんですかね?

高圧的な態度で有名だった彼がこんなお世辞にも品がいいとは言えない曲のバックダンサーをするなんて想像出来ませんでしたよ。

やっぱり奴隷売買で家が取り潰されたのがショックだったんですかね?」

「…………そうかもしれませんね。」


もしかしたら、アヴェに背後を取られ掘られた可能性がある。



♪~オトコのコは いつだって 夢見る オトメなの ピュア ピュアな心で 恋して愛して S、O、SO~♪


『『『アッーーーーー♂』』』


「ちょっ」


観客席の所々から野太い男達の声が聞こえてきたんだが。


「おー、今年は去年より少ないですねー。」

「少ないの!?」


何この国、同性愛者多過ぎだろ。


「まあこの国は唯一同性婚が認められている国ですからね、そういう人が集まるのは当然ですよ」


そういえばここは基本的にそういう結婚とかの法は緩いんだった。

まあだからといって別に同性愛者を差別するようなことはしないけどさ。

………その対象が自分に向いてさえいなければ。


♪~ や ら な い か ! ~♪


と、先輩と話している間に曲が終わったようで会場が拍手と野太い歓声に包まれていた。


『はい!GMBの皆さんありがとうございました。いや~、盛り上がりましたね~イツキ先生』

『そうですね、一部の人は特に盛り上がったんじゃないでしょうか?この後トイレに行くノンケの方は背後に細心の注意を払うことを強くオススメします。』


『や ら な い か ?』

『やりません、さっさと退場しないと凍り漬けにして海に投げ捨てるぞアヴェ。』

『ああっ連れないでもそれがいアッーーーー!!』

『……大変見苦しいものをお見せして申し訳ありませんでした。彼には後ほど厳重な注意(という名の制裁)を加えて置くので何卒ご容赦ください。』


取り敢えず舞台の中央でビクンビクンし始めたアヴェは、宣言通り凍り漬けにしてから時計塔の天辺に磔になるように転移させた。

運が良ければ3日くらいで溶けて落ちて来るんじゃないかな?

落差が300m以上あるけど、アヴェなら軽い打撲程度で済むだろ。

願わくば頭を打って真人間になって欲しいが。


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