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調達

「さて、着きましたよ。」


それからしばらく三人で談笑しながら歩いていると、果てしなく広がる水田の中にぽつんと一軒だけ建っている木造の小屋があった。


「では、入りましょう。」


ドアの前に立つと、基本的に礼儀正しいレイムさんにしては珍しくノックもせずにドアを開け放った。


「おや?巫女姫じゃないですか。今日はどうしたのですか?お米でも無くなりましたか?」


レイムさんに続いて俺達も小屋に入ると、中には小さなテーブルと椅子が一脚あり、その椅子に見覚えのある金髪のイケメンが腰掛けていた。


「そうですね幻。今日は食材の補給に来ました。」

「取り敢えずいつものでいいですか?」


レイムさんの言葉を聞くと、金髪イケメン…幻想(人化ver)はボックスを開き成人男性が裕に二人は入りそうな巨大な籠一杯に詰め込まれた野菜、果物と地球でも使われる30キロの米袋を5つ取出しテーブルに置いた。


「それと、他にこのメモに書かれた食材を頂けますか。」

「なるほど…珍しい客が居ると思ったらそういうことでしたか。学園祭は大変そうですね。」


レイムさんは相当な重量があるであろう食材達を表情一つ変えずにボックスにしまうと、幻想にさっき俺が渡したメモを渡し、幻想はボックスからまた大量の野菜類と米袋を取り出した。


「取り敢えずこの層で集められる食材は出しといたから持っていてください。」

「あ、ああ、サンキュ。……てか錫杖のお前がなんでこんなとこで農夫みたいなことしてんだよ。」


渡された大量の食材をフェルトと身体強化を使いながらボックスに入れ、金髪イケメンに問い掛ける。


「いやぁ前にマスターに折檻された後、この仕事を罰にされましてね?最初は嫌々ですが、最近になってハマました。

他にも色々あるんならさっさと行ってください。わたしはここで聖書えろほんを読むという使命があるんです。」

「そうですよ、マリア様。他にも入り用な物はあるんですから。」

「あ、ハイ。取り敢えずじゃあな、助かったよ。」

「男に感謝されても嬉しくないのでさっさと行ってください。」


そんな軽口を聞きながら俺は88層を跡にした。


「で、次は何ですか?」


俺達は88層を後にすると、今度はレイムさんが持っていた転移の結晶を使い2層の主街区にやってきた。


「もう大体予想はつきますけど、ここでは何を?」

「2層ではミルクと食肉類を集めます。

食肉はフィールドに出ないといけないので、先ずは街を見て回りましょうか。」

「ミルクは?」

「ミルクは街で贔屓の店から仕入れます。食肉類は少し時間が掛かるので後回しですね。」

「時間が掛かる……?」


まさか狩りに出るとか言わないよなこの脇巫女。


「ええ、フィールドに狩りに行かないといけませんので。」

「やっぱりか!!」


マジか……今文化祭の真っ只中なのに何故狩りをする羽目になるんだよ……。


「ま、仕方ないか。」


あの神外あいつの理不尽さは今に始まった事じゃないし、一度引き受けたことはちゃんとやらないとな。


「カレンさん、いらっしゃいますか?」

「あら、レイムさん。いらっしゃい、今日はどうしたの?」


転移門から歩くこと10分、レイムさんは一軒のそこそこ大きな家の前に立ち止まると、今度はちゃんとノックをして中に入った。


「あらら?そっちの格好良い男の子は?レイムさんの彼氏?」

「いや、俺は「笑えない冗談をおっしゃらないで下さい。私がお慕いする男性は永久にイツキ様只お一人です。」……。」


カウンターに腰掛ける女性の言葉を否定をしようと、口を開くと言い切る前にレイムさんが無感情な声でバッサリと切り捨てた。


「あはは、ごめんごめん。

そこの君達、初めまして、私はカレン、見たところ学生さんみたいだね」

「あ、マリアです、こっちはフェルト。よろしくお願いします」


そう言って二人で頭を下げると、カレンさんは笑いながらよろしく、とつけ加えた。


「それで、レイムさん。今日はどうしたの?仕入れ?」

「ええ、仕入れと、お二人にこれだけお願いします。」

「はい、それじゃ一万Cね。お会計は両方別々がいい?」

「いえ、一緒でお願いします。」

「了解、それじゃ全部で一万と三千Cだね。毎度あり。」


レイムさんがお金を払うと、カレンさんは一度店の奥に引っ込み、大量の牛乳を入れた大樽と、一回りちょっと小さい樽を持ってきた。


「ありがとうございます。それではマリア様、こちらをお持ち下さい。」


レイムさんはお金と引き換えに2つの樽を受け取り、小さい樽をこちらに渡してきた。


「あ、すみません。お金払いますよ」

「いえ、お代は結構ですので。第一お二人はイースの通貨しかお持ちでないのでは?」

「あ……」


俺達の分の代金を払おうと財布を取り出すと、レイムさんに手で制された。

そういえばさっきカレンさんがCって言ってたじゃん。


「それに、どうせレイム様も元からそのつもりでお二人に頼んだようなので。」


そう言ってレイムさんは俺にイツキから預かった紙を渡してくる。


「げ………」


それを受け取り、よく読むと俺は思い切り顔を顰めた。


『どうせ後で馬車馬の如く働いて貰うから、材料代は気にしなくていいぞByイツキ』


帰ったらあいつを一発殴ろうと思った。

まあ確実に簡単にあしらわれるだろうけど。


「……なら、お言葉に甘えさせて貰います。」

「なんで顔を引きつらせてるのよマリア。何が書いてあったのですか?」


フェルトには見せないでおこう、どうせ午後から死ぬほど忙しくなるだろうし。


「さて、それでは私達は次に行きましょう。ではカレンさん、失礼します。」

「はい、毎度ありがとうね。今度はゆっくりしていきなよ、大好きなイツキさんを連れてさ。」

「………失礼します!」


俺達は一度カレンさんに礼をすると、足早に店から出ていくレイムさんを追い掛けた。

ヘッドドレスに留められた銀髪から少し朱が覗いていたが、見てないことにしよう。

下手に弄ったら後が怖そうだし(拷問されそうだし)


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