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妖秩の城“アルティス”

マリアside

ん?あ、久々に俺視点か


「取り敢えず“アルティス”には着いたが…」


正確には“アルティス”に入る巨大な扉の前にある大階段の前に転移したんだが、相変わらずのデカさと目に悪そうな赤い外壁に苦笑いをこぼしてしまう。


「取り敢えず扉の前に行こうぜ、多分呼鈴を鳴らせばレイムさんが来てくれるだろ。」

「そうだね。」


俺はフェルトを連れて巨大な扉に向けて階段を上りはじめた。

リンゴーン

扉の前に着くと、扉の横にレトロなデザインの呼鈴があったので、それを押すとそんな音が聞こえてきた。


「はい、どちら様でしょうか?」


すると、鳴らして10秒経たない内に扉が開き、脇が空いた巫女服が姿を現した。


「こんにちは、レイムさん。」

「あら、マリア様にフェルト様。こんにちは。今は文化祭の最中の筈ですが……どうかなさいましたか?」


フェルトが挨拶をすると、レイムさんは挨拶を返し、少し首を傾げながら聞いてきたので、説明をしようと上着のポケットから小さく折り畳まれた紙を取り出した。


「少しイツキにお使いを頼まれまして、そこに書いてある食材を集めに来たんです。」

「なるほど、そうでしたか。ですが困りましたね……丁度屋敷の食材も少なくなってきたので、これから取りに行くところだったのですが………。」


渡した紙を丁寧に開き、中身をざっと見たレイムさんは顎に手を添えて考えるような仕草を作る。


「あ、ならその食材集めに私達も同行していいですか?それなら私達も必要な食材を集められますし。」

「……そうですね、イツキ様もそれ程急がなくても良いと書いておりますし。分かりました。ではご同行お願いします。」

「こちらこそお願いします。」


相変わらず丁寧な人だと思いながら俺はレイムさんに頭を下げた。


「それで、まずは何を取りに行くんです?」


転移門を使い、88層の主街区に降りた俺達は、主街区を出てフィールドを歩いている。

すると、俺の隣を歩くフェルトがレイムさんにそう問い掛けた。


「そうですね、まずは野菜、穀物、果物でしょうか。」


「穀物はまあ分かりますけど……野菜と果物までこの層にあるんですか?」


主街区を出た瞬間から視界一杯に広がる水田を見ながらレイムさんに聞き返す。

88層で穀物類を栽培しているのは前から知っていたが、他にも野菜果物を栽培しているとは知らなかった。


「いつもは屋敷の裏にある菜園で収穫したり、下層の店や王国の商店街で買っているんですが、流石に今回は量が量なので………。」


苦笑いを浮かべながらそう言うレイムさん。

何というか……本当にお手数おかけしてスイマセン………


「あれ?そういえばレイムさん、今下層の街に買いに行くって言ってましたよね?」

「ええ、それがどうかなさいましたか?」

「いや、ここってレイムさん達以外にも誰か住んでるんですか?」


先程の会話を聞いて、少し気になったことをレイムさんに聞いてみる。

俺達がここに滞在してた時には基本的に天宮がある100層と、イツキが直接転移で送るどこかも分からない森や洞窟にしか入らなかったので、街のことは一切分からない。

88層の主街区には誰も居なかったし


「あ、そういえばそうですね。………そういえばここってイツキさんの意思で早く時間が進んだりしてるんだよね?もし人が居るならイロハ達の………」


そこで言葉を切って頬を赤くするフェルト。

流石にフェルトが言わんとすることは分かったが………


「いや、無いだろ。」

「フェルト様が想像したようなことはありませんよ。何なら確かめますか?」


そう言ってレイムさんは膝上のスカートを少したくしあビスッ!


「目が!目がぁぁぁぁ!!!」

「見るなっ!!」


いや、でも流石に目潰しは酷いと思う。


「ふふっ、冗談です。」

「「……」」


うん、この人?も立派にリカに造られてねぇな。

「質の悪い冗談はやめて下さいよ……イツキに殺される前にフェルトに拷問で殺されます。」

「ふふ、それは申し訳ありません。まあ軽いジョークですのでお気になさらず。

元よりイツキさま以外には興味はありませんので。」


軽いジョークがとんでもないハードパンチだったんだが。

それになんか後半に変な言葉が聞こえた気がするが、そこに突っ込むとせっかく冷やした目にまた深刻なダメージを負うことになりそうなので黙殺する。


「ああ、そうそう。先程フェルト様がおっしゃったようなことは一切ありませんのでご心配なさらず。

我が家の女性は私含めて皆さん生粋きっすい生娘きむすめですので。」

「きっ…!?」


悪戯な笑みを浮かべてレイムさんが言った言葉に顔を真っ赤にするフェルト。

レイムさんもやっぱりイツキたちの一員だけあって相当良い性格をしているようだ。

フェルトの反応を見てニヤニヤしてるし。


「そ、それで!その線じゃないってことはどうなってるんですか?」


これ以上弄られて精神にダメージを負う前にさっさと脱線した話を戻す。


「私達以外の人が住んでいるか、でしたね。答えを言ってしまえば、はいです。」

「へえ……どんな人が居るんです?」


フェルトが聞くと、レイムさんは少し言うのを躊躇うかのように数回瞬きし、口を開いた。


「そうですね、まず、お二人はイース王国で最近奴隷や孤児に関するお話を耳にしましたか?」

「そう言えば……シェリカが攫われた一件と、最強決定戦の後からはどっちも全く聞かなくなったな。」


そう言えば夏休みに孤児院が何軒か出来たり、貴族が何人か国外追放されたとかの話は号外とかで見たけど、やはり彼が関わってるんだろうか?


「あ、もしかして……その住人っていうのは……」


フェルトが何かに気付いたように声を上げると、レイムさんは優しく微笑んで話を続けた。


「らお気づきの通り、このフィアンの下層に暮らす人々は元奴隷や孤児の子ども達です。

先の夏休みにイツキ様と元ギルドマスタークリス様を含めた皇達で、奴隷を隠し持っていた貴族達を一斉に摘発し、私のように帰る所が無い元奴隷達をここに住まわせているのです。」

「流石にそれ程の人間を養うのはいくらイツキ様にも辛いものがあったので、その人達には家と土地、最低限の衣服、食糧を与え、この巨大な城の広大な土地で農耕を任せたり、牧畜、商売などの仕事を与えて自立して貰いました。

そして、ある程度生活に余裕が出来た家庭にはイース王国の孤児院では受け入れられなかった孤児の子ども達を養子として迎え入れて貰っているのです。」

「なるほど……もうこの城が一つの世界ですね。

……その人達は今はどうしているんです?」


流石は秩序の権化が作った世界。

聞いた限りではきちんと一つの世界として機能している。


「ふむ、お気になられますか?今はもう人によっては元奴隷同士で結婚をして子供を産んだ家族もありますよ。

では、後で下層の街を少し見回ってみましょう。」

「「はい!」」


どうやら“アルティス”は根本的にこの世界はイースとは時間軸が違うらしい。

でないと夏休みにここに来た人が子供を産める訳が無いし。

ともかく一つ俺が言えるとしたら、

この城で何してんだお前………。


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