文化祭開幕
『ただいまより、イース魔術学園文化祭、一般公開を開始します。』
「よし、それでは皆。高等部の文化祭!成功させよう!!」
『『『お~~~!!』』』
慌ただしかった二日間の体育祭も終わり、学園祭週間3日目の文化祭初日を迎えた我が2Sクラスは相変わらず騒がしかった。
「それじゃ、俺から、まず午前中担当の調理班は拡張したキッチンで調理。
給仕班は班の中でローテの順番とかを決めておいてくれ。
接客で女子は客に絡まれたら直ぐに近くの男子を呼ぶこと。男子は問題が起こったら迅速に対応しろ。場合によっては実力行使もいとわない。
呼び込み班はチラシを持って各担当域に散らばって呼び込み。
こっちは必ず2人以上で組むこと。問題を起こさない為にも出来るだけ一人にならないようにしてくれ。
あと、呼び込み班と給仕、接客班は午前午後で入れ替わって貰うからそのつもりで。
………注意事項はこのくらいかな?イリヤ、進めてくれ。」
俺は教壇でクラスメイト達に注意事項を連絡し、隣に控えていたイリヤに場所を譲る。
「よし、それでは班ごとに分かれて仕事を始めてください。
先程も言ったが皆にとって最初の高等部生としての文化祭です。
利益を出すことも勿論大事ですが、それ以上にこのメンバーで思い出を作ることも私は大切なことだと思います。」
イリヤはそこで一旦言葉を切り、一度クラスメイト達の顔を見渡すとふっと表情を綻ばせ言葉の続きを紡ぐ。
「とにかく皆!私から言うことはたった一つです!!この時間を楽しみましょう!!!
解散!!」
『『『おお~~~~!!!』』』
そして、クラスメイト達はバタバタと慌ただしく持ち場に移動し、俺達の文化祭は始まった。
「イツキ!2番卓オムライス1、ペペロンチーノ1、ミートパイ1!」
「あいよ!」
「イツキ!1番卓…抹茶モンブラン1、苺ショート1、チーズケーキ1!さらにみたらし団3」
「5番卓…オムライス2、紅茶1、サンドイッチ1、ミートパスタ、ペペロンチーノ、おにぎり20」
「あいよ!冷蔵庫に入れてある!持ってってくれ!って多いな。ギャル曽根並みか…イリヤ!」
「了解です。」
さてさて、準備が終わって2Sのコスプレ喫茶を開店したはいいのだが、
「イツキ!10番卓サンドイッチ2、マグロドンにぎり2」
「イーステリア君、4番卓ミルクティー3!」
「イツキ!僕にザーメ「死ね!!」うほぉ!」
アヴェを回し蹴りで吹き飛ばし、外へ投げ出した。
見ての通り忙しい。
キッチンは今は一応6人態勢で回して注文を捌いてるものの、正直余りの客の入りに微妙に手が回らなくなってきている。
「イツキ…材料の方が…少し不安になってきたけど……一度“アルティス”に戻って…とって来る?」
と、パスタを湯に入れ材料を切っていると、新撰組の隊服に身を包んだイロハが声をかけてきた。
「はぁ?もうかよ……まだ開店して2時間ちょっとだぞ?いくらなんでも早すぎるんじゃ………。」
用意しておいたものが少なくなってきたケーキを作りながら苦笑いを浮かべる。
作業のモチベーション等はイロハは新撰組の隊服を見て最高値を維持しているので全く問題ないが、流石に材料はモチベーションでどうにかなるものではない。
「しょうがない、館に取りに行くしか無いけど……正直今キッチンから離れるのは不安だな。
マリアとフェルトにでも頼むか……ってコラ!何摘み食いしてるんですかレナさん!」
「てへっ」
「………はあ、取り敢えずイロハ、これの仕上げだけ頼んでいいか?」
「わかった。」
「直ぐ戻るから。」
俺はそう言うと、リカに無理矢理着せられた執事服の上に着けていたエプロンを脱ぎ畳んでボックスに放り込むとキッチンから出た。
あ、ちなみにキッチンは教室を学園長が魔法陣によって拡げ、そこに調理器具を置いた簡単なものだ。
勿論調理器具は”アルティス“から持ち込んだものなので性能は段違いだが。
「マリア、あ、丁度フェルトも居るな。」
「ん?どうかしたか?」
キッチンから出ると、満席のテーブルと慌ただしく動くクラスメイト達がまず目に入るが、俺は取り敢えずそれは無視し、目的の人物に声をかける。
「いや、ちょっと用意した食材が心許なくなってきたからちょっと“アルティス”まで取ってきて欲しいんだよ」
「へ?早くないか?……まあそれくらいはいいけどさ、何で俺とフェルト?」
借金元帥服に身を包んだマリアは銀色のトレイを指でクルクル回しながら聞いてくる。(ちなみに俺は白い執事服)
「ちょっと今は調理場から人が割けないんだ。
それで、”アルティス”に行ける人間が今おまえらしか居ないんだよ。」
グレンとクウリは仲良くデート中だし、フレイは転移使えないし、リカはホールでメイド服着て作業してるし、レナさんは摘み食いでユウヤに説教されてるし
「まあ客も多いしな。わかった、行ってくるけど何を取って来ればいい?」
「助かる。必要な物はここに書いてあるから頼むよ。」
そう言ってマリアに小さく折り畳んだ紙を渡す。
「取り敢えず“アルティス”に着いたら直ぐにそこにレイムが行くと思うから、レイム(リカに造られたゴーレムだが殺された人の魂が入っている)にその紙を見せてくれ。
結構量があるから大変だろうけど頼むよ」
「了解、じゃあ直ぐに向かう。フェルト行こう。」
「うん、じゃあ行ってきますね。」
「頼んだ。」
転移していくマリアとフェルトを見送り、一通り客に挨拶をしてから俺はキッチンに戻った。