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結末

「しょうがない。」


俺は本日何度目になるかもう分からない溜め息を吐きく。その間にも学園長が爆脚で高速の攻撃を仕掛けて来るが、ひらりひらりと躱し続ける。


ー震え幻想ー

【銀に震える鞭】


学園長が空間を一瞬膨張させ攻撃範囲を拡大して爆発させ、若干慌てて跳躍し回避する。鞭を振るい牽制する。


「げ……これはやっちまった?」


それから俺はとんでもない悪手を打ってしまったと悟るが、そんなものは今更後の祭り。

学園長はニヤリと唇を吊り上げると、上空10m程に居る俺を見据えて拳を下段に構え、魔力を流す。


「……おいおい」


すると、学園長が流した魔力に呼応するように空間は一度ドクンと脈打つときん、きんと音を出しながらを腕を伸ばしていき、1mちょっとだった全長をなんと3倍程にまで巨大化した炎の化身が誕生した。


「くっそ…!……お?」


内心でふざけんなと言いたくなる衝動をどうにか抑えて、周りを見渡すと丁度近くにあったガイルさんとシンゴさんが座る解説席(舞台から約20メートルの高さ)にいいものを見つけ、鞭を握っている右手を解説席に向けて勢い良く振る。


『『『うわぁ!?』』』


すると、俺の右手から一筋の銀が飛び出し、解説者席にあったいいもの――固定式のマイクスタンド――に巻き付いた。


「よし!」


俺はその瞬間を逃さずにせっせとマイクスタンドに巻き付いた銀色の根元を今度は腕に巻き付け、ピンと張らせると落下するはずの俺は重力に逆らい解説者席の真下10mのところにぶら下がった。


『な…なななんと!絶体絶命かに思われたイツキ選手!空間から取り出した一本の鞭をマイクスタンドに巻き付けそれにぶら下がり、危機を脱しました!

……あ~驚いた。』

「………」


俺のまさかの行動に会場にどよめきが起こるが、恐らく一番驚いたであろう三人に胸中でごめんなさいし、するすると腕に巻き付けた鞭を解き、ある程度の高さまで降りた所で今まで背中を付けていた壁に手を触れる。すると、壁から簡易的な妖力で形成した足場が生えてきたのでそこに立ち右手の鞭を数回軽く振る。


「いやいや…流石に冷や汗をかいた……」


そう苦笑いで呟きながら弛んで落ちてきた鞭の先をキャッチし、左手に持ちパシンッと音を立てて一度強度を確かめるつもりで張らせる。


『『『キャアアアアア!!!!』』』

「うおっ!?」


その瞬間、突然会場の至るところから女子の悲鳴が聞こえてきて危うく妖力の鞭を取りこぼしそうになる。………そんな悲鳴を上げるほど俺が鞭を持つのは似合わないのだろうか?


~~~~~~


観客席Side

「ああっ!イツキ!その鞭で俺を調教してください!いや!むしろするのもアリか!?」

「落ち着けアヴェ!間違いなく調教される前に殺されるぞ!!」


一方こちらでは………


「「「「………////」」」」


「ねえ、ユウヤ。何で彼女たち(現在観客席のイロハ、イリヤ)(シェリカ、ミキは控え室にて観戦)は顔を真っ赤にして俯いてるの?」

「……さあな。(十中八九脳内で妄想を繰り広げてるんだと思うけど)」


イツキの予想に反して色んな人に効果はばつぐんであった。


~~~~~~

「へえ、炎属性の中でも特に温度が高い白炎を防いで燃えないなんて。

相当の魔法耐性マジックスキルだね。」

「特別製…なんでね。」


簡単する学園長にそう返し、絶え間なく飛んでくる炎の玉を鞭を振り回して次々に打ち消していく。

常時ブラッキー先生の魔法破壊スペルブラストを行っているようなものなので、若干神経をすり減らすことになるが、日頃学園長に振り回されたりアヴェさんに襲われることに比べれば無いに等しい負荷なので問題は無い。


「こいつで…ラストォ!!」

《天音流鞭術》【花奏かなで


無数の弾を鞭の先を槍のように真っ直ぐ伸ばし、球の中心を貫くことで掻き消す。


「ハッ!」


そして鞭の先端を引き戻し、学園長に向けて放つ


「まだまだだよ。」


学園長は、凄まじい速度で迫り来る鞭の少し膨らんだ先端をピンポイントで平手を使い上に突き上げるようにしてパリィする。


「なぬっ…」


俺は弾かれるにしても鞭の胴の部分だろうと高を括り、弾かれた後に拳に巻き付かせて力ずくで拳をひっぺがそうと完全にあてにしていたので、まさかの回避法に間抜けな声を出してしまった。


「流石に貴重な君の隙は見逃せないな。」


そして、学園長は弾かれて言うことを聞かない鞭を回収しようと右手を引いた俺に青い爆脚で肉迫する。


《空間圧縮・蒼】【蒼天】


俺は学園長の思わぬ回避法に多少面食らいながらも、わざわざ素直に攻撃を受けてやる義理もないので慌てず騒がず魔法を発動。


「わっ!」


すると、俺の体の周りを囲むようにして全方向に突風が吹き荒れ、俺の首を刈り取ろうと学園長が振り下ろした手刀を吹き飛ばす。


「セイヤァ!!」


そして、先程の俺のように武器を跳ね上げられ無防備になった学園長に向けて引き戻し終えた鞭を凪ぎ払う。


「ぐっ!!」


すると、学園長はこの戦闘が始まった以来2度目となる苦悶の声を漏らしながらバックステップで距離をとる。


「痛ぅ……流石に効いたよ。」


そして学園長は5m程の所まで下がると痛みを堪えるような表情を浮かべながら俺に打たれた所を擦る。

どうやら無意識に空間圧縮を解除していたようだ。


「やっとダメージらしいダメージを与えられたよ。」


学園長が腹部を擦る手を退けると、学園長が着ている白いシャツにはパックリと切られた跡があり、その下から覗く肌には一本の赤い筋が刻まれていた。

この時点でもう結構疲れたんだが、いつまでこの試合やらされんの俺?


「いつまでやるんです?この試合。そろそろ30分経ちますけど。」


自分で考えてもこればっかりはぶっちゃけ分からないので、直接学園長に聞いてみる。


「ん?……そうだね〜最初は30分だけのつもりだったけど、どうせならどっちかが膝をつくまでにするかい?

君にとってもその方が都合がいいだろう?」

「む……」


俺の問いかけに対する学園長の言葉は、俺にとって面倒な、しかし魅力的な提案となって返ってきた。

正直、この提案は俺個人としてはサッカーの初戦の相手だったガチムチを彷彿とさせる謎耐久度の学園長に膝をつかせるというとても面倒臭いことをせねばならないので是非遠慮願いたいところではあるのだが、一応は俺にもとあるメリットがある話なので「あ、それは嫌です」と無碍に一蹴することも出来ない。


「あと30分か………」


そのメリットとは、旬達に話した通り今は控え室で魔力の回復に勤しんでいるであろうシェリカのことだ。

この半ば俺を無理矢理巻き込んでくれた形のエクストラマッチだが、一応は30分とはいえシェリカに思考のクーリングと雀の涙程度の魔力を回復させる程度には俺にもメリットがあった。

シェリカが魔力切れ等を起こすことはフレイとグレンが全教科のテストで満点を取るくらいあり得ないことだが、シェリカはこのままだと次の試合で魔力切れを起こし倒れることだろう。

俺は先程観客席で「せめて一時間あれば……」等といったが、シェリカの魔力回復速度を考えたら一時間魔力回復に費やせれば次の試合が終わってもギリギリ意識は保てる程度にはなるだろうと判断した為だ。

そんな中に学園長のこの提案である。

正直、シェリカの体調を考えたら受けざるを得ない。決してシェリカを贔屓する訳ではないが、家族として、二人には出来れば対等の条件で戦って貰いたい。


「分かりました。それじゃ、どちらかが膝をつくまでですね?」

「うん♪そうだね。」


今まで手早く戦闘を終わらせることを第一としていたので、逆の時間稼ぎの戦闘は苦手なのだが、シェリカの為ならば一肌でも二肌でも脱ぐのが俺だ。そう格好いいのか悪いのか微妙な思考と共に俺は銀色の鞭を持ち直した。


「それじゃ、行きますよ。」


俺はそう告げると、鞭を構えて学園長の周りを円を描くようにダッシュする。


《空間圧縮・白》【炎空白ホワイトブュースト


学園長は俺の意図が分からなかったのか、一瞬の硬直の後に先程と同じ魔法を発動する。


「なめんなよっ!」

《天音流》【針境】


俺は目標物を目指して走りながら、飛来する無数の炎の玉に向けてベルトに挿していたピックをあるだけ抜き取り投げつける。


「……む」


すると、俺が投げたピックは一本残らず火の玉に直撃し、火の玉は小さな爆発を起こし消え去る。


「何でそのピックは燃えないのかな?」

退魔師マジシャン妖術マジックのタネをわざわざ教えるとでも?」


俺はそう言うと、右手の鞭を一度振るう。


《放置プレイとは酷いですね。

後もう少し回収法を考えて欲しかったです。》

「うん、キモい。」


俺が放った鞭は、舞台の端に分裂し突き刺さっていた錫杖に巻き付いたので、それを力ずくで引っ張り、何やらキモい言葉を発する錫杖をひっこ抜いた。


「ほら、久々に強化のチャンスをくれてやる。」

《デジマ?》

「マジだ。……ちっと熱いかもしれんが。」

《何食わせる気ですか。》


白くて苦くて熱いものだよ。


「そんな訳で行くぞ、幻想ばか!!」

《ねえちょっと待ってください。私に何を食わせる気なのマスター。》


右手に持ち変えた錫杖から何か変な声が聞こえてきたが、幻聴だと信じて俺は学園長に突っ込んだ。


「シッ!!」


俺は学園長に正面から肉迫すると、脳天を狙って錫杖を垂直に振り下ろす。


「よっ」


だが、フェイントも何もない愚直な速度だけの垂直振り下ろしは、学園長の空間にあっさりと止められる。


ー喰らいつくせ幻想ー

暴食グラトリア


だが、今回はそれでいい。

俺が鋭く声を飛ばすと、空間に覆っていた白炎を錫杖の鈴に取り込むように喰らい尽くした。


《熱い!なんてもの食わせるのですかマスター。

危うく舌を火傷するとこでしたり》


あの高温の炎を食って舌を火傷する程度で済むのかとツッコミたいが、それ以前に錫杖状態のこいつに舌があるのかが疑問だ。


「ふざけてないでさっさとものにしろバカ。」

《相変わらず人もとい錫杖扱いが酷いご主人様です。………レベルアップしました。》

「ご苦労さん。」


それからしばし学園長と高速で錫杖と拳を打ちつけあっていると、幻想が白炎を消化し終えたので、一度学園長の右斜め上への切り上げ(ちなみに化身の拳は先程の巨大verでは振りづらいらしく普通サイズに戻っている)をバックステップで躱し、さらに後方に距離をとる。


「逃がすと思うのかい?」

「まさか。」


すると、すかさず学園長が追撃を仕掛けて来たので俺は腰を落とし、錫杖を左腰に構える。


《空間圧縮・無》【かんざし


そして、俺の目の前に到達した学園長は気迫のこもった声と共に再び蒼炎の炎を纏った拳を右上から斜めに殴り付ける。


「オォォッ!!」


その気迫に応えるように俺も一度叫び学園長の懐に潜り込むと、拳と柄の接合部に左腰に構えた刀を叩きつけた。


「なっ!?これは…僕の……!?」


刀身に純白に輝く超高温の炎を纏わせて………


《幻想白炎》

「へぇ。そうか、それの能力かい?」


学園長は一瞬苦虫を噛み潰したような顔をして後ろに跳んだあと、直ぐに得心がいったように呟いた。


「相手の魔法・能力を食べて自分のものにする能力か。」


ああ、そういえば学園で暴食を使ったのは初めてだったかな。

あとは狼になったり人型になったりしてたからそっちのインパクトが強過ぎて元の能力が埋もれてたのか、納得納得。

とりあえずざまあと思った。


『な…なんとイツキ選手!学園長の空間属性白炎を奪ってしまいました……。

なんと理不尽な能力の魔武器でしょう!』

『彼は本当に底が見えないね………』

『これでもまだ彼は全く本気じゃないんだよね……』

『シンゴ神官、イツキ選手が本気じゃないとはどういうことでしょうか?』

『いや……僕は一度彼と妖術の打ち合いで勝負をしたんだけどね、結果は彼の妖術が僕の最大防御結界を破って僕の負けというかなんというか。

彼は魔法だけじゃなくて妖術でも凄まじい才能を持っているんだよ。』


俺は舞台で学園長と対峙しながらシンゴさんの言葉に若干安堵して耳を傾けていた。

シンゴさんとマモリさんは家族の両親達の中で唯一俺の正体を知っているので、少しヒヤヒヤしながら解説を聞いていたのだが、上手く伊邪那美とか神云々は伏せてくれたので内心で胸を撫で下ろしていた。


「……でも、威力はまだ僕の方が強いよ!」

《空間圧縮・白》【空大白燕拳】


そう言って一度大きく離れると、学園長は腰を限界まで捻り、ほぼ俺に背を向けるようにして構える。


「……なぬっ?」


すると、白炎の拳は先程のようにどんどんどんどん巨大化していき、ついには10m程にまで大きくなってしまった。


「すごく……大きいです……」


純白に輝く巨大な拳を見ていたら、ついそんな呟きが口から漏れていた。


「ハァァァァ!!!」


そして学園長は、捻った体を戻しながら白い小爆発を連鎖的に起こし、遠心力と小爆発による推進力をフルに使い威力と速度を大きくブーストした薙払いを繰り出す。


「いやいや?」


さすがにそれは不味いだろ学園長!?

と心の中で絶叫し、舞台上に存在する全ての物を破壊すると迫る拳をしっかりと見据える。


「…もし折れたら(気が向いたらリカが)直してやるからな。」

《あれー?何か副音声が聞こえてきました。》

「オォォォォ!!!」


俺は今日一番の気迫と共に、間近に迫る拳と言うには余りにも巨大な拳と比べると小枝のような細身の錫杖刀を切り上げた。


「ふんぬっ…!」


俺が切り上げた錫杖刀は、白炎を纏い純白の刃と俺の体の間に滑り込み、拮抗して火花を散らす。


「チッ……さすがに重てえか……!!」


今は何とか拮抗しているものの、ブーストにブーストを重ねた学園長の拳は想像以上に重く、錫杖刀はキチキチと嫌な音を立てながら押し込まれていく。


「まだまだァ!!」

「!!」


そして、学園長は更に駄目押しに白炎の爆発を立て続けに起こし炎の拳に力を加えていく。


「ぐぬっ……」


今俺は全力時(封印有り)のときの三割程度の力+右手一本というかなり大きなハンデを背負っているとはいえ、俺の三割の膂力というと人間が出せる力を軽く超えているのだが、学園長はそんなものは関係無いとばかりに拳にどんどん力を加えている。


「ぬ……丁度1時間か?」


燃え上がる拳とちらりと視界の端にある闘技場の時計を見て呟く。

これで目的の1時間の時間稼ぎが終了したので、今すぐにでもこの試合を終わらせることができる。

というか是非終わらせたい。


「オォアァァァァ!!!」


俺は更に気合いを込めると、先程の学園長と同じように風刀の峰部分に小爆発を連鎖的に起こし、さらに武器を支える力も一気に四割まで引き上げて巨大な拳は弾かれた。


「こいつで……終わりだ!!」

《天鞭流》【蛇牙】


そして俺は左手に持っている白銀の鞭を学園長の顔面目がけて放った。

俺が放った鞭は、狩るべき獲物を見つけた蛇の如く学園長の整った顔に向かって一直線に飛んでいく。


「っ!!」


だが、学園長はほとんど反射神経に頼り首を大きく逸らして鼻先に噛み付かんとする銀色の蛇を躱す。


バァァン!!!!


「がっ……!?」


そして鞭が伸びきった瞬間、空間を抉り取り、その先端から広い闘技場を震わせるほどの衝撃音が奔り、学園長は膝から崩れ落ちた。


『き…決まったぁぁぁ!!!

一時間にも及んだエクストラマッチ!

生徒最強と学園最強が全力でぶつかり合った一時間!

最強対最強の試合は!何と学園長を退け、イツキ選手の勝利で幕を閉じました!!』

『『『オ…オォォォォォォ!!!!』』』


ネル実況の放送が入ると、舞台を360度囲む観客席から凄まじい歓声が巻き起こった。


「いたたた……」

「学園長、お疲れさまでした。」

「うん、お疲れ。まさか空間圧縮が破られ、衝撃波による攻撃で、鼓膜を破壊してくるとはね。おかげで三半規管がやられて脳がフラフラだよ」


鞭をボックスに、幻想をしまうと学園長が右耳を押さえてフラフラと覚束ない足取りで立ち上がった。

俺が最後に仕掛けた攻撃は、鞭が伸びきった瞬間に先端が空気を削り取り、発する音を音属性の妖術で増幅し、衝撃波のようにして学園長に放ったのだ。

大きすぎる音や衝撃は鼓膜を破って三半規管にもダメージを与えるからな。その所為で学園長は脳を揺さ振られて崩れ落ちたという寸法だ。

手段は違うが、方法としてはチートお兄様が競技で使ったものとほぼ同じモノだ。


「とりあえずレナさんに治療を頼んだらどうです?

多分鼓膜くらいなら5秒かからずに再生してくれますよ。」

「うん、そうするよ。片耳しか聞こえないのは不便だしね。」


そう言い残すと学園長は出口の方に歩いて行った。


『一ついいかしら?』

「ん?」


俺も観客席に戻ろうと出口に向かうと、不意に伊邪那美が話し掛けてきた。


『さっきの勝負だけど、幻想の【死線】を使えばもっと楽だったんじゃない?』


「……………あ」


いや、すっかり(作者が)忘れてたよ。

正直途中で気付いたけどさ、どうせ時間稼ぎだったしこのままやってしまえと思って死線無しでやりましたってイツキはイツキは言い訳してみる。


『……はぁ、しっかりしなさい。

何で自分の武器の能力を把握してないのよ』


だって幻想とか普段は使わないし。

最近は専らタナトスとルーの二本を使ってるから慣れてしまった。リカに改造を頼まなければ良かったと切に思った。


「あ、イツキさん!」

「イツキ。」


と、伊邪那美に言い訳していると闘技場の出口で待機していたフェルトとシェリカに声をかけられた。


「よ、二人共決勝頑張れよ。」

「「うん!」」


二人の頭を数度優しく撫で、激励の言葉をかけると笑顔で頷いた。

よし、それじゃ俺は二人の勝負を見届けるかね。

そして……決勝の二人の勝負が始まった。中々の押収であったが、


『試合終了~~~!!!

ついに決まりました!!二日にわたる技能大会で全校の女子の頂点に立ったのは…………

シェリカ選手です!!!』


『うおおおおおお!!!!』

「うるさっwww」


そして競技も終わり、司会進行の先輩により勝者が発表されると会場はにわかに沸き立った。


『決勝に相応しい素晴らしい戦いを繰り広げた二人でしたが、軍配はシェリカ選手に上がることとなりました!!』


『得点そのものは200対199と、本当に僅かな差だったね。

二人の健闘に拍手だよ』


やはりと言うべきか、結局フェルトはあの1点を追いきれずに199点で競技の終了を迎え、パーフェクトを達成したシェリカが勝者となった。


「ま、フェルトは運が悪かったってとこかな?」


マリアは堂々と周りの観客に手を振りながら確かな足取りで出口に向かう二人を拍手で見送りながら呟く。

今回の試合は本当に僅かな運の差で結果が分かれたと言っても過言では無いと思う。

フェルトもシェリカもそれ程に拮抗したいい試合を繰り広げたと思うし、あの一発の鞭がシェリカのものを掠めなければまた違う結果になっていただろう。


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