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余興

次の日、魔法競技大会にて

準決勝

『………出ました!準決勝第二試合のスコアは………………

フェルト選手198点!

ミキ選手197点!

よって!準決勝第二試合を制して決勝戦にてシェリカ選手との対戦を決めたのは、フェルト選手です!!』


第一試合と同じ打楽器の音色が響くと、放送席のネル実況が高らかに宣言した。


「圧巻だな………やっぱり器が違うか。」


舞台の二人が拍手に包まれている中、観客席ではイツキが手を叩きながらそう呟いていた。


「でもミキも頑張ったぜ。同情でも何でもなく、あのフェルトを相手にして200近い点を取れたんだ。

誇っていいと思うぜ。」


まずフェルトとミキじゃ年季が違うのだよ。


「……ま、そうだよな。人外一家の妖術使いとあれだけ対抗できたんだ。今日は好きなだけ甘えさせてやるとするよ。」


そう言いながらミキと連れ立って扉へと消えていくミキを見つめるイツキの目は、いつもの鋭い光をたたえたものとは違い柔らかい。


「むう………」


すると、ご機嫌パラメーターが緩やかに下っていたイロハさんのご機嫌指数が、ストップ高にまで一気に急上昇した。

え?何を渡したか。イロハの文化祭準備期間中に試着させたコスプレ衣装と着替え中の写真(当然盗撮)ですけど。

ちなみにイツキ以外の勇者組男子達とグレン、アーサーのものも用意してある。

そんなものをなぜ用意してあるかというと、勿論奴らの弱みをにぎ…奴らの嫁からの要望があったからですが。

最近は日頃の仕返しに、学園長の恥ずかしい写真でも撮ってやろうと色々と画策しているが、あまり結果は芳しくない。

でも画策したはいいけど学園長の写真を撮ったり念写したりしても毎回学園長室とか学食のカフェテリアで甘味(八割方チョコパフェ)を食ってる写真しか撮れないんだよな。

何であれで糖尿病にならないかが不思議だ。


『それでは、決勝戦はこれより30分のインターバルを挟んで行います。それまでご観覧の皆様はしばしの余興をお楽しみください。』


いかにしてあの学園長を出し抜いてくれようかと頭を悩ませていると、不意にそんな放送が流れた。


「ふむ、あと30分か。流石にフェルトの魔力の回復は見込めないかな?」


せめて1時間あれば中級一発分くらいは回復出来たかも知れんが、30分じゃ回復出来たとして雀の涙程度だろう。さっきフェルトの魔力残量を探ったが、もう全快時の半分より少しあるかな?程度しか残っていなかったので、大いに不安を煽られる。


「ねえ、イツキくん」

「ん?どうしました?ヒナさん?」

「さっき放送委員長が余興がどうとかって言ってたけど、イツキくんは何か聞いてる?生徒会のプログラムにはそんな予定は無いんだけど……」

「へ?…そういえば俺も聞いてないな……。第一、生徒会用のプログラムを作ったのは俺ですよ?書き忘れなどはなく、隈なくチェックしました。また学園長の思いつきじゃないですか?」


てかまず確実にそうだろう。

あの快楽主義者が一体今度は何をやらかす気かは知らないが、これまでの俺の経験と直感が告げている。


「ああ、これは間違いなくまたろくでもないことに引きずり込まれるな。」

『それでは、皆様ご刮目ください!

イース魔術学園学園長、フィフス・パスィーヴと

我が学園が誇る最強の生徒イロハ・ツムギの使い魔…イツキ・イーステリアによるエクストラマッチです!!』


そして、そんな諦観気味の思考をちょっと最近では記憶にないくらい大きな溜め息と共に吐き出すと同時に俺の体は光に包まれて視界が暗転した。


「や♪突然悪いね♪」

「本当ですよ……なんで女子の競技なのにいきなり使い魔の俺が学園長と戦わなきゃならないんですか……。」


暗転した視界が俺の意識に戻って来ると、俺は先程までシェリカ達が競技をしていた舞台の上に立っていた。

そして、目の前にニコニコといつも通り感情を読み取らせない笑みを顔に張りつけた姿を認め、溜め息混じりに呟く。


「アハハ、ゴメンゴメン。

VIP席の皆さんがイツキくんの戦いぶりを見てみたいって言うからさ、急遽このエクストラマッチをねじ込んだんだよ。」

「あの方々達ですか……。」


上の放送席がある方を見上げると、ラグナさんをはじめとする貴族達が目を輝かせて舞台の俺を見下ろしていた。


「なんでもあの子たちをあそこまで強く育て成長させた君の実力をこの目で見たいんだって♪それで、この学園で君を除いたら取り敢えず最も強いことになってる僕が戦うことになったわけ♪僕が最強だよ?嬉しいでしょ。」


うわー回避不能ではないか。


「……分かりましたよ。代わりに今度何か奢ってくださいよ?」


と、現実逃避気味に考えたが、こうなった学園長はもう止まらないことを俺はこの学園に来てからというもの嫌というほど味わわされているので、素直に(条件付きではあるが)受ける。


「勿論♪最高級の甘味をご馳走するよ。」

「そんな事言って……またそれを俺に作らせるつもりでしょう?」


結局俺の負担が増えるだけじゃん。

本当にこの人を相手にすると疲れるな……。

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