優勝と記念
「いくぞ。ほらイツキ!」
俺達のボールから後半は始まり、開始のホイッスルがなると同時にマリアがボールを俺に渡してきた。
「はいよ。」
俺はそのボールを受け取ると両足で挟み、回転をかけながら胸くらいの高さまでボールを蹴り上げる。
すると、ボールに冷気が纏わりつき、それを氷の中に閉じ込める。
「くらいな。」
《氷符》【氷河期】
そして俺は氷妖力の塊を0.2%程の力で蹴り飛ばした。
「「「ギャアアアア!!?」」」
俺が蹴り飛ばした氷は音速を越えた速度で地面を深く抉りながら一直線に飛んでいき、軌道の周囲に居た選手達はソニックブームで吹き飛ばされた。
「しまった。0.01%で行くべきだったか…?」
「既に位がおかしい件wwww」
やっぱ通常の0.005のまま打てばよかったな。
それならまだ地面をちょっと抉る程度で済んだのに。
「ん?時計が止まったな。」
「救護班と整備班!仕事だよ!!」
《現返》【この惨状はなかった】
試合の経過時間を知らせる時計が止まると、学園長がフィールド脇で待機していた教師+αに声をかける。
すると、教師陣は待ってましたと言わんばかりにそれぞれ散らばると魔力を練り上げ地面に流し込み、
そして途中で合流したレナがその場から一歩も動かずに吹き飛んだ生徒達全員に回復魔法をかける
「おお……。」
「鮮やかな手際だな。」
「自分で壊しておいて何を言うwwww」
そして俺達は他人事のように瞬く間に修復されていくグラウンドと生徒達を見ていた。
………後で説教かな?
「イツキく~ん?」
「………ゴメンナサイ」
そんなことをしていると、エターナルブリ〇ード(むしろソニックブーム)の被害を免れていたヒナさんにジト目で睨まれた。
「相変わらず会長には頭が上がらないんだな。」
「神外にも勝てない人がいるんですなw」
返す言葉もございません。まあ尻に敷かれるくらいが丁度いいんだよってイツキはイツキは内心で言い訳してみたり。
「よーし♪3Sボールから試合再開するよ~♪」
と、そうこうしている間にフィールドの修繕と怪我人の治療が終わったらしく、学園長がホイッスルを鳴らした。
「……うん、出して0.0001だな。それ以上は下手したら怒られ……やり過ぎてしまう。」
『今さり気なく本音が垣間見えたわね。』
……そんな事ない。
「という訳で、攻撃はお前らで頑張ってください。
俺はハーフラインから出ないからコウガは前に出ろ。」
ぶっちゃけ0.00001でも十分過ぎるし、なによりみんなのお説教は是非とも避けたいので←切実
「お前な……まあいいけど、その代わりDF頼むぞ。」
「はいよ。お前らも確実に1点は取れよ?」
「わかってるってwwwwちっとばかし反動の筋肉痛がキツいけど、体魔法で筋力上げてやるからwwww」
「んじゃ俺は混沌付与だな。」
俺達は簡単に今後の戦法を確認しながら学園長の合図を待った。
「フハハハハハハハwwww!!どけどけどけぇwwww!!!」
試合再開から数分、相手からボールを奪ったリカが目隠しをした状態で、凄まじい速さでボールを蹴り、立ちふさがるDFを弾き飛ばしながらドリブルしていく。
「リカ!パスだ!」
「あいよwwww」
マリアが声を上げると、リカは反対側に走り込んでいるマリアの方に体を向けてパスを出した。
《局部属性強化》【破壊】
そして、マリアはボールを受け取ると右足に灰色の魔力を纏わせその足で軽く触れるようにボールを蹴る。
すると、ボールは明らかに加わった力とは不釣り合いな速度で一直線にゴールに向かって飛んでいく。
「させないわよ!」
【桜吹雪の剛花】
だが、その軌道上にヒナさんが立ち魔力を練り上げ魔法を発動。
凄まじい量の桃色の花弁がマリアが放ったシュートを上に弾いた。
「フハハ!わたすぅが居るのをお忘れなくな。」
【皇帝海鳥Ⅲ】
すると、リカが強化した脚力で上空に跳躍し、ボールの高さまでいくとオーバーヘッドでボールを蹴り落とした。
「おわぁ!?」
「へぶっwwww!!」
シュートは入ったものの、リカは体勢を崩したまま10m以上の高さから真っ逆さまに墜落していた。
スイーツ(笑)
「おぉぉぉぉ……脳が右脳と左脳に割れた……w」
「いやそれ普通だから。」
頭から地面に落ちたリカはしばらく頭を押さえてゴロゴロ転がっていたが、冗談を言えるだけの余裕はあるらしい。
「ほら、バカなことやってないでさっさと立て。」
「ちょっと待って!中身出てないよねこれ?ねぇ?」
「出てない出てない。大体出る程中身詰まってないだろ。」
「ひどい!駄知識ならぎっしり詰まってるしwwww」
「そんな中身はむしろ出してしまえ。ほら、戻るぞバカ。」
「あいwwww」
そんなリカを見かねたイツキが頭を鷲掴みにして引き摺ってきた。
「いだだだだwwwめっちゃ砂で擦り切れてるんですけどwwwてめえ絶対わざとだろwwww」
「何を当たり前のことを。」
うん、相変わらず仲良いねー(棒)
「さて、これで2点リードをとった訳だが。まだ気は抜けんな。」
「そうですね、ヒナさんの身体能力と魔法は脅威的ですし。私達も気をつけないといけませんね。」
確かに油断大敵って言うしな。
『ピ、ピ、ピーーー!!』
そして、それから時間にして10分の試合の後、そんなホイッスルの音が30分の死闘(?)の幕を引いた
「……ふう、負けちゃったか。やっぱりイツキくんにはかなわないわね。」
最終的な試合の結果は、あれから一点を返されて6対5となった。
「いやいや、俺も少し危なかったですよ。まあとりあえずは、お疲れさまです。」
「お疲れさま。」
そう言葉を交わし合い、健闘を讃え合う握手をすると、その瞬間フィールドの外側から雷鳴の如き轟音が聞こえてきた。
「わっ!?」
外にも関わらず響いたいきなりの轟音に、ヒナさんが反射的に耳を塞ぐ。
「試合中は気づかなかったけど……こんなにお客さんがいたのね……。」
「他の競技も終わった頃合いだしそっちに居た観客も来たんでしょう。
それに本当なら今日は予選だけの予定だったんですし、そこで決勝をするなんてことになったらそりゃ観客も集まりますよ。」
既にフィールドを囲んでいた結界は解除されているらしく、絶え間なく響いている観客達の拍手をBGMにそんな会話を交わす。
「いや~二人ともお疲れ♪凄い試合だよ。いやー笑った笑った」
すると、結局一日中サッカーの審判をしていた学園長がニコニコと笑顔で声をかけてきた。
「学園長こそお疲れさまでした。」
形式的に返事をすると、学園長は笑顔で一度頷き、口を開いた。
「うん、ありがとうね。さて、サッカーの試合も全部終わったし、素晴らしい決勝を繰り広げた両チームの写真でも撮らせて貰えるかな?」
「写真ですか?……別にいいですけど……。」
特に断る理由も無いので二人で了承すると、学園長は各々で健闘を讃え合っていた他のメンバーに声をかけて一ヶ所に集めた。
「さて、じゃあお願いね♪リツキクン」
『オッケー任せろ』
そして学園長は隣に浮かんでいるリツキに一眼レフ型の写景機カメラを渡す……って、
「なぜお前が当たり前のようにカメラを受け取る?」
「いや…さっきレナたちを連れてきた時にあの実況の人に捕まって……ぐすん」
苦労したのはわかったがそこから一体何があった。
『ま、まあいいんだよ!!
とりあえず両チームのリーダーは一歩前に出て、後はこれから指示する感じに並んでくれ!!』
半ば自棄になったようすのリツキが目の端に光るものを浮かべながら立ち位置を指示していく。
すると、俺とヒナさんの二人が前に立ち、俺の後ろにイロハ・シェリカ・イリヤ・リカ・マリアが並び、更にその後ろにコウガ・グレン・モブが並ぶという格好になった。
その隣では、ヒナ会長の方も同じようにチームメイト(全員怒られ隊)10人を二列に分けて立たせている。
『うーん、リーダーはお互いにもうちょい近づこうか?』
「え?あ、うん。こんな感じでいい?」
『うん、OKだ。それじゃ3、2、1のタイミングで撮るからな。』
ヒナさんと俺が肩が触れそうな位に近づくと、リツキは一瞬何故かにやりと何かを企んでいるような笑みを浮かべて、カメラを構えた。
『よし、いくぞ~。3…』
そして、リツキはカウントダウンを始めた。仮にも俺の別人格なら多分ボケるはず!
『2……』
「次にお前は1…と言ったら笑顔になってくださいね!、と言う!!」
『1…と言ったら笑顔になってくださいね!…ハッ!?』
流石は俺、こういう時は分かりやすいな。
『何遊んでるのよ』
いや、何となく?マリア達が転ける瞬間を見てみたかったから。
期待通り転けてくれたから俺としてはもう満足だったりする。
『コホン……それじゃあ今度こそ真面目にいきます。
3…2…1……』
【ブラストウインド】
「「「「きゃあ!?」」」
カシャッ!!
リツキが発動した風魔法は、ピンポイントでイロハ達の膝を刈り崩して全員を俺に向かって倒し、俺がみんなを受け止めた瞬間にシャッターが切られた。
余談だが後日出来上がった写真を見て、リツキに新しい能力と専用カメラを与えた。