継承
そして約束の日がやってきた。
俺は学園長の部屋の前に来ていた。ドアをノックし返事が返ってくる。部屋に入ると白髪にサングラスをしている見たことのある顔がいた。
「やぁイロハの使い魔さん。僕はイース魔術学園長フィフス・パスィーヴだよ」
「おれはイロハの主……イツキ・イーステリアです。それで用件ですが……」
「いいよいいよ。話はわかってるから。」
「いやまだなにも言ってないのですが……。」
「そりゃ毎日イロハが夜遅くまで闘技場の許可を申請しに来てるからね。」
「そうですか……では失礼します。」
(熱心なのはいいが……身体を壊すだろ)
そういって部屋を退出した。
「やっぱりあの人から聞いていた通り面白いねもっと観察しよう。」
学園長は甘いものを食べながらそう告げていた。
第2闘技場へ着くとフィールドに無数の藁人形が横たわっていた。イロハは疲弊しなからも全ての型を練習していた。イロハは俺に気づくと笑いながら倒れかける。それを俺が支えた。
「お疲れ……イロハまさか一週間も寝ずに練習してたのか?」
「こうでもしないと。」
「身体を壊すだろ休め。」
「……じゃあ試験を始めようよ。」
イツキは悩んだが苦渋の決断をした。しかし燃えている目を見たイツキは諦めた。
「わかった。……始めよう。」
イロハの目付きが変わる。最初は壱式を見せる。藁人形が出現すると身体強化し刀を軸に突っ切る。
そして…… 漆式までを見終わり、捌式を始める。藁人形が出現した瞬間に一瞬にして人形は斬り刻まれた。
(まさか光河以上とは……しかも型がしっかりとしている。)
「終わりだな……教えることはもうない」
「まって……。」
「師から弟子へ型の伝承は1度きり……天音剣術の教えだ……あまりにも危険なものな剣ゆえ気と才あるものが途絶えたとき世から消え去ることも仕方なしとされた滅びの剣だ。甘い考えでは死ぬぞ?」
「でも間違いだったら」
「だからそれを忘れるなあとは鍛練あるのみ。」
「よか……た」
イロハは安心したのか倒れて寝てしまった。優しく頭を撫でる。
「お疲れ様……イロハ」
イロハを担いで寮まで送っていった。相当疲れていたのか翌朝まで眠ったままだった。