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ー訪問者ー

4:30

薄明かりで霧の立ち込める境内に、1人掃き掃除をしいている影があった。


『……ん、ふぁ……』

「あら、起きたのイツキ。おはよう。」

『おはよう伊邪那美。今日はお前の方が早かったのか。』


眠っていた意識が覚醒すると、自分が今精神だけの状態だということに気付いた。


「ええ、習慣かしらね?早く起きて境内の掃除をしないと、一日の始まりって感じがしないのよ。」

『昨日……てか今日は遅かったんだから、ゆっくり寝てれば良かっただろうに、言ってくれれば私が綺麗にしたのに。」

「それじゃあ意味無いわよ。私の習慣なんだから私がやらなきゃ。だいたい基本的にあなたが体を使ってるんだからたまには私にも使わせなさいよ。」

『了解。それじゃあ俺は籠ってるよ。』


そう言って体の主導権を完全に伊邪那美に渡し、見物することにした。


『……ん?伊邪那美、客みたいだぞ。」


暇潰しに知覚を広げて、辺りの様子を窺うと、何者かが二人鳥居をくぐって来たのを感じた。


「え?まだ朝の5時よ?ようやくシンゴとマモリが起きだす時間なのに……。」

『どうするんだ?』

「うーん、普通に参拝なら良いけど、シンゴとマモリにお祓いの依頼とかだったら困ったわね……無下に追い返す訳にもいかないし………お茶でも出して待って貰おうかしら。」


自分が祀られてる神社の参拝客を自分で応対する神って何かシュールだな。


「なぁ、本当にここから強い力なんか感じたのかよ?」

「俺を疑ってんのかよ!?確かに感じたんだって!!」

「んなこと言ってもお前がそう言うときは全部外れだったじゃねえか。全く……何で俺まで付き合わされてんだよ………。」


暫くすると、階段の方からそんな男二人の会話が聞こえてきた。


「これで違ったら里に帰るからな。」

「わあってるよ。」

「おはようございます。本日は何の御用でございましょう?」


階段を上り、境内に上がった二人の来訪者に伊邪那美が笑顔で問い掛ける。俺は内側から二人の姿を観察する。二人組の来訪者は、赤い着物を着た赤髪で、無精髭を生やした野武士面の男と、黒い着物を着た俺くらいの年齢に見える黒髪の中性的な感じの顔の男だった。


「うおおお!超美人じゃねえか!!……お嬢さ〜ん!私とお茶でも如何でしょうか?」


すると、野武士面の方の男が伊邪那美に跪いて口説き始めた。


「はぁ……落ち着け馬鹿。完全に引いてるぞ。」


伊邪那美が苦笑いで応対していると、黒髪の方が赤髪の方を嗜めた。


『……で、何しに来たんだこいつら?』

『さあ?』

『今のところ敵意は無いけど気配を探ったら人間って訳じゃ無さそうだ。用心だけはしておこう。』

『そうね、いつでも代われるようにしておいて。』


伊邪那美が戦っても良いんじゃないかと思うのは俺だけだろうか?


「それで、本日は何の御用件でしょうか?お祓いのご依頼でしたら少々お待ち頂くことになってしまいますが……。」


このままだとキリがないので、伊邪那美は二人の男にそう問い掛ける。


「ああ、すいませんこのバカが。ほら、さっさと用件を済ませろバカ。」

「おめぇよ、もう少し俺に敬意ってもんをだな……。」

「失礼、さっさと用件を済ませやがってくださいカス。」

「………もういいや。それでですね、マドモアゼル。昨日の朝に、ここで派手にドンパチやってたやつらについて聞きたいんすよ」


目から光るものを流しながらくる眉や野武士にそっくりな男がそう聞いてくる。


「はぁ……理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

「理由って言うほど立派なもんじゃないんすけどね……手合わせしてもらいたいんすよ。」


うわぁ……ここであの鮫の立てやがったフラグ回収かよ……じゃあ暴れてるドラゴンってこいつらか?

黒い方とかもろにブラッキーだし。


『ご指名よ。』

『めんどくさ……とりあえずシンゴさんかコウガ、マリヤあたりでも適当にぶつけてお引き取り願おう。』

『……確かに二日連続でお説教は嫌よね。される側もする側も。』


あ、俺がやり過ぎて説教食らうのは決定事項なんだな。


『それだけの前科があるもの。』

「かしこまりました、只今連れて参りますので、少々お待ち下さい。」

「あなたの為なら何年でも待ちますとも(キリッ」

「……気持ち悪」


うん、凄く分かるよブラッキー君、俺の体だしな。これ。さてどいつを叩き起こしてやらせようか。

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