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東洋の奇術師

「おや、面白そうなことをやってるね。」

「あ、シンゴさん。」


組み手を続けていると、朝の勤めを終えてきたらしいシンゴさんが本殿から出てきた。ちなみに今はシェリカとミキが組み手をしている。


「へぇ、ミキにも体術を教えたのかい?」

「ええ、遠距離タイプは懐に入られると弱いですからね。うちの体術が一番ですからね。」

「なるほど、実戦を考えた戦闘訓練か。うん……そうだ。イツキくん。僕と一戦どうだい?」

『なんでそんな酒に誘うみたいなノリで戦闘に誘うのよ……』

「いいですね。」

『そしてあんたは乗るのね……。』


良いじゃないか、東洋魔術師の達人と戦えるんだぞ?滅多にないことだ。間近でその実力を見られるのだから。


『この戦闘狂が……良いこと?午後から約束があるんだからやりすぎちゃダメよ?』

「わかってるよ、ヒナさんの期待は裏切れないからな。」


全く、俺が戦う=やりすぎるみたいな方程式でも出来てるのかね?昨日ヒナさんと話していたとき、生徒会の皆で回ろうと話をしていた。


『よく言うわ、前に勇者コウガ君と戦ったときにやり過ぎてみんなに怒られたくせに。』

「ぐ……」


それを言われると弱いな………気をつけよう。

「それじゃあ、よろしくね。」

「よろしくお願いします。」


境内の中央でシンゴさんと向かいあって頭を下げ合う。


『どう戦うの?シンゴはジパングの中でも一の魔術師よ?』

「俺が負けるとでも?俺は天音流継承者だぞ。」

『ま、頑張りなさいな。私はあなたの中からゆっくり見てることにするわ。それと貴方の実力は知らないから見ているとするわ。』


そう言って伊邪那美は喋らなくなった。どうやら観戦に集中する心積もりらしい。

呪術の提唱破棄を設定して……札を数百万枚空間から取り出してっと。なんか随分俺の中に馴染んだなお前


「それでは、始め!!」


伊邪那美と話している間に立会人を引き受けてくれたマモリさんが合図を出した。


【雷閃】

《火呪符》【火炎の乱閃】


俺がその合図と共に札を一枚取り出して唱え火を出すと、シンゴさんも同じようにして雷を放ってきた。


「【斬渦ざんか】!!」

《岩呪符》【岩墓・大壁】


技が相殺しあうと、シンゴさんがすかさず高速で回転する水の渦を生み出したので、俺は地面に札を叩きつけて地面から岩の壁を作り出して防御する。


《炎呪符》【紅焔こうほう 蛍火ほたるび


俺は大量の札を辺りにばらまき、それらに妖力を込めると、札は小さな紅い炎の珠になりシンゴさんに向かって飛んでいく。


「わっ!」

八方天蓋陣符はっぷてんがいじんふ


シンゴさんは八枚の札をばらまくと、八枚の札は全方向に散らばり結界を張る。


【爆】


蛍火がシンゴさんを覆うと同時、俺が手を叩くと蛍火が一気に膨張して爆発した。


「………」


もうもうと立ち上る土煙を油断無く睨み付けながら札を右手に構える。


迅雷じんらい


すると、先程の雷閃よりも速く、一回り太い雷が俺に向かって飛んできた。


《土呪符》【鉄心凋落】


俺は直ぐに離れたところの地面に札を投げ、札が落ちた地面から雷の発生源に向けて鋼鉄の柱が伸びた

すると、俺に向かってきた雷は方向を変えて鉄柱に吸い込まれた。


「いや~!強いねイツキくん!」


すると、土煙の中から傷一つ無いシンゴさんが楽しげに笑いながら歩み出てきた。


「まさか外の人と対等に戦えるなんて思わなかったよ。嬉しいなぁ。血が滾ってくるよ。」

「……そうですか。」


俺は正直嬉しくない。決める勢いで今の妖術を撃ったんで。

シンゴさんは本気の目になり、大量の札を持ちながら笑っていた。


「だから僕は本気で行くことにするよ!おいで。」

【四神】【黄龍】


シンゴさんがそう叫ぶと、彼の懐から5枚の札が飛び出して光を放った。


「あなた!?それはいくらなんでも!!」


それを見たマモリさんが焦ったように声を上げるが、それを黙らせるかのように札はまばゆい光を放つ。

……四神と黄龍って超メジャーな神獣じゃないか。


【【【【【グオオオオオ!!!】】】】】


光の中から凄まじい咆哮が辺りの空気を震わせる。


【よう坊主シンゴ。俺達全員を呼び出すたぁ土地神にでも喧嘩を売るのかい?】


いいえ、神外に喧嘩を売る気ですその人。と、内心で突っ込んでしまったが今シンゴさんを坊主呼ばわりした黄金の鱗を持つ龍に視線を移す。


【ちょっと待ちなさいよ、土地神どころの騒ぎじゃ無いじゃない!なんてもんに喧嘩売ってんのよあんた!!】


俺を見た朱雀が俺の正体に気づいたらしく焦りまくる。

まあそれはそうだろう、四神と黄龍は神獣としてはランクが低く、5体揃っても土地神になんとか勝てる程度の実力だ。ちなみに土地神の神格は属性神よりは高いもののせいぜい中級。

この時点で図らずとも伊邪那美との融合により神格が天元突破して一気に理の外側に出てしまった俺とはもう勝負にすらならない。

俺だけ小指でデコピン縛りでこいつらと戦っても2秒で全滅させられる自信がある。


「まあそれは全部の封印を解除した状態での話だし、何よりもめんどくさいのでお前ら、来い。」


俺は3枚の札を取り出して地面に投げる


【出番だぜ!!】

【あら、イツキじゃない。しばらく見ないうちに随分とまあえげつない存在になったわねぇ。】

【何の用だ?い…化け物】


ご存知、あの時以来の登場となる狼妖怪三匹だ。

あと金閣、銀閣、白銀です。白銀そこは嘘でもいいからマスターって言って欲しかった…!!


「頭数が足りないなぁ……。」


いや、3匹で十分神獣5体くらい余裕で全滅させられるんだけどね?どうせならキッチリ5対5で戦わせてみたいじゃないですか。


「というわけでルーチェ、ジョット、頼んだ」

【まあ、私もですか?】

【む、まあ他の神獣とも戦ってみたかったし丁度いいか。】


俺が呼び出したのは我が家の神獣二人、神狐のルーチェと獅子のジョットだ。


「驚いたな……そのご夫婦も君の使い魔だなんて。」

「あはは、まあ色々ありまして。それじゃあ一人一体、相手してくれ。作戦はそうだな……「ガンガンいこうぜ」で」

【【【【【了解!!】】】】】



俺の言葉に人化していた二人も元の狐と獅子の姿に戻り、慌てふためく5体の神獣達に向かって行った。


「凄いね、あんなに強力な式神に使い魔を使役するなんて。」

「使役してはいませんよ。協力してもらってるだけです」


それにあいつらは(白銀は特に)戦闘好きだし、頼まなくてもたまに手出ししてくるからな


「君は優し【ギャアアアア!!】いね」

「そんなこ【ちょっ!マジスイマセンでしたァァァ!!】とありませんよ」


「「………」」


何故か気まずい雰囲気が流れる

あいつらは一体何をやってるんだ。

【終わったぜ~】

【何だ、神獣って言うから期待してたら拍子抜けだぜ】


そんなこんなでうちの5体の神獣達が戻って来たらしい

……ルーチェ以外全員一様に口元に血……ケチャップを付けて


「あの、皆さん?殺っちゃってないよね?」


【フフフ、そんなことしてませんよ。

皆さんお札の中に逃げ帰りましたから】

【チッ!食えなかった!】


どうやら食べられる前に全員札の中に逃げ込んだらしい。

うん、賢明な判断だと思う。


「参ったな……こんなにあっさりやられちゃうとは……」

「何か……スイマセン……。」


流石にオーバーキルが過ぎました。さすがにルーチェとジョットまではやりすぎたな。


「しょうがない、ここからは純粋に力比べといこう。僕は攻撃より護りが得意でね。これから僕が張る最強の結界を君が三回攻撃して破れたら君の勝ち、破れなかったら僕の勝ちでどうだい?」

「いいですよ。やりましょう。」


シンゴさんの提案に首肯し、距離を大きく空ける。


「じゃあいくよ?」

《結界呪符》【守護符陣しゅごふじん神絶断界しんぜつだんかい・滅】


シンゴさんは、ぱっと見でもわかるくらい濃密に妖力を練り上げ、おそらく凄まじい強度を誇るであろう結界を作り上げた。


「それじゃあ行きます。」


俺はシンゴさんに断りを入れ、数百万数枚の札を取り出してばら蒔き、印を組んでいく。


――オン・キリクシュチリビキリ・タダノウウン・サラバシャトロダシャヤ・サタンバヤサタンバヤ・ソハタソハタソワカ――クラソワカ・オンシュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ――オン・キリクシュチリビキリ・タダノウウン・サラバシャトロダシャヤ・サタンバヤサタンバヤ・ソハタソハタソワカ――オンシュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ――オン・キリクシュチリビキリ・タダノウウン・サラバシャトロダシャヤ・サタンバヤサタンバヤ・ソハタソハタソワカ――オンシュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ――オン・キリクシュチリビキリ・タダノウウン・サラバシャトロダシャヤ・サタンバヤサタンバヤ・ソハタソハタソワカ――オンシュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ―マッコイズ―オン・キリクシュチリビキリ・タダノウウン・サラバシャトロダシャヤ・サタンバヤサタンバヤ・ソハタソハタソワカ――オンシュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ――オン・キリクシュチリビキリ・タダノウウン・サラバシャトロダシャヤ・サタンバヤサタンバヤ・ソハタソハタソワカ――オンシュチリ・キャラロハ・ウンケンソワカ――オン・バクリュウ・キリクシュチリビキリ・タダノウウン・サラバシャトロダシャヤ・サタンバヤサタンバヤ・ソハタソハタソワカ――オンシュチリ・キャラロハ・ウンケンハソウソワカ――


《術式八〇》


そしてその札を滞空させるように、呪文を唱えながら目の前に並べる。


【建〇雷神】


術を発動した瞬間、シンゴさんの結界に凄まじい雷が襲い掛かった。


「まさかの天然さん。強すぎワロタwwwそれよりも提唱がぁ。」


外野がなにやら言っているが、おそらくまだ結界は健在なので次の札を用意する。


「うーん、まだ足りないか。」


やはりと言うべきか、結界には罅一つ入っていなかった。


「さ、次おいでよ」


《術式回葉》


俺は先程の倍の量の札を取り出し、周りに滞空させる。


建御神代げんごしんだい雷面やめん


天候を操作して、シンゴさんに突風と雷の雨が降り注いだ。


「ちょっとヤバかったかな……」


だが、相変わらず結界は健在。マジかよ……かなり強めに撃ったんだけどな………やっぱ身体能力のついでに能力とかにも封印をかけたのは失敗だったか?これでも転成した最初の頃の能力くらいはあるはずなんだが……


「これで最後か……行きますよ!」


取り敢えず全力でやるしかないか


《術式回葉最上巻》


『待ちなさい!!それは流石にマズいわ!!』


神世代しんせだい別天神ことあまつかみ


俺が叫ぶと、巨大な雷の龍がシンゴさんの結界に襲い掛かった。


ドオォォォン!!


「……やべっ!もしかしてやり過ぎた?」

『もしかしなくてもやり過ぎよバカ!!』


境内に空いたクレーターを見て思わず呟いたら、伊邪那美に思い切り中で怒鳴られた。頭が超痛いです


『後であんた説教ね』

「は、はい!」


自分に説教されるって経験はなかなかできないよなぁ……


『それは貴重な経験ね。なんなら毎日やって差し上げましょうか?』

「いえ結構です。」


即座にお断りさせていただきましたとも


「ケホッ……負けたか~、流石はミキの師匠だね。」


伊邪那美に体の中で怒鳴られた所為で痛む頭を押さえていると、クレーターの中心から元気そうなシンゴさんの声が聞こえてきた。


「すみません、すぐに境内を直しますね。」



一度手を合わせてこの戦闘でボロボロになってしまった地面に手を当てる。


「……なんでもできるね、君」


すると、青白い閃光が走るとボロボロだった境内が戦闘が行われる前の綺麗な状態に戻った。

確かに伊邪那美と融合してから大抵のことは出来るようになったな、その辺も一応封印してあるけど。


「「……さて」」


俺とシンゴさんは一度顔を見合わせて頷き合うと、


「「ちょっと出掛けて「「逃がしませんよ?」」……はい」」


脱走を試みたがあっさりミキ親子に捕まってしまった。


「だが甘い!」

【妖転】

【無効結界】


ミキに掴まれたまま俺だけを飛ばすように転移を発動しようとするが、何も起こらなかった。


『逃がす訳ないじゃない。ミキちゃん達に説教でもされて反省しなさい。あ、私からのお説教も別口であるからね。』


「は、図ったな伊邪那美!!」

「「さて、お説教の時間ですよ?」」


結局この後二人とも昼まで説教というオプション付きで正座を申し付けられました。

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