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亡者

「っと」

「うーん、ここに来るのも久しぶりね。ミキちゃんが生まれてからだから約16年ぶりかしら?」


黄泉の国に着くと、岩肌が目に飛び込んできた。そこは真っ白な世界で建物が並んでいた。


「16年って……何でそんなにここに来なかったんだ?」


懐かしむように辺りを見渡しながら歩く伊邪那美の隣を歩きながら問いかける。


「いやね、あんまりここに居ると気が滅入っちゃうから、たまにイースとか地球にこの体で出たりしてたのよ。それで前に出た時に丁度あの神社でミキちゃんが生まれてね、あんまりにミキちゃんが可愛くてついあの神社に長居しちゃったのよ。それで、何かもう黄泉に帰りたく無くなっちゃってね。それで気づいたらもう16年、ミキちゃんにも良い人が出来て良かったわ。ね、ミキちゃんとヤることヤったんでしょ?可愛く鳴いたでしょうね~」

「ぶっ!?」


な、何を言ってるんだこの年齢詐欺は。


「あら?初々しい反応。もしかしてまだ?」

「……まだだよ、悪いか?」

「……ヘタレ」

「ぐっ!!?」


何でさっきからいちいち俺の心を鋭いナイフで突き刺してくるんだこいつは。


「じゃあまだ他の子ともしてないの?」

「してないよ!」


まだ俺は童貞だし、イロハ達も処女だよ。


「処女と童貞は同列には出来ないわよ?」

「やかましいわ!さっきから何なんだお前!」


ついツッコミで声を荒らげてしまった。


「はぁ…お前ら下世話してないでくるぞ!」

「…ん?」


すると、周りにいくつかの禍々しい気配が生まれた。


「あ~あ、あんなに大声を出すから醜女達に見つかったじゃない。」

「誰のせいだよ……!!」

「私は戦闘に力を使えないから醜女は任せたわよ。」


そう言って伊邪那美は岩壁に背を預けてしまった。


「……しょうがないか。」

《守符陣 》【四方絶陣 ・断空】」

《仙法・森の境地》【千樹断防樹林】


伊邪那美の周りに結界を張り、背中からルーとタナトスを抜き放った。

コウガは仙術を発動し、イザナミを樹林を生やせ、攻撃を防いだ。

二刀を構えて周りを警戒していると、曲がり角から何かが出てきた。


【あラオ客様ダわ、おモてなシシなくチャ】

【本当だワ、お客様、コちらノ料理はイかが?】

【オ も て ナ シ?おモてなシ】

【このハゲー違うだろ違うだろーー!】

【アパーホテル】


何ということでしょう、曲がり角から煌びやかな着物を着た、体が半分腐敗している女達が出てきたではありませんか。


「……てか伊邪那美?最後何か変だった気がしたんだが?」


何か流行語が聞こえた気がする。


「気のせいよ、ほらさっさと片付けてしまわないと、青いゼリー体みたいにどんどん湧いてくるわよ。」

「……わかったよ。」



イマイチ釈然としないながらもタナトスを首の高さまで持ち上げ、体を捻る。


《天音神楽》【絶風たちかぜ断崖】

《天音流剣術・風の太刀》【断風松花】


俺は遠心力を使い、そのままタナトスを凪ぎ払った。


【オ…もテ………】


すると、剣線の延長線上にいた女達は全て首と胴体が切り離され、動きを停止した。


「えげつない技ね。」

「……文句なら技を考えた神楽の舞を伝えた初代だ。全く、何でこんな物騒な技を考えたんだか。」


「ほら、進みましょ。夜が明けるまでに戻らないとミキちゃん達に心配をかけちゃうわよ。」

「はいはい。」

「了解……」


俺はスタスタと歩いていく自分勝手な巫女装束に小走りで着いて行くのだった。


最初の醜女の虐殺から数十分、俺は今黄泉を走り回っている


【オモテナシィィィィ!!!】

【オトコ!】

【【【【イィィィィィィィィィィィィ!!!】】】】


「ショッ〇ーかよ!!!」


「全く、わざわざツッコミを入れずに倒しちゃえば良いのに……そこ右ね。」


隣を並走している伊邪那美が呆れながら道案内してくるが考えてほしい、半分腐った(物理的な意味で)女達が鯛のお造りやら何やら料理を持ちながら奇声をあげながら亜音速で走って来るのだ、恐怖だろ?

しかもシンは度々立ち止まり修行で覚えた仙術を奴等に当てている。


「そんなの私もじゃない、そこ左。」

「お前は慣れてるからまだいいだろ!俺なんか初見だぞ!?」


「俺もなんだがな……まぁ退屈はしない!」

「いいこと?人間は慣れる生き物よ。」


なるほど、とにかく慣れろと


「って慣れたくない。」

《絶風ぇ》

《天雷剣術零式》【八重田・無上】


俺は急停止して振り返り、醜女達に向かってタナトスを凪ぎ払う。コウガは天音流変則示現式カチアゲ一閃で醜女を真っ二つにする。


「ふぅ。ダメだ、アレに追い掛けられるとかSAN値が保たねえ……」

「だらしないわね、まだ私が居る最奥まで半分程度よ?しかもここからはある意味本番よ。」

「本番?」

「そ、この黄泉ってところには醜女以外にも厄介なのが居るのよっと、危ないわね。」


俺と伊邪那美が話しながら走っていると、間にオレンジ色の閃光が奔った。


「今のは……超電磁砲か?」

「そうよ、ここには他の世界で罪を犯して裁かれた転生者達の魂の残骸が流れ着く事があるの。自我こそ無いものの、アニメとかの能力や身体的なスペックは変わらないから襲われるとちょっと厄介ね。」


そう言って伊邪那美が顔を前に向けると、バチバチと帯電しながらコインをこちらに向けて構えているイケメンがいた。


「あいつなんかは、神に顔をイケメンにしてもらってから転生先の世界で神の洗脳を使って周りの女の子を次々と犯してたっていう元ピザデブの転成者ね。

有力で善良な草成者てんせいしゃに殺されてからここに来たみたいよ。」

「……へえ、なぁ伊邪那美、ここであいつを消したらあいつはどうなるんだ?」

「完全に消えるわ。」

「そうか。」


伊邪那美の言葉に短く返し、クズに視線を向ける。


「れ、れれれレール〇ン…」ウェぇぇいい


すると、クズはレ〇ルガンを俺に向けて放った


「……下衆が、あまり調子に乗るなよ。」


一直線に飛んでくるレー〇ガンを左手で横に弾き飛ばす。


「あの程度、能力を使わなくてもできるだろ」


更に俺は義手で指と指の間に一枚のコインを挟み、そのまま指の力だけでコインを弾く。


「ぎゃっ!」


すると、音速を超えたコインが、クズの胸の真ん中にコインの大きさの風穴が空いて嵐の能力である分解で消滅した。


「……どんな指の力してるのよ」

「これくらいはまだ普通だろ。」

「な、ななななななな…… 」【迦楼羅カルラ


すると、クズは俺を焼こうと青い炎を撒き散らす。


「……温い、なんだこのシャワーにも劣る温い炎は?炎ってのはな……こういうものを言うんだよクズが!!」


俺はごく普通の嵐呪符を発動し、青い炎をその炎で焼き尽くす。


「ギャアアアア!!」


そしてその炎はクズにも燃え移り、クズは断末魔の叫びを上げた


「……うるせえな、気持ち悪い声を上げてんじゃねえよ。」

「や、やめウゴッ!!」

「声を上げんなっつったよな?」


自我は無くとも命乞いくらいはできるらしく、喋ろうとしたクズの口に靴をたたき込み、壁にそのまま打ち付けた。


「止めなさい、今の目的はそいつを痛め付けることじゃないでしょ?」

「……チッ、消えろクズが」


後ろから伊邪那美が諫めて来たので、投影させた刀に赤黒い雷を纏わせてクズの喉に突き立てる

それだけでクズはボロボロと風化した岩のように崩れ落ちていった。


「……スマン、伊邪那美。余計な時間を取らせた。」


怒りにまかせて無駄な時間を過ごしてしまったことを謝る。


「別に良いわよ、でもここはあんな奴らしか居ないんだから次からはいちいち目くじら立てないこと。

良いわね?」


「……ぐぅ了解した。」

「よろしい、じゃあ進みましょう。」


そう言って走りだした伊邪那美とコウガに俺はタナトスを鞘に収めてから着いて行った。


「もうすぐ着くわよ。」

「ん?ああ、了解。」


どうやら伊邪那美の本体のところに着いたらしい。

さて、俺にとっても伊邪那美にとってもここからが本番だな。

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