ジパング
「さて!無事にジパングに着いたことですし、観光でもしながら私の家に向かいませんか?」
馬車と荷物を空間に飲み込んで身軽にすると、ミキがそう声を上げた。
「そうだな、あんまり早く行っても迷惑だろうしそうしようかwww」
「そうですね、ジパングの文化に興味がありますし。まずはみんなで散策してみましょう。」
ミキの言葉にリカが首肯し、まずはジパングの街を歩く運びになった。コウガは武者修行しに別行動していった。
「わぁ……ねえユウ!お団子食べてこよう!!」
「あ!引っ張るなよレナ!」
「おい!……もう、すまん。あの二人をほっとく訳にもいかないから俺も行くわ。」
「保護者は大変だな……。ほら、ジパングでの通貨は王国とは違うからこれ持っていけ。あとコレも」
ジパングの王都の市街地に入った途端、ユウヤが腹ペコレナに団子屋に引き摺られて行き、マリアとフェルトもそれを追おうとしたのでフェルトにジパングでの通貨に換金した金を入れた財布と三枚の紙を渡す。
「通貨は日本円と殆ど同じだから戸惑うことは無いだろ。時間になったら式神が自動的にその場所へと転移出来るようになってる。」
マリアにざっと最低限の情報を教えると、フェルトは申し訳なさそうな顔をした。
「すみませんこのお金は今度おかえしします。」
「いや、返されても困るから使いきってくれ。
あの胃袋が居れば多分使いきれるはずだから。」
「レナが聞いたら怒りますよ。それではお言葉に甘えさせて貰います。」
「ああ、さっさと行け。でないとあの店から団子が消えるぞ。」
俺の視線の先には既に10枚以上が積み上げられた団子の皿と、追加で団子を注文しているブラックホールの姿が。
「おいレナ!もう少しペース抑えろ!!!」
マリアとフェルトはその光景を見ると、店まで走って行った。
ユウヤはレナにペース配分を考えろと突っ込んでいた。
「……あいつらも苦労人だよなぁ。」
アホに今度あいつらに何か幸運を与えるように掛け合っておこう。
俺でもできるけど、俺がやるとアホに怒られるんだよなぁ。死者の転生はともかく蘇生も極力するなって言われてるし。
曰く輪廻を乱すと上に軽く怒られるんだとか。どうやら最高神でも権力には勝てないらしい。
てか軽く怒られるだけなのか。
「ボクはあれです!」
「アリスはあれ!」
「はいはい、順番な。」
「セリスは師匠が食べたい。」
ただいま、俺はアリスたちが様々な食べ物の屋台に目を輝かせてねだってくるので、その要望に応えている。セリスは無駄な事を言っていたのでビンタをした。でもセリスは喜んでいた。
「あら?イツキくん?」
屋台でアリスにねだられたリンゴ飴を購入していると、聞き覚えのある声が背中越しに聞こえてきた。
「やっぱりイツキくんじゃない!こんな所で会うなんて奇遇ね、観光?」
「お久しぶりですヒナさん。それでどうしたんです?」
振り返ると、我が学園の生徒会長様が立っていた。
「私は観光よ、副会長のチヅルがジパングの出身だっていうから皆で来たの。イツキくんも見たところ観光みたいね。」
「そうだったんですか。それにしても……その浴衣、とてもお似合いですよ。」
今のヒナさんの服装は、髪と同じ桃色の生地に薄い桃色の桜吹雪が描かれている浴衣を黄色い帯で留めている。
長い髪はアップで纏め、いつも学園で見ている姿とは違い何とも大人っぽい色香を醸し出している。
「そう?ありがと……ところでその娘達は?ユナちゃんは知ってるけど、肩車してる娘とそこに倒れている娘は見たことないわね。学園の生徒名簿でも見たことないし。」
ヒナさんは俺にくっついている幼女について聞いてきた。
流石に2000人以上いる学園の生徒を一人残らず暗記しているだけあって鋭いな。
「この獣人の子はあの夫婦の娘です。それとそこにいるのは私の弟子だ。挨拶は?」
「こんにちは!」
「はい、こんにちは。」
イツキは雑貨屋でジョット夫妻を指差しながらそう答えた。
「それでラルド先輩はどうしてます?」
「それがね。エンデューロ支部の皆とは上手くやれてないのよ。」
ヒナさんによるとベルト支部長から定期的にラルドの話を聞いていたらしい。上司の話を聞かず独断先行し敵を排除している。まあそれはいいらしい。功績よりも被害額が多く頭を抱えているらしい。最近のベルト支部長はため息が堪えないらしい。
「まぁ……最初はそんなかもしれませんね。」
「もうお仕舞い!」
それからコリーとチヅル先輩と出会いそして別れた。