勝者
「……乙女の魔法を吸収するなんて変態。」
俺が全ての球を吸収すると、初めて俺の前で言葉を発した黒ローブはなんとも失礼な言い掛かりを付けてきた。
「ちょっと待て、それは酷い言い掛かりだ。大体お前が女なんて知らなかった。」
「……変態さんにはお仕置きが必要。」
《闇魔法》【拡散する漆黒の大砲】
そう言って黒ローブは先程とは比べ物にならない量の黒い球を浮遊させてきた。
「お仕置きって、レベル越えてないか?」
「……五月蝿い。」
黒ローブがそう呟くと大量の光線が俺に迫ってきた。
「だ~!もう!しょうがない。」
俺は急いで投影を開始し、目当ての物を思い浮かべる。
俺はすぐに投影し、迫りくる魔法に銀色の銃身を向けて引き金を引いた。
「……む」
すると、黒いレーザーは球ごと魔力の奔流に消し飛ばされる。
俺が取り出したのは、言わずもがなチートスペック劣等生の武装をオプションライフルにて改造したものだ。その名を【銀銃・天】
今のは黒ローブの魔法を術式拡散で、ただの魔力に分解しただけだが、黒ローブに目に見えて動揺が走る。
「隙有りだ。」
《天音流体術》【蹴豹】
一瞬で黒ローブの懐に入って、上段に妖力を纏った回し蹴りを放つ。
「くっ…!」
頭を狙った蹴りは黒ローブが咄嗟に足と顔の間に入れた腕によってガードされ、黒ローブは吹っ飛んでいく。
「……手応えが思ったよりなかったな、後ろに飛んだ上に腕に重力系の魔法を展開して、斥力を利用して衝撃を緩和したってとこか?
咄嗟にしてはいい判断だ、プラス100点。」
「……!!」
俺の言葉を聞いて驚いたように体を硬直させる黒ローブ。
「だが、戦闘に置いて相手に動揺を悟らせるのは感心しないな。マイナス50点。」
そう言って黒ローブの後ろに回り、右ストレートを放つ。
「チッ…!」
黒ローブはこの右ストレートを左手に小さく斥力を発生させて受け止めようと構える。
「フェイントに簡単に引っ掛かるな。マイナス30点。」
俺は黒ローブに掴まれる前に右手を止め、ボディーに膝蹴りを叩き込む。
「…かはっ……」
だが黒ローブは後ろに飛んで衝撃をなんとか逃がそうとする。
【隠者の視覚】
飛ばされる瞬間黒ローブは声を張り上げて俺に触れた。
その瞬間俺の視界は真っ暗な闇に包まれた
「む、視界を封じられたか……っと」
そう呟いたら後ろからごく僅かに殺気を感じたので後ろ回し蹴りを中段に放つ。
「チッ!」
「微かにでも殺気を漏らすようじゃまだまだだな。マイナス10点。」
《……今殺気なんか感じました?》
《座禅でも組んでれば感じられたんじゃない?
僕は少し感じたけどね。》
「んん?」
アナウンスを聞いていると、突如黒ローブの気配が全く感じられなくなった。
「へぇ、見事な隠行だ。これで五感はあてにならなくなったな。プラス30点。」
俺でも察知出来なくなるとは中々鍛えてるな。
それにしても手練かと思ったら未熟だったり、未熟だと思ったら手練だったり不思議な奴だな。
まるで戦い方を知っていて実戦を知らないって感じだ。
《雪呪符》【降り始める粉雪】
俺は呪符を破り、妖力の粉雪を降らせ、探知を開始する。
てかぶっちゃけブラックアウトを解除すれば済むし、気配だってちょっと集中すればどんだけ上手く隠されてても探れる。
それじゃせっかくの強い奴との戦闘が面白くなくなるからやらない。
そうしないとハザマには勝てないだろう。
「そこ!」
俺は雪との接触反応があったところに投影したピックを投げる。
すると短い呼吸の後にキンッ、とピックを弾いた音がした。
「今のは躱すべきだったな。相手の視界を封じてる時に物音を立てて相手にわざわざ居場所を教えるのは愚策。マイナス40点。
…さて、持ち点が0になっちまったな。」
中々楽しめたし、この大会に出た甲斐もあったかな?
「持ち点0につき、これでゲームオーバーだ。じゃあな。」
《呪法》【夜王ノ誘イ】
俺は闘技場一帯を闇で覆う。
すると、体を強張らせていた黒ローブが倒れた気配がした
「……ふぅ、流石に呪法はやり過ぎたかな?」
黒ローブが倒れたからか俺の視界を封じていた暗闇が解除されたので、いきなりの日の光の眩しさに目を細めて嘆息し、そう漏らす
俺が放った呪法【夜王ノ誘イ】という魔法で。
効果は、かかった対象を使用者が解除するまで永遠に深い眠りに落とす呪いである
勿論今回は直ぐに解除するぞ?
別に殺したいわけじゃないし、事情聴取もしないとだから。
《しょ、勝者!銀閃&草姫ペア!第101回イース最強決定戦の優勝者となりました。王皇も後一歩というところでしたが最強も勝てないということでしょうか。》
優勝は決まり、表彰台に上り賞金やトロフィーを受け取った。しかし賞金は興味ないのだ。