3度目
「ふむ。あっちは終わったか。さすがにルーチェと組ませるのはやりすぎだったか?」
「そう…だな!」
「ふーむ、しかしルーチェの能力が、巻き込まれ補正ある二人に有効だったのは予想外だったな。」
「このっ!いい、加減、当りやがれ!!」
《天雷剣術三式・改》【電光雷轟・天地渾沌】
「ヤダね、それ当たったらローブ消える。顔バレしたくない。」
コウガが雷と混沌による左右上下の斬撃弾幕を二本の刀で躱しながら話す。
さっきからちょいちょいコウガのセリフが途切れたのはコレが原因だ。
「ちゃっかり混沌の属性付加までするとは。全部きっちり躱さないとな。」
まあこの程度避けるのなんて寝ながらでも出来るくらい簡単だが。
『なんで当たらへんのぉや!』
「そらどおした。」
タナトスとルーで、コウガがギリギリ躱せる速度で攻撃して挑発する。
「くっ!このっ…!腹立つなコイツ!!」
効果はあったらしく、コウガは激おこぷんぷん丸に。
「今どんな気持ちかね?攻撃を楽々避けられて、しかもおちょくられてるってどんな気持ち?」
「こんの…いい加減に!」
《天雷剣術四式》【混沌雷斬】
痺れを切らしてコウガは至近距離で灰色の光線を放ってくる。
「おっと…。」
《守護の符》【アブソリュート・プロテクト】
俺は守護の呪力の防御膜を発動し、薄く光の膜を纏い、灰色の光線はその膜に触れた瞬間弾け飛ぶ。
「何で消滅しねえんだよ……。」
「それは、防御に特化した守護の最大防御魔法だからな。そう簡単に破られたら困る。」
辟易しながら言うコウガに俺はそう言って、大きく後ろに跳んで距離をとる。
「だからチートの相手は嫌になるんだよ……なぁ!」
《混沌魔法》
【混沌砲】
【破滅津波】
コウガがここぞとばかりに灰色の光線と波動を大量に放ってくる。
「見境無しとはなぁ」
《影呪符》【影喰の蛇】
俺はコウガが放った魔法を、影の蛇が出現し、それを喰らった。
「マジかよ……」
そして俺が放った攻撃はコウガが放った魔法を全て相殺してしまった。
「もっと面白いもんを見せてやる。」
《嵐呪符》【紅蓮の竜巻】
俺は紅蓮の巨大な竜巻を起こし、コウガに近づいていく。魔法で応戦するが消えていかない。
「ちょっ!これは!?」
「チートに常識が通じるとでも?」
「くっそ!」
《混沌魔法》【混沌の滅鎧】
コウガは灰色の魔力の鎧を纏い、竜巻に巻き込まれる
分解作用を消滅作用がある鎧で相殺する気か。
「ほいっと…。」パチン
指を一度鳴らすと紅蓮の竜巻は跡形もなく四散する。
「……ぁぁああああ!!」
ズドン!!
すると、遥か上空からコウガが落ちてきた。消滅作用を持った灰色の鎧のおかげで地面が消滅し、落下の衝撃を和らげる。
「おかえり、上空千メートルの旅はどうだった?」
「死ぬかと思ったわ!!」
なんだ、思いの外元気じゃないか。ちょっとやりすぎたかもとか思って損したよ。
「ほれ、休んでる暇は無いぞ。」
「ちょっ!!」
問答無用で俺は、慌てているコウガに斬り掛かる。
《土魔法》【大地の鉄壁】
《雷魔法》【放電する盾】
《サクヤ》【完全防御】
するとコウガは地面を隆起させ、俺とコウガの間に巨大な岩壁を作り出し、雷の盾でさらに補強する。サクヤの剣を突き刺して防御フィールドを展開して万全の体制を整えた。
「はい残念、タナトス。」
俺は右手に持った黒剣の銘を呼ぶ。すると、黒剣の刀身に赤黒い雷のようなものが這い回る。
【死斬】
俺はその剣を岩壁に向かって振るう。
「……は?」
『なんやて!』
すると岩壁はバターのように容易く切り裂かれ、その切り口からボロボロと風化して砂になってしまった。
「ルー」
更に左手に持つ水晶のような剣の銘を呼ぶ。すると、俺の呼び掛けに応じるかのように剣が刀身から微かに冷気を放出する。
【凍斬】
その剣を旬に向けて下から斬り上げる。
「ヤバッ!!」
コウガは咄嗟に右に跳んで回避しようとする。
「ぐあぁぁぁ!!」
だが回避しきれずに、サクヤの防御膜を貫通し、左腕を肩口から斬り飛ばされる。
「「コウガ!!」」
遠くからユウヤとマリアが大声を上げた。
「コウガ!腕がぁ!」
「てめぇでやっといて、あのセリフを言うのかぁ!」
左腕が無くなったコウガが意外そうな声を出す。それもそうだろう、斬り飛ばされた腕と肩口の断面が凍り付いていたのだから。
「しかし、痛みは感じない。……その剣の能力か?」
訝しげにそう聞いてくるコウガ。
「わざわざ手の内を晒す馬鹿がどこにいる……って言いたいとこだが。この能力の実験だ……げふんげふん、この能力を使わせたことの報酬に教えてやろう。」
「今実験台って言い掛けたよな?」
「気のせいだろ。流石に友人を実験台に使うほど人でなしじゃねえよ。」
【「「「「えっ?」」」」】
「えっ?」
何故か舞台上にいる全員に同じ反応をされた。解せぬ。
「コホン…で、この剣の能力だったな。
先ずさっきも言ったが銘は死呪剣タナトス、凍呪剣ルー。この二本はそれぞれ死竜の鱗の欠片と、フラスの羽根が入ってる。」
「勝手に武器を改造するなよ。」
「いいだろ別に、やってみたかったんだから。それにいちいち伏せ字にするのがめんどいんだよ。」
「どっちかというと後半の方が本音だろ」
「ソンナコトナイヨ。…でだ。能力を説明すると、タナトスの方は斬り付けた対象に死を与える能力で、ルーの方は斬り付けた対象を凍らせる能力だ。
「死って土とかにも有効なのか?」
「ああ、形あるものいずれ壊れるだろ?それを強制的に引き起こしてるんだ。ちなみに生物だったら毛を一本切るだけで殺せるぞ。」
「チート過ぎるだろ……」
まあ武器を使わなくてもそれ位はできるんだけど、剣を使うのはどっちかというと能力を使い辛くする為だな。それこそタナトスの能力を使えば見ただけで簡単に生き物の命を奪えるけど余程のことが無い限りそれはしたくない。
【完全回復】
《現返》【その回復はできん】
サクヤの能力で回復をしようとしたが、現返により嘘となり発動はならなかった。
「回復はさせねぇよ。まあ流石に試合で使うにはちょっとアレだからしまうけど。」
そう言って二本の剣を消す。
「で、この腕はどうするんだよ。この年で隻腕とか嫌だぞ。」
「年齢に関係なく隻腕は嫌だと思うが……まあ、この試合が終わったら私が直してやる。綺麗に斬ってあるから跡も残らんだろ。」
まあ俺で無理だったらリカに頼むか。リカだったらマイナスでもお兄様の能力でもいくらでも治しようはあるし。お兄様のは痛みのフィードバックがキツいけど仕方ないだろう。
「そんなことはまぁ、どうでもいい。さっさと終わらせよう。もうこの章入ってから長いからな。」
「だからメタな発言をだな……。」
そう会話を交わしながら二人で魔力を練りはじめる。
《天音剣術奥義》【旭日昇天・逆】
《混沌魔法》【混沌滅閃】
そして俺は赤黒い稲妻を纏った刀から左右に放たれた斬撃を、コウガは先程のものより更に魔力を多く練り込んだ灰色の光線を放った
そして二本の光線はぶつかりあい、衝撃波を撒き散らす。
「I'm Winner」
まあ当然の如く俺が勝ちましたとも。
コウガは俺の斬撃を受けて吹き飛び、壁に激突して気を失っている。
マリアがコウガとその左腕(冷凍)を回収して医務室に消えて行ったのを見送り、俺もリカと控え室に戻った。
「で、帰らないの?ルーチェ。」
控え室に戻っても未だに帰ろうとしないルーチェにそう問い掛ける。
家にアリスがいるから早く帰った方がいいと思うんだがな……
【アリスなら今ジョットが相手をしてますから大丈夫ですよ。ちょっと面白そうだったので残ることにしました。】
そういや結婚してたな……俺の頭の上に小さな狐の姿で乗っているルーチェがそう言う。
さすがに巨大な狐の姿では控え室には入れないので小さくなってもらったらこんな姿になって、俺の頭の上に乗ってきたのだ。面白そうだからって……まあ別に個人の自由だし言ったりはしないが。
『次は、王皇対銀閃、草姫による決勝戦です』
「お、遂にきましたか。」
ついに決勝戦を告げるアナウンスが入った
「イツキだけでやるんだな~?」
【頑張ってくださいね。】
「了解です。」
さて、偽物君に本物の最強というものを見せてあげよう。