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守護者となった退魔師と勇者の異世界譚  作者: 黒猫
最強決定戦篇
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偽物とグレン

《次は、グレン選手と王皇の試合です。》


しばらくモブ+αの試合を見ているとネル先輩のアナウンスが俺の耳を揺さぶった。


「出たな。」

「そうだな……。」


どんな奴が俺の名前を語ってんだろうな?

俺は二人の人間が入場してきた闘技場に目を移した。


《さてさて!遂にこの試合がやってまいりました!

今年の春、突然現れた謎の人物!

名前、年齢、容姿、戦闘スタイル全てが謎!

わかっているのは強いということだけ!

先日に起こった帝国との戦争でたった数人の仲間と共に一国の兵士達を退けるという偉業を成した最強の皇!王皇の試合だぁぁぁぁ!!》


『『『ウオォォォォ!!』』』


「うおっ!?」


ネル実況とともに巻き起こった歓声に若干ビビってしまった。


「で、どう思う?」


舞台の上に上がったグレンと俺達と同じような黒いローブを羽織り、フードで頭をすっぽり覆っている人物を見ながらリカに問い掛ける。


「そうだな……あれだと男性か女性かも分からん。実際に戦闘を見てみないことには何とも言えんが、わずかに妖力を感じる。」


確かに体型なんかは痩せ形だろうということ以外解らないし、身長も男にしては低く女にしては高いから判断に困るな。


「でも弱くはないと思う。まぁ……理由は曖昧なんだが……一挙一動に少なくない自信を感じるんだが……この期待の歓声の渦の中で緊張を外に出さないなんてなかなかできることでもない。」

「緊張しないとは言わないんだな」

「そうだな。緊張というものは一種の反射行動だ。抑えられこそすれ完璧に押し込めることはおそらく不可能だ。」


「イツキでもか?」

「それはもう。これでも一応元人間だからな。」


二人で話している間に審判の話が終わったのか舞台上の二人は距離をとり構えたので話を打ち切り試合に目を向けた。


「オラァ!!」


グレンが爆脚を使い縦横無尽に高速で動き回り、黒ローブを攪乱しながら斬り掛かる


「いっ!?」


だが黒ローブは背後から高速で振るわれた天槌を振り返りもせずに体を右にずらして躱し、地面に突き刺さった天槌を右足で抑える


「ぐぬぬぬ……!」


相当な力で押さえられているらしく、グレンが引き抜こうとするがビクともしない。


《影符》【シャドウウィップ】


そして黒ローブは影を鞭のように自在に操る影魔法いや影の呪符『陰の闇鞭』を発動する。


「ヤバッ!」

《属性…変換岩》【大地の岩壁】


グレンは咄嗟に岩の壁を出現させたが破られ、腕を顔の前で十字に組み、腕の前で小さな爆発を起こし、大きく後ろに吹き飛ぶ。


「ゲホッ!……いってぇ…」


顔面に影の鞭を受ける前にどうにか距離をとり躱したグレンが咳き込みながら、回避の為に一度消した天槌を手元に召喚する。


《ここまであっという間の戦闘でしたがいかがでしょう?学園長?》

《そうだね~、流石は皇と呼ばれるだけあって無駄の無い戦闘だよ。それとグレン君も今の回避は良かったよ。肉を切らせてでも骨は守る、良い判断だ。

教職者としては、この戦闘センスを少しでも勉強に回して欲しいところだけどね♪》


俺も今回は学園長に激しく同意する。

こういう時は頭が回るのに何故それが勉強になると発揮出来ないのかね?


《影の呪符》【シャドウダイブ】


黒ローブはグレンが構えるのを見て影の呪符『影潜』を発動、自分の影に沈み込む。決してポケモソの技ではない。


「それ反則だろ!?」


グレンはそう言って辺りを見渡す。

シャドウダイブは、影の中を移動する妖術で、一見便利そうに見えるが、わりと簡単に攻略できる。

まず影が繋がっているところにしか移動出来ないので影を見れば出てくる大体の位置は予想出来るのだ。しかしグレンは目を瞑り意識を集中させるが、相手は待ってくれない。


「うわっと!」


グレンが踏んでいた影から出てきた黒ローブは黒い魔力を纏わせた手刀を振るうが。間一髪のところで気づいたグレンが横に転がることで回避したため、手刀は空を切る。


「やられてばっかだと思うなよ!」

《属性変換…水》【ウォーターレイ・ザ・ウォーク】


転がった体勢のままグレンが、黒ローブに向けて突き出した右手から水の極太の熱線が放たれる。

何時の間に魔法がスムーズに撃てるようになったんだな。

まだ魔力が収束しきれていないが十分及第点だろう。


技能吸収テイクオーバー


躱すかに思われた黒ローブは、右手を熱線に向けたと思うと手先に黒い渦を作り出した。


ジュッ


そして熱線と渦が接触した瞬間、熱線は渦に飲み込まれ消え失せた。


「うへぇ……ここまで手も足も出ねえと、イツキと戦ってるような気分になってくるぜ……やんなってくるなぁ。」


黒ローブの手元から黒い渦が消えるのを見届け、そう声を漏らす。

失礼な、俺はもう少し手加減してるだろう。


《大地の呪符》【加重抵抗グラビエーラグルーヴ


黒ローブはそんなグレンなどお構い無しに加重魔法をかける。


「お、重っ!」


一気に体が重くなり動きが鈍くなるグレン。


(おおっと!王皇が初めて直接攻撃に入りました!

グレン選手は重力に囚われて動きがかなり重くなっております!)


《闇の呪符》【呪力剣ダークソード


黒ローブは漆黒の剣を出してグレンに向けてダッシュする。


「ちょっ!ヤバッ!!」


グレンは、慌てていつもより強い火力で爆脚を使い、空中に飛び上がる。

そしてグレンの首があったところを黒ローブの振るう黒い剣が通過した。


「…おっ?軽くなった?」


グラビティが領域干渉型の魔法だと知らなかったのか、グレンは空中でようやく重力から解放されたことに気づく。


「なら、こっちから行くぞ!」

《属性変換…炎》

〈燃えろ我が魂〉【火炎車】


グレンは天槌を増殖させ、左右の手に持ち、爆発による推進力を追加して空中で手槌を振り下ろす。

すると、地面という支えがないので、天槌がグレンごとかなりの回転数で回りはじめる。

そして天槌は炎を纏い、さながら炎の車輪のごとく黒ローブに向かい飛んでいく。

決して幸村の技では(ry


「なっ!?」


グレンの火炎車は黒ローブに直撃する瞬間、黒ローブの右手に天槌を掴まれることによって容易く止められてしまった。

グレンは空中で黒ローブに天槌を振り下ろした状態でピタリと静止している。


《なんと!王皇がグレン選手の会心の一撃を片腕で止めてしまったぁ!!》

《すごい体勢だね♪》


「ガハッ!」


黒ローブは天槌ごとグレンを地面に叩きつけ、巨大なクレーターを作った。


「ゲホッ!ゴホッ!」


肺をやられたのかグレンは何度も咳き込む。


「チッ、流石に俺一人じゃあキツいか。……来てくれ!クウリ!」


グレンがそう叫ぶと、空中に巨大な魔法陣が出現し、その中から漆黒の鱗と甲殻を持つ巨大なドラゴンが出現した。


【グルアァァァァァァァァァァァァ!!!!!】


闘技場に巨竜の咆哮が響く。


《で、デカい!グレン選手が召喚したのは巨大なドラゴンです!咆哮だけで闘技場内の結界がビリビリと震えています!!》

《遂に出したね、グレン君の使い魔、風竜王クウリ》


【どうした、主?】

「よ、ちょっと手伝ってくれ。

今あいつと戦ってるんだよ。」


【了解した。】


そう短く会話を躱して一人と一匹は戦闘体勢に入る

黒ローブは相変わらず悠然とたたずんでいる。


【グアァァァ!!】


クウリは上空に飛び上がり、空から巨大な風の玉を数発落とす。風の玉は地面に着弾し、砂煙を巻き上げ、黒ローブの視界を封じる。


【グルッ!】


そしてクウリは黒ローブに木の幹ほどの太さがありそうな尻尾を叩きつける。


《闇の呪符》【闇砲ダークネスレイ


【何っ!?】


だが黒ローブはその尻尾を躱し、黒い光線を放つ。


「ふっ!!」


その隙をついてグレンは背後から黒ローブに斬り掛かる。


《炎の呪符》【ヒートウィップロワ】

《風の呪符》【フェザークロック】


だが黒ローブは二つの呪符を配合し発動。炎の鞭でグレンの天槌を持つ手を叩き、落とさせ、風の呪符でグレンを縛り上げる。


【主!!】


クウリの焦ったような声が響く。そして黒ローブはグレンの頭を手で掴む。


《鳴り響くは魂の叫び、彼の者に刻まれし痛みの記憶を呼び覚まさん》

〈呪法〉【記憶の苦痛(ペイン・メモリーズ)】」


「…ぐ、ぐあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


黒ローブが唱えた瞬間グレンは体を痙攣させ、断末魔の叫びを上げた。


【主!!!」


クウリが俺達と同じ年齢位の緑髪赤目の少女へと姿を変えてグレンの元へ駆け寄る。

何気にクウリの人化は初めて見たな。

黒ローブはそんな二人を一瞥して背をむけ、出口の方へ歩きだした。


「貴様…主に何をしたァ!!」


竜眼クウリアイで黒ローブを睨み付け、グレンを抱き締めながら炎を放つクウリ。


【テイクオーバー】


しかし黒ローブは全く意に介さず炎を吸収する。


「……【ペイン・メモリーズ】は対象が今まで生きてきた中で受けた痛みを全て再現する意識干渉呪法、直接的なダメージは無いから安心するといい。」


黒ローブが初めて長い文をしゃべった。声からして女性だろうか?

クウリはグレンをぎゅっと抱き締めながら黒ローブを睨み付ける。


「……信用して良いんだな?」

「……好きにすると良い。」


黒ローブはそう言い残し出口の方へ歩いていった


「ハッ!?グレン選手戦闘不能!王皇の勝ち!!」


置いてきぼりを食らって呆然としていた審判がようやく正気に戻り、宣言した。


〈クウリ…〉


俺は未だに闘技場でグレンを抱き締めているクウリに念話を送る。


<その声は…妖神様!?>

<いきなりだがこれから送る。ペンダントを身に付けろ。主人からの魔力供給をストップさせ、代わりに大気中の魔力を吸収できるようにしてある。〉


そう言ってクウリの手元に一つのペンダントを転移させる。


<…なぜこれを私に?>

<グレンが目を覚ますまで付いていてやってくれ。

そのペンダントはお前にやる。>

<……ありがとうございます。>


さて、俺も次勝てば決勝か、気合い入れてくか。


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