第6話:目的
宴の会場から抜け出したメイリはうっかり賊と正面から遭遇してしまい、抵抗する間もなく囚われて…
賊の男はメイリを肩に担ぎ上げたまま、ひたすらに回廊を走る。その足取りはまるで昔からこの城に住んでいたかのように迷いがない。
メイリは男から逃れようと、男が腰にはいていた剣を抜こうと手を伸ばしなんとか柄に手をかけたがその上から男が手を押さえ、その場で止まった。
「何をするつもりだ?メイリ=ヴィ=テュリエス」
「私が誰かわかっているのなら、離しなさい無礼者!」
拳で肩を叩いてみるが、男は痛みを感じていないのかメイリを担いだまま回廊の一角にあった部屋に入った。
「俺の目的はお前をこの国から出すことだ、離すわけないだろう」
その部屋は、使っていないのか埃臭かったがどうやら客室のようだった。その部屋に備え付けられている椅子にメイリを座らせ、懐から紐を取り出し両手を拘束する。
メイリは縄の擦れる痛みに顔をしかめながら言った。
「私を国から出すって、何言ってるの?この国以外に国は存在しないわ!」
滅多に外に出ることが出来ないメイリは昔から外の世界や国を見てみたいと思っていた。しかしその話をするたびに、教師や親には笑われるのだ。
『メイリ、世界にはこの国しかないんだよ』と…。
「…やはり何も知らないんだな」
男はやはりと言った顔で話始める。
この世界にはテュリエス帝国の他に6つの国がありこの国は北の極地に位置していてそして、その内の一国にだけ、世界の守護者である“鍵”が生まれる。
そして現在のその“鍵”が、メイリだというのだ。
“鍵”は世界に厄災がもたらされた時、“牢”へ厄災を封じ再び世界を平和へ導かねばならない。その存在が貴重な為か鍵が生まれ滞在している内はその国は繁栄するのだという。
だから“鍵”の存在を欲する国は多い。
「ちょ、ちょっと待って、信じられないことばかりだけど百歩譲って私が鍵だとしたら、じゃあ貴方は何処か別の国から鍵を連れ帰れと命令されたわけ?」
「まあ、それもあるが俺はお前と対になる“牢”だからな」
「牢って、人間なの?」
「鍵とその時によって物は変わる。箱や籠であったり、動物や人間の時もある。鍵は人間、それも女でしかあり得ないが…」
それではまるで法則性がない、信じられないと反論してみるがそれが真実だという一言で一蹴されてしまう。
「大体、この世界に7つも国が存在しているなんて聞いたこともないわ!父様もテュリアも先生もみんな世界に国はこのテュリエス帝国だけだと言われたし、読んだ本全てにこの国以外の国名や文化は出てこなかった!」
「では、嘘を教えられたのだ。お前がこの国から出ることのない様に…」
随分久しぶりの更新になってしまいました。
少しずつ賊の目的やメイリの正体が明らかになっていく予定です。