第4話:退出
出入り口付近には二人の兵士が立っていた。おそらく賊が入ったことから外部からの侵入や諸侯が外に出て被害に遭わないための配慮だろう。
どちらにしも、メイリが外に出るのは諸侯が外に出るよりも困難であることは明らかだった。
どうやって広間を出ようかと思案していると、いきなり肩に手を掛けられた。メイリは思わず声を上げそうになったが、どうにか口を手で押さえ声を押し殺した。
「だ、誰…?」
ゆっくりと後ろを向くとそこには微笑みながら仁王立ちするティルアが立っていた。
「供も連れずに何処へ行かれるのですか?」
にっこりと微笑んでいるところから本気で怒っているのだということがわかる。
「賊が入ったと聞いたの、だから様子を見に行こうと思って…」
「何をおっしゃってるんですか!危険ですからおやめ下さい」
ティルアは懇願めいた顔でメイリに言った。しかしメイリは外へ様子を見に行く方が優先事項としてティルアの言うことを聞く気はなかった。
「大丈夫、ここにいる誰かの命を狙うなら真っ先にこの広間へ来るはず、けれどそんな襲撃はないから、あと考えられるのは宝物庫くらい…だからむざむざ殺したりはしないと思うわ」
「ですが…」
「心配性ね、そんなに心配なら貴女もついてくる?外に出るにはティルアがいた方が出やすいのも確かだし」
侍女が傍にいれば、とりあえずは退出を認めてもらえるはずだ。あとは兵を付けられるはずだからそれをどう撒くかが問題だった。
「仕方ありませんね、ついて行きますから危険だと思ったらすぐに逃げますよ」
「わかってる」
ティルアが入り口の兵士に話を伝えに行く。その間メイリは誰にもばれないように柱の影に隠れながら、ティルアが戻ってくるのを待った。
しばらくすると、話をつけたティルアが戻ってきた。
「兵がつく条件で、退出を認めて頂けましたわ一度部屋に戻るという話になっていますので合わせて下さいましね」
「ありがとう、行きましょう」
兵を二人引き連れ、二人はメイリの自室まで戻った。やはり賊は宝物庫の方へ入ったらしく、外がやけに騒がしかった。
「…何でも賊が入ったとか」
メイリが一人の兵士に声を掛けると、兵士は頷きそれ以上は答えなかった。情報を与える気はないらしい。
「広間にそやつが入る可能性はないのですね?」
「それは大丈夫です、兵を増やしておりますので」
「そう、なら安心ですね」
つまり広間以外の場所にはあまり兵を配置していないことになる。それなら動きやすいだろうと考えた。
その後もいくつか質問してみるが、兵は適当な応答で返し特に情報を得ることは出来なかった。