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序話:世界の牢
世界は広い。
しかし、彼女はその広さを知らない。
彼女は自分のいる国から一歩も出たことがなかった。
出たことがないと言うより、出ることが出来なかった。
世界にはこの国しかないのだと、この国がすべてなのだと思っていた。
だが、そんな彼女に真実を伝える者がやってくる。
彼女の世界の外から…。
目を開けると、外は真っ白だった。
雪で覆われた窓の外を見て、寒さが肌へと伝わってくる。
「……雪」
ぼそっと呟いた少女、メイリは豪奢な寝台から起きあがり、着替えを始める。
普段なら侍女が着替えを手伝ってくれるが、今日は誰もいない。
不思議に思いながらも、着替えを済ませ食堂へと向かう為に廊下に出た。
廊下に出ると、兵士が部屋の前に立ち警備にあたっていた。
「おはようございます」
メイリは兵士と挨拶を交わして、退出を告げた。
廊下には大きな天窓から太陽の光が注ぎ、とても明るかった。
柱に施された細工に光が反射してキラキラと輝いている。
そんないつもの光景も今日は特別に見える。
今日は洗礼の儀を受ける日だから。