1.勇者の居る魔王城
「フハハハハ! 来たか! 勇者よ!」
「魔王! 貴様の悪行もこれまでだ!」
玉座に座るのは、漆黒のローブを着た魔王。
その姿は禍々しくも、揺らぎ、迸るその魔力は魔王の名に恥じぬ強大さを持って威圧する。
対して、広間に入ってきたのは、青の鎧を身に纏いし勇者。
加護を受けた武具は光り輝き、兜の奥から覗く鋭い意思が魔王を射抜かんばかりだ。
勇者の横に並んだ戦士は巨大な盾を構え油断なく魔王を睨み、勇者の後ろに続いた魔法使いはその杖を掲げ、魔王にも劣らない魔力を編み続ける。
「ここまで来たその力に免じて、我が配下となることを許そう」
「戯言を!」
一触即発。
高まった力は広間に溢れ、これからの激闘を予感させる。しかし……
ドカン!
突如として広間の天井に穴が開き、爆音とともに何者かが舞い降りる。
「伏兵か?」
戦士が素早く反応し、その盾を何者かに向ける。
「魔王! 往生際が悪いぞ!」
勇者は何者かを横目に捉えるだけに止め、あくまでも姿勢は魔王へと相対する。
「ぬ?」
しかし魔王から漏れる声は、困惑。
それは現れた何者かは魔王の策ではないという証左。
薄れる土埃から現れたのは、黒色の装備に身を固めた四人の何者か。
四人は無言のまま散開し、二人は魔王へ、二人は勇者達へ肉薄する。
勇者も、魔王ですら反応が出来ない刹那の間に、戦士は打ち倒され、魔法使いは昏倒する。
魔王に向かった一人が、銃を撃ち魔王をけん制する。魔王が広げた魔力によって、銃弾を反らすものの、もう一人はその隙に距離を詰める。
一突き。
距離を詰めた一人が人の背丈ほどの棒で魔王を突く。
穂先も何もないただの棒に見えるそれが魔王の防御を貫き、その体に突き刺さる。
玉座から立ち上がることすら出来なかった魔王は、ひび割れた声を上げてその機能を停止した。
魔王を打倒した二人と、勇者の仲間を無力化した二人は合流し、今度は勇者と相対する。
「勇者だな。未開惑星保護条約に基づき、貴様を逮捕する」
暴れる勇者が取り押さえされるまでの時間は、一分足らずだった。