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3.ミルトのその後

そんな中、大国ガルシアより建国記念式典の招待状が届いた。

夫婦同伴で参加が通例だが、臨月の后妃に馬車で3日もかかる移動は危険だと兄に進言し、カリーナは式典への参加権利を手に入れた。

今のところ、ミルトと同一人物である可能性が高い人物のひとりが、ガルシア王国の若き国王だったからだ。

しかし、長く想っていた人物に会えるかもしれないというのに、カリーナは、浮き足立つこともなく実に淡々とガルシア行きの準備をしていた。


ガルシア国王は、去年自国の貴族の令嬢と結婚していた。


しかし、これも想定していたことだ。

国によって多少の差はあれど、王族の婚期は早い。

なるべく早く、多くの跡継ぎを作ることを義務付けられるからだ。


ミルトはカレンより一歳年上だと言っていた。

それが本当だとすれば今20歳。

ちょうど合致するのだ。


今から10年前、政情が乱れていたジスペインと時を同じくして、ガルシア王国では要人の暗殺が連続していた。

王国には、遅くに授かった正妃の息子である皇太子以外に側室の産んだ王子が5人いたが、次々と変死を遂げたという。

その魔の手は側室にまで及んだが、首謀者はなかなか特定できず、王宮は荒れた。


数年後、正妃と正妃の父であった大臣が企てた事実が明らかとなり、正妃と大臣は処刑され、幼い皇太子が残された。

ところが、その皇太子も流行り病で呆気なく命を落とす。

跡継ぎが居なくなったガルシア王国は再び混乱に陥った。

国王はすでに高齢である。

新しく王妃を迎えても王子を授かる保証はない。


そこに現れたのが現ガルシア国王だ。

暗殺されたと見せ掛けて姿を消していたという、唯一生き残った第3王子が戻ってきたのである。

彼に付き添っていたのは魔道騎士。

王子の母親の幼なじみだった。

カリーナはため息をついた。


なんてドラマチックなのだろう。


カリーナは想像する。

ガルシアの王宮に颯爽と足を踏み入れたミルトの姿を。

彼の美貌と気品は、周囲のものを圧倒したに違いない。

カレンといるときのミルトは無邪気で甘えっ子だったが、バートンにかなり高度な教育を受けていたことを知っている。

その気になれば高貴な振る舞いをなんなくこなして見せただろう。

出来ればずっと側にいて、国王になるまでたくさん経験したであろう苦労を分け合いたかった。

しかし、もう叶わぬこと。

過去には戻れないのだ。

駆け抜けた山野。

一緒に摘んだマリカの実。

手を繋いで見上げた満天の星。

星に誓った永遠の言葉も。


この度、王妃になった令嬢は、国王が一目惚れをしたのだという。

身分は決して高くないが、知的で穏やかな人柄で、国王は生涯王妃しか娶らずと公言したという。


カリーナは一晩だけ泣いた。

そして、翌日には決めていた。

正体を明かさずミルトに会おう。

彼の幸せをこの目で確かめて この思い出を昇華させるのだと。

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