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18.アルフレッドの正体

ガルシア王国が用意してくれた貴賓室で、カリーナとマルコは向かいあって食事を取っていた。


「さすがは大国ですね、海に面していない土地でこのように新鮮な魚をいただけるとは」


本日のメインディッシュは白身魚のムニエルだ。


「氷の魔石を利用した氷室の馬車で運搬するそうですわ」


マルコは嬉しそうに微笑んだ。


「さすがに良くご存知ですね」


また喜ばせてしまった。

カリーナは内心しまったと思いながらも顔に出さず、もくもくと食事を続けた。


「少しお聞きしても?」


マルコが切り出したので、カリーナは口にしていた果実酒のグラスを置いた。


「何か?」

「バイオレット副団長とは以前からのお知り合いですか?」


カリーナは否定した。

出会いのエピソードは、表立って話せることではないので、滞在の間のエスコート役として国王から引き合わされたのが初めてだと説明した。


「バイオレット殿と貴女の縁談を国王が後押ししているとなると、私には不利な状況だなぁ。カリーナ姫は本当のところ、どう思っていらっしゃるのですか?」


カリーナは小首を傾げた。

アルフレッドからはアプローチを受けているが、そういえば、『縁談』だとか『結婚』という単語は出てこない。


「といっても、そう言ったお話はないので」

「は?」

「婚姻に関しての申し出はない、ということです」


マルコは、一瞬静止した。


「バイオレット殿は、まるで恋人のように振る舞っているように見えますが…そうなのですか?」


カリーナは曖昧に頷いた。

マルコは暫し思案すると、側にいた給仕に席を外すように指示した。

カリーナは、怪訝そうにマルコを見た。


「カリーナ姫は、政略的な婚姻には余り興味がないし、ジスペイン国王からも強制はされていないと思われますが、合ってますか?」


カリーナは肯定した。

何でそんな事を知っているのだろう。恐るべき情報力だ。


「それに、王族としての暮らしを窮屈だと考えてらっしゃる。違いますか?」

「…まあ、そうですわね。マルコ殿は占い師か何かですの?」


マルコは苦笑した。

これも一つの社交術で、人間観察と情報から分析するのだと言う。

カリーナは感心して、マルコをまじまじと見つめた。


「私は貧乏貴族からの成り上がりですからね、それなりに苦労はしているんですよ。必死で身につけた能力です」


マルコは笑顔を引っ込めて、暫しの躊躇いの後、カリーナに告げた。


「でしたら、やはりバイオレット殿はおすすめしません。彼が王族であるのはご存知ですか?」

「ええ。直系ではないが、血縁者であると本人からお聞きしました」


マルコは頷いた後、おもむろに話し出した。


「では、ガルシア王国の王宮で起こった連続暗殺事件の事もご存知ですか?」


カリーナはいきなり出た不穏な話題に内心驚きながらも頷いた。


「大まかには。先代王の正妃とその父である大臣が跡継ぎと側室の暗殺を企てた事件ですね」

「唯一残ったのが現在のカール国王ですが、実は、我がプール帝国は当時彼を匿っておりましてね、王位に就くことも後押ししました」


カリーナは驚いてマルコを見た。


「今となっては隠す理由もない事実です。ただ、その際に耳にした噂がありました」


マルコはじっとカリーナをみつめる。


「カール王子には双子の弟がいると」


カリーナはそれを聞いて何故か全身が震えた。


「…それが、バイオレット副騎士団長だと?」


意図せず声が震える。

確かに国王に似ているとは思ったが。


「確証はありません。バイオレット殿は陛下が即位された後、養子先の辺境伯の元から王宮に呼び寄せられています。陛下の従兄弟であると言われていますが、その出生には謎が多い」


双子は縁起が悪いからという理由で、片方が養子に出されるという話は確かに聞いたことがある。

世継ぎの争いを避けるためのこじつけだとも思われるが、大国の王族や貴族の間では未だ残っている悪しき習慣だと思う。


「それに、バイオレット殿は強い魔力の持ち主です。ガルシア王国では、国王に即位する条件として魔力の有無は重要視されない。それどころが敬遠される。それより、王色が優先されるのです」

「王色?」

「ロミスター教の始祖が最初のガルシア国王を指名したと言われています。その青年の瞳は紫で髪は銀色であったと言われています」


カリーナの脳裏に一人の少年が浮かび上がった。

紫の瞳、プラチナの髪、耳には深紅のピアス。


「ガルシア王国は、決してバイオレット殿を離さない。そうして秘密を守り続けていくでしょう。彼と運命を共にするというのなら、貴女はそれを全て共に背負って窮屈な生活を送るか、全て知らされないまま傀儡の妻となるかのどちらかを覚悟せねばならない」


マルコはカリーナの動揺を満足したように見つめている。


「お考え下さい。貴女を幸せにできるのは、私かバイオレット殿か」



食事の後、マルコに園庭に誘われたが、疲れているからと断った。

王国の園庭は夜間も色とりどりの魔石で明るくライトアップされている。

防犯も兼ねているらしいが、幻想的で美しい。しかし、マルコと散策する気にはなれなかった。

先程マルコが語った話で頭がいっぱいだったからだ。疑問符ばかり浮かんで答えが出ない。

申し分ないが、マルコが最後に言った言葉のことなど考える気にもなれない。

そう、思うのはアルフレッドの事ばかりだ。

アルフレッドはあの後、姿を見せなかった。

ノーラやキースに聞いても知らないようだった。

屈託なく笑う笑顔を思い出す。

会いたいと思う。

そして強く、アルフレッドの事を知りたいと思った。

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