表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪月花 魂の行方  作者: 荒木田久仁緒
同じ焔を抱いて - レミリア・スカーレットの場合
7/19

四 灰色の隙間


  霧の湖は、夜のとばりに包まれて静まりかえっていた。


  おそらく普段なら、この時間であろうと宵っぱりの妖怪や妖精が、いくらかは遊びまわっているのだろうが、今は湖面をかすかに揺らす細波(さざなみ)しか、自らの存在をあたりに知らせるものはない。


  湖のほとりに立つ館から発せられている、四半周も離れたこの場所でも感じ取れる重苦しい妖気のせいか。あるいは閻魔(わたし)の説教を忌避して、いち早く逃げ去ったのか。

  おそらくは、その両方なのだろう。そして、それが今は都合が良かった。


「……では」


  湖を見つめたまま、私は静かに言葉を発する。


「この件については、特にそちらからの要請はない、ということですね?」


  あたりは星明りだけが照らす深い闇。草木のほかは、何者の影もない。だが、


「ええ、その通り」


  闇と影の隙間から、声がした。高く細い、少女の声。


「彼女……というより紅魔館は、幻想郷の勢力争いからは、少し離れた存在ですから。(   )普通に(   )処理して頂いて構いませんわ」


「……わかりました。では(   )普通に(   )処理します」

「うふふ。お仕事お疲れ様……」


  からかうような含み笑いは、ほどなく闇の中に吸いこまれ、そのまま気配も消え失せた。


「……あと七日、か」


  私は独り、星を見上げて呟く。

  きっと、何事も無くは終わらない。そんな予感が胸を占めていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ