頬杖跡
“秋の露 頬杖跡と 君の笑み”
瞬くと、窓外に眼を向ける君がいた。
秋の、朝から降り続く、じっとりとした雨。
曇天は重怠く、全てが灰色。
授業は退屈。
そっぽを向く君。
湿気を帯びた教科書に、無造作に肘を乗せる。
君はずっと、窓の外に夢中だった。
何を見ているのかはわからない。
きっと、何も見ていないのだろう。
もしかしたら、目を瞑っているのかもしれない。
短く切った黒髪が時折、揺れる。
思い出したように欠伸する。
そして、盗み見ている僕に気付く……。
振り返った君は笑んで、僕は心を打ち抜かれる。
頬杖跡が赤く残っている。
見透かしたような視線に捕らえられる。
もうすぐ、雨は上がる。
君の笑みも消える。
何事もなかったように再びそっぽを向く。
次第に消えていく。
雨露も、頬杖跡も、君の笑みも。




