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第三話:学園ライフとはこれまた言ってみたもんで・・・


「・・・彼が・・・そうであるが・・・」

声が聞こえる。

男の声だ。

「・・・しかし・・・なのでは?・・・」

次に聞こえるは女性の声。

一体何が起きたのだろうか?思い出してみる・・・。

確か、私は異世界に異変騒動の解決を頼まれて・・・それでモンスター、グリーズ・リシア・アオイを仲間にして・・・そして・・・

『ネクト!起きて!プロネクト!』

トリエルの声が聞こえ、その瞬間ハッ!と一気に正常に戻る。

そうだった!私、氷の矢で射られて意識失う前にグリーズ達を島に・・・!

そう思い出していると、無意識かガバッと起き上がっていた。

「おや、どうやら目覚めたようですね?」

声が聞こえる方へと顔を向けると、そこには白髪で緑色の瞳をした青年とその後ろには数人の男女がこちらを見下すように見ていた。

「・・・あんた誰だ?ここは?」

「口を慎め!この方を・・・」

「生徒会長くん?彼は私と話をしているんだ、余計な口出しは控えてくれよ?」

「・・・ッ!はっ!出過ぎた真似をしました・・・!」

ひゃあおっかない、綺麗な女の子を睨みとドスの利いた声でねじ伏せたよ・・・。

ん?それより彼女が生徒会長・・・という事は、目の前に居るこの男は・・・

「初めまして・・・というワケではないかな?私の名前はコーラル・シフォンズ、まぁ気安くコーラル学園長とでも呼んでくれ」

学園長・・・やっぱり・・・。

(つまりここは・・・)

『そうだよ、今現在ネクトが居る場所は学園都市“ハンニバル”という巨大都市だ』

(なんだそれ?そんなもんまで創ったのか、トリエル)

『う、うん・・・半分趣味だけど・・・』

趣味かよ。

「ここは学園都市ハンニバル。そして今居るこの部屋は隔離専用施設というワケだ」

様は収容所って事か。

「それで、単刀直入に聞くけど、君は一体何者だい?冒険者には到底見えないし、何よりも君はウチの学生じゃない、なのにモンスターを使役出来ていた」

コーラル学園長の最後の一言に全員がビックリマークを頭に浮かべているような衝撃顔で驚いていた。

「モンスターの使役は、ウチの学園にある科目の一つ、モンスターテイマーの部で勉強し、そして先生の指導の元に自分だけの一生のパートナーを手に入れる。

・・・それだというのに、君はウチの生徒でもないのに、モンスターを使役しているように見えた、ましてやデスベアードやアラクネを使役するなど・・・ウチの生徒でも出来た芸当ではない」

そんなに高難易度なのか?あいつら・・・

「黙っていないで何か話してくれないか?さっきから黙秘し続けたままじゃないか」

「・・・いう価値が無いからだ」

「ほう?」

犯行的態度を取られて少し苛立ったのか、コーラル学園長は私の頬を鷲掴みにして、顔を近づける。

「君に拒否権はないよ。黙秘し続ければこの都市から追い出されると?甘いねぇ・・・僕は寧ろ君の為にと思って忠告しているのだよ」

「忠告?」

「そう。この世界は我が学園の毎年行われる試験に合格し、凡そ10年の月日を得て卒業の日までに好成績・名誉を獲得しなければ一般社会に出れないようになっているのだよ」

ようは10年も掛けて洗脳して洗脳した奴を兵隊でも何にでも変えて世に出すろくでもない場所じゃん、ここ。

(トリエル?)

『いや、おかしいよ。この学園は私が考えた設定なら確かに子供を入学から卒業の凡そ10年の月日を耐え抜かせて卒業させるっていうのがこの学園の方針・・・好成績などの功績を獲得しなければ卒業出来ないってそんな横暴な事・・・』

(どうやら、世界の異変の一部だろうな?それに・・・)

『それに?』

(私の前に居る奴ら・・・全員やばい。勘もあるが、この場に居る全員が危険人物と言っても過言じゃない)

『えぇ!?』

(兎に角、拒否する事も黙秘する事も無理と思えるな・・・適当にだが話を合わせる)

「それで。君は一体何者だ?そしてその手に持つその物体は何だ?答えろ」

「別に私はただの冒険者で放浪人だ、そんでこいつは魔法を唱える為に便利な機械だ、機械分かるか?ん~?」

「調子に乗るな、機械ぐらい誰でも知っている。我が学園でも機械関連の科目はあるからな」

あるのか一応。

「確かにデスベアードやアラクネは俺が使役させたさ、こいつを使ってな?」

「何?」

『ちょっ!?』

ネクトが吐いた言葉は、言うなれば「この機械で高レベルのモンスターを使役できます」と言っているようなもの。

トリエルが驚いた声を出すのも無理はなかった。

「では、そいつを私・・・」

「アホか、「はいそうですね差し上げます」っていうのも馬鹿だし、「じゃあ僕にください!」という時点で馬鹿丸出し決定だよバーカバーカ」

ネクトの分かりやすい挑発と拒否についにキレたのかコーラル学園長はとうとう首を鷲掴みにし始めた。

その息はやや荒く、目も興奮気味な目をしていた。

「あんまり私をコケにしない事だ、いいからそいつを触れるようにして大人しく私に寄こしなさい」

「嫌だね、それにしてもあんた最初に比べてヤケに男前が上がったんじゃないか?ひっでぇ面でさぁ」

さらに挑発が続く、笑いながらコーラル学園長を馬鹿にし続け、後ろの人らもそろそろ堪忍袋の限界が近づいていた。

「(潮時かな・・・。)そこで、私から一つ提案がある」

「・・・提案だと?」

「そうだ。この機械は譲れん、但しこれを使っている所を見せる事なら出来る」

「何?」

「どうだ?こいつを手に入らないのならば、いっそ作ってしまうのはどうだ?機械の知識あるんだろ?エリート揃いなんだろ?ここは」

これはある意味賭けに近い。

「この学園都市に少し興味が湧いた、ここの知識にもな。どうだろう?10年あるんだ、俺を編入生として迎え入れるっていうのはどうだ?それともこれから新学期スタート時期かな?」

先ほどの挑発はこの為、敢えて召喚アプリの性能を一部バラして餌としてチラつかせ、無理だ不可能だと挑発混じりに拒否をして相手を興奮状態にさせ、最後にここに入る為の口実として成立させる。

下手をすれば襲い掛かられそうだったが、その時はグリーズ達を呼び出して戦うまでだった。

そうした場合、最悪返り討ちに遭うだろうけども・・・

『なんて危ない・・・さっきのはこの為?なんでまた・・・』

(言ったろ?こいつらは危険人物だと、ということは異変の一部・・・謎の男への手掛かりになるかもしれないだろ?)

『そうか・・・、それでこの学園都市に新規入学をしようと・・・』

(どちらにせよ、このままこいつらを放置するわけにもいかん。寄生虫のように蠢いて堂々と生えている毒物は取り除かないとな)

「悪い話じゃないと思うが?」

「・・・・・・。良いでしょう、貴方の入学を認めましょう、ようこそ学園都市ハンニバルへ・・・」


・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・。


・・・。


その後、コーラル学園長の指示の元に私は学園生が寝泊まりする寮へと案内されていた。

寮か。実の所、軍事関連とかでは世話になったが何分放浪者の方が経歴が多いのもあって、そういった施設に関しては実用として利用するのはこれが初だ。

どんな奴が・・・

「先に言っておくが、貴様が寝泊まりする場所はあくまで個室だ、貴様のような素性も分からん者を我が学園の生徒と同じベッドに入れる訳にはいかんからな」

「あっ、そう。分かりましたよぉ~」

なんだ、それはそれで気安くなるな。

それよりもさっきからこの生徒会長の態度が険悪すぎる。

私が一言言えばデカい舌打ちをしてくるし、こちらを見る際には憎悪とも言える視線で睨みつけてくる。

面白い奴だな、気に入った。殺すのは最後にしてやろう。

そんな事を思っていると突然、脚を止めた。

どうやら目的の部屋に到着したらしい。

「ここだ」

そう言って鍵を取り出すとドアのロックを解除して開く。

中に入ると、そこは誰も使われていない、ベッドと机だけが置かれた素っ気ない部屋だった。

埃・・・は、さすがに利用されていなかった時期が長かったのだろう、机とベッド及び床は埃で汚れていた。

「箒とチリトリはそこだ、学園長の御言葉に従い、この部屋はこれから貴様の領域とする。この学園に恥じぬ行為をするんだな、もしも不埒な行為をしようものならばただで済むとは思わぬ事だな」

「了解です、生徒会長殿。説明と要件はこれにて終了?」

「チッ・・・。後の詳しい説明はそこの机に入っている資料に眼を通せ、それからこの後暫くしてから再度ここに訪れ次の指示と学生服の支給がある、それまでに部屋の掃除を済ませておけよ」

「了解、これからここが俺の部屋になるんだ。愛人のように愛でるさ」

「フンッ・・・。それではまた後ほどに・・・」

そう言いながらドアを閉めていった。

あの生徒会長、他のと比べてまだマシな雰囲気だが・・・もしかして白かな?

まぁどちらにせよ、あの場に居た殆どの奴は黒も黒、真っ黒の危険人物だ、どういった素性の人物かは知らんが、今後は警戒するに限るな。

『ネクト?』

「あぁ、どうしたトリエル」

『あっ、喋ってる』

「誰もいないからな、どうした?」

『本当に10年もここに過ごすつもり・・・じゃないよね?』

「当たり前だ、10年もジッとここに過ごすワケないだろ?あれは一種の逃げ口上、問題を片付けたらトンズラするさ」

『そっか、ならいいけど。それよりグリーズ達をそろそろ島からこちらに戻したら?不安だろうし・・・』

「あっ、そうだったな・・・」

もう気にする事は無いんだ、出しておこう。

スマホを取り出し、召喚アプリを立ち上げて島の項目へと進む、そして登録された使役モンスター達の欄で島送りにされているグリーズ達をチェックしていき、島から出すをタップした。

すると、瞬間移動したかのように、グリーズ達が現れた。

・・・本当に便利だしすげぇなこの機能。

「グリーズ、アオイ、リシア。大丈夫か?」

「だ・・・大丈夫かはこちらの台詞ですよネクト様ーッ!!」

予想はしていたが、グリーズが物凄い泣きそうな声で抱きついてきた。

「御身が傷ついて尚も我々をあの島へと逃がすなど・・・あの後、己の無力さと心配で・・・!」

「あーごめんごめん、あんときは相手がやばかったからさぁ・・・」

「せやかて主?自分が死に掛けやっていうのにウチらを第一に心配して逃がすなんて普通ありえへんで?」

「そうか?的確な判断だと思うけどな?んで、アオイちゃん?何、人の首に巻きついてんの?」

グリーズに抱きつかれている中、アオイは占めない範囲で巻きついてジッと何も言わずにいた。

「あぁ、それ多分不機嫌と心配とか色々と重なってそうなっとるんと思うよ?うん」

・・・本当、あの学園長が言うにはこいつら使役させるの高難易度だっていうんだよな?

どうなのよ、これ実際・・・?


・・・・・・。


「成程、ではそのコーラル学園長という輩がネクト様を・・・」

「あいつの言動から察するにあんときの男が学園長だってことだな、本人は自供も何もしてなかったが・・・」

「でも、そのスマホ・・・やったけ?それを欲してたわけやろ?酷く・・・」

「あぁ。さらに言えば、あんな口約束をすんなり受け入れた辺り、マジで作る気だぞ、このスマホを・・・」

『無理でしょ。その召喚アプリは私が作り上げた代物・・・この世界がいくら優れてても力が無ければ再現なんて到底不可能・・・』

(異変が起きているんだ、万が一って仮説も立てる必要があるだろ?)

『そうかもしれないけど・・・』

「まぁどちらにせよ、この学園生活をエンジョイしつつ、この学園に根付いた異変を解決させるのが第一の目的だな」

「了解しました、御身の為ならこのグリーズ、人前であろうと構いません」

「ウチも本当は人前なんて出とうもないけど、主の為やからやなぁ・・・ま、ええか」

「それに、ここで生活をすればお前達の成長にも大きく関わってくるだろう。何よりアオイをさっさと戦力に加えてやらないとな」

「ピィ・・・」

まだ不機嫌そうなアオイ、まぁ仕方ないとはいえ・・・

「そう気を悪くしないでくれアオイ、悪かったよ」

「ピィ・・・」

「変な所で意地張るんだなお前は・・・」

そういいながらアオイの身体を撫でる。

すると、気持ちいいのか、フルフルと震えながら「ピィィィィ~・・・」と小さく唸る。

「まぁ確かにその子もいい加減ウチらみたいに戦いたいやろうなぁ、だってあのダンジョンの時からずっとバッグの中で疼くまってるだけやったもの」

「忠誠はあれど役に立てないのは歯痒いだろうな・・・」

「まぁここにはモンスターを育てる教育があるらしいからな、何か手っ取り早い方法もある筈だろう」

『それなら多分、水晶の話が出るだろうね』

(水晶?)

『あれ?説明してなかったっけ?』

(・・・ん?聞いてたような聞いてないような?・・・まぁいい、その水晶がどうだと?)

『まぁ先に説明すると、モンスターの体内には特殊な水晶が込められているんだ、モンスターを倒すと一定の確率で採取出来て、それを自身の使役するモンスターに使用するとレベルアーップ!一気に成長するわけ』

(まんまゲームだな)

『まぁそこんところは本当にゲームを参考に導入させた設定なんだけどね~・・・』

(まぁとりあえず水晶を集めるのがアオイを強くする近道というワケだな)

『うん。あっ、でも水晶にも個体によっては経験値の入りが悪かったりするの物もあるから気を付けてね!』

(了解した、これから部屋の掃除に取りかかる)


・・・・・・。


“ザッ・・・ザッ・・・”

箒で埃を取り、チリトリで一気に纏めて事前にあったゴミ箱にザッと一気に入れる。

「旦那様ぁ~♪こっちも終わりましたよぉ~♪なーんて♪」

「おいリシア、ふざけてないで真面目にしないか」

「えぇ~ええやないの。ちょっとぐらい・・・なぁ?旦那様?」

「・・・そうだな。その旦那様っていうのリシアなりで良いから今後は旦那様と御呼びなさい」

「へっ!?えっ!?ちょっ・・・!?」

突然のネクトの返しにリシアは一気に赤面になり困惑しだす。

「ふふん。冗談だ、俺の事は好きに呼んでくれても構わないよ」

「あっ。へっ、えぇ・・・せ、せやな・・・」

「それでネクト様、その生徒会長という輩が来るのは・・・」

「あぁ、もうそろそろ来ても・・・」

そう言い掛けた時、ドアが開く音が聞こえ、見てみるとそこに生徒会長が居た。

ただ、その顔は唖然と口を開けた状態で固まっていた。

「あー・・・生徒会長?もしかして、モンスターとか不慣れ?」

「そ、そんなわけないだろう!!馬鹿者!!普通、デスベアードとアラクネを掃除係にするか、普通ッ!?」

「え~良いじゃないですか、本人らには多少無理言ってますけど~」

「いえネクト様、私にそんな無理などは・・・」

「喋った!?デスベアードが!?」

「あっやっぱ驚くんやな、グリーズが喋るの」

「ば、馬鹿な・・・アラクネは知能が高く我々の言語を喋れるモンスターは理解しているが・・・デスベアードは普通喋らないぞ・・・!?」

「どうもそん中でも一番レアな分類らしいっスよ?なぁ?」

「えぇ、おい人間。あんまり我が主に無礼を働こうとするなよ、即座にそのはらわたを抉り取ってくれるからな・・・」

「やめろグリーズ。態度悪いのは仕方ないだろまだ出会って間もないんだから、そんな鼻っから犬猿の仲で居続けちゃ進歩しないぞ?」

「ハッ・・・申し訳ありませんネクト様・・・」

「し、主従関係結べてる・・・」

「まぁ使役されてる以前に惚れてるようやからな~♪・・・それより生徒会長はん、それがウチの旦那様が着る制服っていう服かいな?」

「・・・!そ、そうだ!良いから着ろ!」

あまりの衝撃的展開に赤っ恥を掻いてしまったのもあるのか、少し頬を赤く染まらせながら制服を手渡された。

「(まるでエロゲだぁ・・・)どうもっス」

なにせ生徒会長の容姿がまんまエロゲ仕様とも言えるぐらいボンキュボン、声も可愛らしく可憐で、

しかも黒のロングヘアーもあってパーフェクトビューティ、こりゃ男子・女子生徒の殆どから注目されてるだろうなぁ・・・大半はエロい眼差しで。

『ふぐぅ・・・』

(トリエル?・・・もしかして、自分が作った世界の人間に女として負けてると感じてる?)

『何故わかった・・・』

(・・・トリエル。世の中、胸と顔も大事だが中身が糞溜並みの汚さだったら同レベルの屑しか集まらんもんだぞ?)

『遠まわしに慰めんでもいいよ!くそぅ・・・』

「とりあえず、貴様にはこの後の予定について話す。よく聞くように・・・」

「はっ!了解しました生徒会長殿!」

おちょくっているのかどうか分かりづらい範囲で真面目に兵士が上官に対して返す返事のようにハキハキとビシッとした態度で答えた。

「・・・まぁいいだろう・・・では、この後着替えてすぐに一年生達が居る教室に向かい、そこで自己紹介、その後は授業に参加して貰う。

授業の後は休み時間だ、生徒達と会話も許されているから好きに会話するといい、休み時間が明けるとすぐに中央庭へと生徒と共に移動し、そこで召喚術に関する授業、そしてモンスターを召喚する試験を受けて貰う」

「ん?モンスターを召喚するのか?」

「そうだ。既に貴様には見た所二体程居る様だが・・・」

「あっ三体です。アオイ」

「ピィッ!」

名前を呼びと共にアオイはニュルリとネクトの背中から出てきた。

ダンジョンに居た時、気に入ったのかネクトの背中などにくっついて離れようとしなかった。

「わっ!?も、もう一体居たのか!?」

「えぇ、この学園生活でアオイも成長出来れば嬉しいかぎりなんっスけどね~」

「そ、そうか・・・(三体もだと・・・?!学園長に報告しないと・・・)」

「まぁその授業で4体目の仲間が増えるならこちらも嬉しい限りですけどね」

「一応、召喚術の試験は一年を重ねて行う、これは召喚したモンスターとの絆を一年で気づき、その次の一年に召喚出来たモンスターとの絆を深める為のものだ」

「つまり、組んず解れつでもなんでもいいから愛しあえって事ですかね?」

「組んず・・・き、貴様ァッ!!?な、何を言い出すんだ何を!!?」

「えっだからセ・・・」

「それ以上言うな!頭の中がピンク色の獣めっ!!!」

「なんだと貴様!ネクト様に無礼だぞ!?」

「落ちつけグリーズ。すんません生徒会長、ちょっとおちょくり過ぎましたね」

突然の発言にやや興奮気味にツッコんだせいか、ゼーゼーと息切れをしながら変な汗を掻きながらこちらを睨む生徒会長があった。

「ひ、人をおちょくるのも・・・大概に・・・しろ・・・」

「あっそうだ。生徒会長、一つ質問いいですか?」

「ふー・・・なんだ?言ってみろ」

「この学園都市にコーラって炭酸飲料あります?」

「は?コーラなんて、ウチの学園の常に売れ残る飲み物だぞ・・・」

それを聞いた途端、ネクトの顔色が一変した。

その顔はもう仏の顔、恵比寿様並みの笑みだった。

「本当ですか~?!コーラある?しかも独占可能な程に売れ残る!?」

「(な、なんだ急に態度が・・・)そ、そうだ・・・私も飲むことはない。それがどうしたんだ?」

『ネクト?どうしたの?急に態度が・・・』

「いえなーんにも~?ぐへへへ・・・」

次に見せた顔は目を光らせ、よだれを垂らして楽しみにする言わば漫画のスケベ顔に近い顔になっていた。

「な、なんだその顔は!?今度はどうしたんだ貴様!?」

「いいえ~なーんーにーもー?ぐははははははっ・・・(こいつは少し楽しい学園生活になりそうじゃわい・・・ふはははははは・・・神様万歳、トリエル様ばんじゃーい。ぐはははは・・・)」

『ネクトさーん?戻ってこーい?』

ネクトの急変にやや困惑するトリエルと生徒会長だった・・・。


・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・。


・・・。


それから10分後、改めて服装を整えて教室に向かう事になった。

とりあえず、グリーズ達を部屋に残し、生徒会長と二人で教室へと向かう、その最中に廊下から眼に映る施設に関して色々と説明を受けていた。

「・・・以上が一通りの施設説明だ。大体この10年で一通りの施設を利用する事になる、今後も場所を覚えておくように・・・」

「了解した。(まぁ忘れててもトリエルが説明してくれるだろうし・・・)それよりこの学生服、中々のものだ。実用性に向いた服で着やすい」

「そうだ。今後10年間随時着る事になる服だ、寝る時以外はこれを着ていくことになる。それから戦闘などの試験の際にその服装に上から防具を装着出来るようになっている。

ダンジョン攻略の試験もあるから、その服装に慣れてくれないとこちらが困るという事だ」

「成程。随分と徹底した方針なこって・・・」

「無駄口を慎め、間もなく一年が居る教室に到着する」

生徒会長の言う通り、大きな扉が目の前に見えてきた。

扉がある施設は外見はビルのようだとも言える見た目をしており、生徒会長の説明だと実技や特別な授業以外ではこの建物で行うとの事だそうだ。

何も言わず、二人は無言のままドアの前に着き、生徒会長がドアをノックした。

「おぉ!来た様だ、入ってくれたまえ!」

中年男性の声が聞こえ、生徒会長は「失礼します」と言いながらドアを開けた。

ドアを開けるとそこには何段にも階段式に端から端までかなり長い幅いっぱいに長机と一つ一つ小分けされた椅子が並び、合計で10段程にいっぱいの生徒たちが座っていた。

当然だが、生徒達の殆どがこちらを見つめ、物珍しそうな顔をしていた。

「ハンニバル総生徒会長“クレスティア・マギア”編入生を連れて参上しました」

「あぁ~聞いているよぉ~それが飛び級にウチの学門を叩いた生徒だね~!ではまず自己紹介を!私はこの一年生達の基礎知識及び世界史を教える担任、“ロナルド・マーティス”だ!ロナルド先生って呼んでくれたまえよ♪」

やたらハイテンションな先生は、あまりの積極的過ぎるアプローチにあの生徒会長も少し涼しい顔で居られないぐらい引いていた。

「ロ、ロナルド先生・・・近いです・・・」

「あぁごめんごめん。さぁ!我が学園の一年生諸君!彼が少し遅れてやってきた君たちの同じ学び舎の仲間!ネクトくんだぁ~!」

「ネクトです。あっネクトがフルネームなんで、家族名とかそういうの無いんで」

「あ~大丈夫だよ、ネクトくん~そういったファミリーネームとか無い子だってこれまで何度も居たからねぇ~。一年生諸君も彼を自分達よりも後輩だと思わないようにねぇ~!まぁその理由は後々分かるから・・・ねッ!?」

最後の一言に少しだけハイテンションな声から小さい素の声で言ったのがちょっと気がかりだが、兎に角一通りの挨拶は済んだ。

「それでは、私は学園長にお伝えすべき事がありますので・・・これで・・・」

「あぁ~ありがとうね~クレスちゃーん!学園長によろしく~!」

「は、はい・・・それでは・・・」

そう言いながら生徒会長は逃げるようにその場を後にした。

(・・・本当に一歩間違えればオカマっぽくなるぞ、この先生・・・)

『私も人間や動物辺りは基本的な事ぐらいしか掴めてないけど、私の創った世界にこんな人居るんだなぁ・・・創っといてなんだけど・・・』

「それでは、ネクトくんにはそこの席に座って貰おうか~」

指で示した場所は、すぐそこもそこ、今立っている真横にある席だった。

よく見てみると、机の上にノートと筆記用具が置かれているが、教本とかそういった類の書物は見当たらなかった。

(教本見るより先生の話を聞け・・・という訳か・・・)

確かに遠い場所からでも大きな文字で見えるように先生の背後に超巨大な黒板があるが、よく見かけるスライド式では無い。

(どうやって一番上とか書くつもりだ?)

その疑問は先生の次の行動でハッキリした。

「席についたね~?それじゃあ、ネクトくんは既に書いてある文章を書きながら話を聞いていてくれ~大丈夫、僕の授業は話がメインだからね!はっはっはっ!」

(本当にハイテンションな先生だなぁ~・・・まぁいいや、言う通りにしてよう・・・どうせ分からなかったらトリエルが教えてくれるし・・・)

『まぁその世界の設定考えたの私だからね~ある意味私の今更になって恥ずかしい設定とか覚えてほしくないし・・・』

トリエルの「ある意味」からの一言がやけに小さかった。

それからロナルド先生の講習が始まった。

ハイテンションながらもキチンと真面目に解説し、時折疑問を投げる姿は「あっ一応先生なんだな」と思わせるものを感じた。

何より一番驚いたのは先ほどの黒板の件だ。

チョークを手に取り、放り投げると途中で空中で止まり、先生が手を上げると共にまるで見えない棒でくっついているかのように宙に浮くチョークでまだ黒い部分を白い文字で書いていく。

それはまさしく魔法、ネクトもその光景に少しだけ見せられるものを感じた。


・・・・・・。


ある程度書き終え、話を聞きながら後は適当に書いていると、ふと横が気になった。

横を見ると真面目に先生の話をまるで絵本の中の冒険譚を聞いている少年のような眼差しで聞く少し小柄な青少年が居た。

他に見える生徒と違って少し身長が低めでややボサボサ気味なナチュラルショートヘアをしていた。

さらにそこ横には少しダルそうに話を聞く男子生徒が居た。

こちらは隣の少年と違ってナチュラルではない、シンプルな金髪のショートヘアでよく見るとオッドアイで右目が琥珀色に対して左目は血の様に赤い色をしていた。

真正面に視線を戻すと横顔だけがチラリと見えるが可愛らしい女子生徒が居た。

茶髪のミディアムスタイルのヘアだが、チラッとしか見えないせいもあってか瞳の色や正確な顔までは見えなかった。

その隣には同じく女子生徒で黒いロングヘアに横顔だけが何とか見えて黒い瞳である事が分かった。

こうして人間観察をしてみると、これら全部の人間がトリエルが創りだし、何代にも時代や歴史を重ねて生きている人間達なんだと思うとトリエルの凄みが分かってくる。

基礎的なプログラムとかそういうのがあったとしても、こうやって自分が生みだした世界に歴史や文化を創らせるなんて中々出来ない事だと思う。

今ロナルド先生が話している内容もトリエルからすれば何らかのイベントだったとしか認識が無いだろう。

ある意味では、本当にトリエルはこの世界における神様そのものなのだ。

その気になれば壊す事も出来る、だがトリエルはそんな事をしたくない、今回この世界に力を圧を掛ける元凶が居るとはいえ、本人からして見れば仕事で創っただけの模型みたいなもの。

それでもトリエルは壊したくないんだ、何となくだけどトリエルの気持ちが少しだけ分かる気がする。

(トリエル)

『ん?何?何かわかんない事ある?』

(そうじゃない。改めて意思を表明したい、お前が創ったこの世界から異物を取り出しこの世界を守る。約束しよう、途中で投げ出したりはしない)

『・・・・・・。そっか、ありがとう。・・・そんだけ?』

(あぁそれだけだ、なんかこういうを聞いてたら何となくな・・・)

『なにそれ、変なの』

顔が見えないが声で薄らと笑っているのが分かる、その顔は多分いい笑顔をしているのだろう、そんな気がした。


・・・・・・。


「以上がこの国を作り上げた王、“ユグドラクル初代王”に関する歴史だ、御清聴ありがとう。一応筆記試験とかでも出てくるからこれから先は執筆タイムだ、書き忘れやもう一度聞きたい部分があれば先生に言ってくれたまえ~?」

中々熱心で良い先生だ、生徒達の幾つかが遠慮なしにロナルド先生に近寄り聞きたい部分を聞きに行っている。

つまり、隣に居る少年も・・・動かない、というより集中して書いている。

多分だが、書いている内容はロナルド先生が言っていた内容全てだと思われる。

(こいつもこいつで熱心な奴だなぁ・・・)

そう思っていると・・・

「あ~・・・やっと終わったか、かったりぃ~・・・」

これまた向こう側の男子生徒、隣に居る真面目な少年とは真逆で話半分に聞いていたようだ、筆記用具にも手を出している素振りも見えない辺り、ノートに執筆していないと思われる。

居るんだよなぁ、こういう奴。漫画やアニメ、現実だろうと・・・

「ちょっと、レオ!あんたロナルド先生の話全然聞いてないでしょ!」

突然、ミディアムの子が少し張った声で喋り出す。

どうも、向こう側の男子生徒とは馴染みのようだ・・・。

「あぁ!?んなもん、聞いてどうするってんだよ。俺は実戦訓練がしてぇんだよ・・・」

「もぉ~・・・リクを見習いなさいよ、真面目にやってるんだからさぁ~」

「はんっ!こいつは昔っからこういう奴なんだよ、・・・おいそこの編入生」

突然話題切り替えてこちらに振ってきた・・・。

やめろ、一瞬ドキッとした。

「てめぇ、どういう経緯でここにやってきた?戦闘を学びにきたんなら、相手してやるぜ?」

「ちょっと、やめなさいよ!ネクトくん困ってるじゃない!」

正直いえばそうです、ミディアムっ子ちゃんありがとう、名前まで覚えてくれて・・・。

「ごめんね。あっ、私“アンナ・ルガンナ”っていうの、アンナで良いよ」

「アンナね、分かった」

「んで、さっきネクトくんに突っ掛かってきたこいつが“レオルド・グローバル”私達はレオって呼んでるの」

「あぁ゛!?何勝手に自己紹介させてんだよ!?」

「はいはい、どうせあんた自己紹介する気ないでしょ?」

「うっせぇな!たくっ・・・」

「あ、あの・・・」

アンナとレオの二人が痴話喧嘩を繰り広げている中、アンナの隣の黒髪の子が話しかけてきた。

「わ、私“レオナ・ユリカ”と申します。その・・・よ、よろしくお願いしますね?」

「(なんで畏まってんだ?)あぁ、よろしく頼む」

「よし出来たーッ!」

すると、先ほどまで真面目に書いてた少年が終えたのか、ノート両手に有名人のサインを貰ったが如く喜んでいた。

「あっ、リクやっと終わった?ネクトくん紹介するね、彼が“リンカー・クルドル”私達はリクって呼んでるの」

「へっ?どうしたのアンナちゃん?って、あれ?この人は?」

「くはっ!相変わらず集中力だけは一級だな、馬鹿リク!」

「新しくこの学園に編入してきたネクトだ。よろしく」

「あっ!授業始まる前にロナルド先生が言っていた新しい仲間って貴方の事ですか!?リクです、宜しくお願いします!」

凄い爽やかで柔らかな笑顔で迎え入れてきたリクに、少しだけ眩しいものを感じたネクトだった。

その時、ベルの鳴る音が学園中に響いた。

「あっ、授業終了のチャイムだ」

(これがチャイムか、たまに元の世界で幽霊騒ぎの際に学校に潜入した事もあったが、こんな感じなのか)

「はい。僕の授業はこれまで!最後にキチンと挨拶をしよう!」

「起立!礼!」

「ありがとうございましたー!」

学生として経験が浅いネクトは流されるまま見よう見真似で起立、礼をした。

そして挨拶を終えると先生は生徒たちに声を掛けられながらその場を後にして退室した。

それから、他の生徒達がネクトの周りに集まり始めた。

「貴方が新しい編入生!?」

「よろしくな!」

「どこの出身なのー?」

自己紹介をして挨拶する者、快く歓迎する者もいれば、出身などプライベートを聞いてくる輩まで居た。

漫画やアニメでこういう展開を予測はしていたとはいえ、想像よりも勢いが強いせいか、少しタジタジになってしまっていた。

その横で微笑ましく見ているリク達が居た。

「あはははっ、ネクトくん大人気だね~」

「けっ・・・新入りによくもまぁあんなに騒げるもんだな・・・」

「そんな事言わないの!彼はこれから私達の仲間として一緒に暮らすんだから!」

「そうですね。・・・でも・・・なんでしょう、何か彼にはただならぬ物を感じるというか・・・」

「・・・恐ろしげを感じる」

突然、背後からスッと誰かが現れる。

その容姿は顔もそうだが、クールな二枚目と外見から判断出来るほどに顔の整ったややツリ目の男子生徒だった。

「クルスくん」

「あの生徒会長が直々に連れてきたんだ。何か裏がありそうなのは確実だと思う」

「考えすぎだよ、それにこれから一緒に付き合っていく仲間なんだから・・・」

「そうだぜ、クルス!リクの言う通りだ!」

さらにそこからもう一人の男子生徒が現れる。

朱色の髪色をしていて、やんちゃそうで意外と真面目で面倒見の良さそうな感じの男子生徒だ。

「アカネ」

「ちょっと遅れて俺たちの仲間になった奴なんだ、少しの遅刻ぐらいでそうピリピリすんなって!」

そうアカネは笑いながらクルスの背中を叩く。

「あれ?・・・というか、次の授業って野外だったんじゃなかったっけ?」

「えっ!?マジで!?」

「そうだぞアカネ。リクの言う通りだ、次の授業は召喚に関する試験で指定された場所に移動しなきゃならない」

「それじゃやばいじゃん!もう時間無いし!・・・おーい!みんな!次の授業、野外だぞ?早く集まんないと先生に怒られちまうぞー!」

アカネのその言葉にネクトを取り巻く複数の生徒が「あっ!そういえば!」「やっべ!」と言いながらネクトの周りから散り散りに別れる

解放されたネクトは一息つきながら次の授業に関して聞かされていたのもあり、早速野外へと急いだ。


・・・・・・・・・・・・。


・・・・・・。


・・・。


中央庭へと辿りつくと、そこには既に到着している生徒達が何やらザワついていた。

「ん?なんだ?」

「なんかあったのかな?」

そういうリクとアンナを横にスタスタとその集団の中にへと進むネクト。

「あっ!ネクトくん!」

それを止めようとしたリクだが、その先にハッキリ見えたモノに一瞬身体が固まり言葉を失った。

そして次の瞬間・・・

「えっ・・・ええええっ!?」

「どうしたリク!?」

「どうかなさいましたか!?」

「んだようっせぇなぁ・・・」

後から追い付いてきたレオ達も、次に見えた光景はリクが驚くのも納得がいく光景だった。

なんと、あの凶暴と恐れられたモンスター、デスベアードとアラクネが中央庭にポツンと居り、近づいてきたネクトに対して物凄い親しみを感じる笑みで迎えてきたのだ。

他の生徒達もその光景に唖然としており、さっきまでネクトに対しても態度が悪かったレオさえもその光景に呆然としていた。

・・・時はネクトが生徒会長に連れられる前。

グリーズ達に待機と共に暫くしたら中央庭に向かうように予め指示していた。

なんでグリーズ達が知っていたのか・・・それも当然、トリエルから事前に場所に関する情報を貰っており、グリーズ達はひっそりと部屋を後にして中央庭まで移動していたのだ。

到着と共に授業を終えて集まってきた生徒達に見つかり、それから少ししてネクトがやってきた・・・というワケだ。

「ネクト様。お早い到着で」

「グリーズ、リシア、アオイ。よし、全員居るな」

「それよりもこの人間達が旦那様の・・・その、仲間?・・・で、ええんか?」

「何リシア、その疑問文染みた問い掛け?」

「いや、なんや・・・想像していたのとちぃーとばっかし違っててなぁ?」

「リシア、お前はダンジョンに居た頃から人間との接触を避けてただろ?だから、私にしょっちゅう人間が来てたのだな?」

「な、何言うてんの?!あれはあんたに譲っただけで・・・」

「いや、リシアそれ言い訳になってないから・・・。グリーズもあんまこれ以上リシアをからかってやるなって、話が進まん」

「申し訳ありませんネクト様」

「いや、ちょっちょっ・・・ちょっと待ってぇぇぇッ!?」

三人のいつもの漫才染みた会話を横から割って入るようにリクがツッコんできた。

その状況にネクト達は一瞬無言になってリクを見る。

そしてすぐに顔を逸らして・・・

「ほら見ろグリーズ。あんまりにも漫才過ぎてツッコまれちゃったじゃないか」

「ネクト様との会話に割って入るとは、デリケートがない奴ですな」

「そういう問題やろうか?」

「いやそうじゃなくて!?」

有無を言わずに漫才会話に巻き込まれるリクは、何とか必死に話を戻す。

「ネ、ネクトくん、この三体が君の使役しているモンスター!?」

「そうだよ。みんな良い子で頼りになるよ~」

「(ネ、ネクト様ぁぁ~~~!)そうだ、私達は恩方に忠誠を誓ったモンスターだ、そこいらの雑魚モンスターと一緒にされたくないものだな」

「(絶対心の中で歓喜しとるなアレ・・・)そうやでぇ?ウチらは、この旦那様と一戦交わって倒され、忠誠を誓った間柄や、ちょっとやそっとで裏切ることはありまへん」

「ピィッ!」

自己紹介・・・?を一通り終えた・・・その時だった。

「おやおやぁ、皆さんお早い御到着ですね~」

その台詞一つでその場に居た全員が振り向いた。

そこには藍色のボサボサ頭のショートヘアをした白いシャツと赤いネクタイが目立つスーツの上に前が開いたタイプの黒いフード付ロープを羽織った男性がやってきた。

「おっとぉ・・・先ほどぶりですね、ネクトくん。・・・といっても、会話も自己紹介もしてなかったですねぇ~」

男の姿が目に映った途端、ネクトの先ほどの柔らかい表情が一変して警戒するような鋭い眼差しで無言の顔を決め込んでいた。

「私の名前は“ロイド・ベル・カッツェル”と申します。これでも一応名の通った一族の一人なんですよ?」

その名前が出た途端、幾つかの生徒がザワつき始めた。

「ベル・カッツェル?!」

「あの戦場で負け知らずとされた召喚師一族の・・・!?」

「おっと。どうやら私の一族に関して知っている方々が多いですね~一族を代表して喜びと感謝を表明したいものです♪」

絵に描いたような道化に近い紳士の振舞いを見せるロイドにネクトは一切の油断を見せなかった。

あの時、コーラル学園長の後ろでこちらを見ていた中でビンビンと異様な感じを受けたのがこの男だったからだ。

間違いなく黒と思えるこの男に一瞬の隙も与えるつもりは無かった。

『わかるよ、私から見てもこいつ黒だ』

(そちらでもわかるか。・・・そうだな、こいつは間違いなく黒だ、器用に隠しているつもりだが、こうまで異様感を感じる奴はあの場でこいつが一番だった)

『どうするの?』

(下手な接触は不手際になるだけだ。様子を見て、来るべき時にでも仕留めるさ)

『了解、じゃあ無茶しないようにね』

(あぁ・・・)

「さて、もう少しお話をしてみたい所ですが、そろそろ授業ですね・・・」

その言葉と共にチャイムが鳴り始めた、次の授業の始まりだ。

「それでは皆さん!今日は召喚に関する授業と召喚術の試験を行いますよ!気をしっかり持って挑みましょう!」

「はい!よろしくお願いします!」

「ん~皆さんとても良い返事ですよ~。それでは、まず召喚術とは何か?分かっている人も多いでしょうが初手は基本から・・・そこから参りましょう」

ロイド先生の講座が始まった。

まず召喚術とは何かについてだが、簡単なものだ。

自身に備わっている魔力を使って別の場所に居るモンスターを召喚する言わば強制的な転移魔法との事らしい。

だが補足でトリエルが言っていたが、召喚術で呼ばれるモンスターは意思があってそれに応じての転移されるわけであって強制的な物ではないと少し怒り混じりに言っていた。

そこんところは語弊的なものがあるのだろう、もしくはこのロイド先生が誤った知識をわざと言っているのか・・・なんて、さすがに無いよな。

基本的な講座も終わり、次に召喚術のやり方及び注意事項を語り始めた。

・・・通販番組じゃあるまいし・・・

召喚術で主に必要となるのは魔法アイテムのみとなっており、主な理由は召喚師単体でやるには熟練されて積もる魔力量が多くなければならず、

俺達のような一から召喚術を使用するには魔力の代役となるアイテムが必須となってくるそうだ。

その魔法アイテムも石やら特別な植物の枝やら・・・兎に角魔力が備わったアイテムならば基本的になんでも良いとの事だ。

・・・そんな簡単でいいのか・・・

トリエルにも一応聞いてみたが、案外この世界はそれでどうにかなっている事から、トリエルが途中で考えるのが面倒になった結果こんな単純になったんだろうか?・・・と思う。

だがまぁそれはそれでやりやすいから良いとして・・・

そこからロイド先生が補足を言いだす。

どうやらそれらの魔法アイテムにも魔力以外にも、そのアイテムの属性によってはそれに応じたモンスターが召喚される事が多く、例えば植物系モンスターを召喚したければ植物類の魔力アイテムを・・・

炎系のモンスターに関してはそれらの植物類の魔力アイテムを燃やして召喚したりと、属性に応じた召喚方法を教えてきた。

「ほうほう」と生徒たちは心身に聞いているがこっちからすれば召喚アプリがあるからそういった根本的な物なんて必要としていない。

・・・なんて、傍からしたら常識破りの代物だよな・・・この召喚アプリ・・・。


・・・・・・。


「はい、以上が召喚術に関する講座でした!それでは残り時間は召喚術の試験となります!」

15分程度の講座が終わり、さっさと次に移るかのようにロイド先生は切り替えてきた。

「やっと来たか・・・」

「う~楽しみだなぁ!」

「大丈夫かなぁ・・・」

「さぁ皆さん、自分に出来るのかと心配しているようですが、御心配なく!コーラル学園長より御預かりしたこの魔法アイテム“双竜の宝玉”があれば皆さんでも容易に召喚出来ますよー!」

そのアイテム名が出た途端、周りの生徒達がざわめき始めた。

「えっ?!双竜の宝玉!?」

「マジかよ・・・伝説級のアイテムだぜ?」

(トリエル、双竜の宝玉とは?)

『うわぁ・・・まさかこんな所でそれに出会うとはねぇ・・・』

(そんなにレアな代物なのか?)

『レアもレア、超絶激レアだよ?私がまとめた記録の中でもこれを巡って一度戦争が起きた程だからね』

(おいおい、そんな厄物置いといていいのか?)

『大丈夫、今では召喚術の技術よりも他の技術面の方が勝ってるから、それに超絶激レアアイテムと言っても底知れない魔力が備わったアイテムなだけで、後はこれっきりだからね』

(つまりこういう召喚術関連ではよだれ出るほどの代物ってだけか・・・)

『まぁね、でも高価な物なのは確か。今でもこれを巡って盗賊が狙ってる』

(じゃあいずれかは襲撃もありうるか・・・)

そう会話していると、ロイド先生は大きくて頑丈そうなケースを持ってきてそれを開け、一本の杖をソッと取り出した。

とても上等な杖で、その先に付いている宝玉は虹色に美しく輝いており、それを被うようにデザインされた装飾は名前の通りに金色の双竜の彫刻が施され、それらの瞳はルビーとサファイアで彩られていた。

「あれが双竜の宝玉・・・」

「綺麗・・・」

(成程、宝としても価値のある代物だな、あれは・・・賊が欲しがるわけだ)

『ある意味、あの装飾が原因の内にあるかもだよね~・・・私のセンスじゃないんだけどなぁ・・・あんなの・・・』

「(そうだな、・・・っていうかそれより・・・)どうしたグリーズ・リシア・アオイ。もう喋ってもいいんだぞ?」

三匹とも、授業の際にあらかじめ黙っているように指示しておいた・・・のだが、未だに守っているのか?だんまりだった。

「いえ・・・ネクト様、あのようなものが本当にそれだけの価値があるもので?」

「・・・どういう意味だ?」

「・・・なんやろうなぁ・・・?なーんか、どういったらええんやろうか?気色悪いわ、アレ・・・」

「ピィ・・・」

三匹とも、双竜の宝玉に対して何に見えているのだろうか?随時青ざめていた。

「さぁ皆さん!我が最初にと言う者はいませんかぁ~!?」

そんな会話をしている合間にも試験は始まっていた。

生徒達は「私が!」「俺が!」と次々に挙手をして名乗り出て、ロイド先生が持つ杖を手に召喚術を唱えていく。

そこから召喚されるモンスター達は、大きなトカゲだったり巨大な鷹だったりと、上位にとはいわないがそれなりの位に立つモンスターばかりだった。

召喚が成功し、召喚されたモンスター達と戯れる生徒があれば、その凄みに驚く生徒達も居るなど、今の所誰一人として失敗する者が居なかった。

・・・それを見ていると、先ほど言っていたグリーズ達の台詞が何となく理解出来る。

「・・・確かに気持ち悪いな・・・」

あまりにも出来過ぎている、・・・いや召喚アプリを持つ自分が言うのもあれだが、幾らなんでも奇想天外過ぎる。

まるでお菓子が沢山出てくる魔法のステッキのようにモンスター達がポンポン現れ、皆警戒もせずにすぐさま仲良くなっている。

こちらとしたら、こんなにも都合が行き過ぎる代物は異端としか言いようが無い程に薄気味悪かった。

気が着くと、リク達の順番が回っていた。

「それではどうぞ。大丈夫、自分を信じて・・・」

「は、はい!・・・集中集中・・・」

そして召喚術を唱え始める、宝玉は眩しく美しく輝き、リクの身体が少しだけ金色を帯びているように見えた。

「召喚ッ!」

“バシュウッ!”

と大きな音と共に白い煙が吹き出し、すぐに晴れるとそこには可愛らしい鳥が居た。

「で、出来た・・・?」

「おめでとう、よく出来たね」

そうロイド先生はリクの背中を叩くと、リクはまるで押されたかの様に鳥に近づき、優しく触れる。

その鳥はとても紅く、瞳さえも真っ赤だった。

触れられた途端、何も嫌がらず逆に寄り添うようにリクの手に身を委ねた。

それに感動してか、リクは喜びの笑みを浮かべるもその半分は泣きそうな顔になっていた。

「ハンッ!リクに相応しい奴じゃんか、俺はもっと強ぇ奴をよぶからな!」

そういってレオも後に続くように召喚術を唱える。

同じように宝玉が輝き、「召喚」の一言で一気に白い煙が辺りを被う。

煙が晴れると、そこに居たのは一体のドラゴンだった。

紫色をしていて、なんともゴツい見た目をしたドラゴンだった。

「おぉっ!ベヒモスとは君も幸運だねぇ!いや、縁があったというべきか・・・兎に角、おめでとう!」

ベヒモスと呼ばれるそのドラゴンにレオはニッと笑い、嬉しさを隠しきれずにいた。

ベヒモスを前に生徒たちは「おぉ~ッ!」と驚き、中には羨ましがる者も居た。

その中でネクト達はただジッと見つめているだけだった。

ただ一つ、宝玉の力の気味悪さを感じながら・・・。


・・・・・・。


殆どの生徒が召喚を終えて、ロイド先生が杖をしまおうとした。

「先生ーッ!ネクトくんがまだ召喚していませーん!」

「あぁ、ネクトくんには宝玉は使わないよ」

先生のその一言で生徒達はざわめき始める。

(本当によくざわめく生徒達だな・・・)

「まぁ驚く人らも多いかもだけど、落ちついてくれ。学園長からのご要望によりこの場を設けたのもあるんだ」

「えっ?」

「ネクトくん、君はどうやらこの宝玉が無くとも容易に召喚出来るアイテムを持っているね?」

何を考えているのか、なんと生徒達の面前で召喚アプリに関して明かそうとしていた。

「何のつもりですか?」

「言っただろう?“学園長からのご要望”だって」

微笑みの顔を浮かべる先生の瞳は明らかにこちらをあざ笑うかのようなものだった。

(・・・トリエル)

『もうここまで明かされちゃやるっきゃないよ、下手に回れば悪手になるだけだ』

(そうだな。・・・不本意なんだがなぁ・・・)

そう心の声を言いながらもしぶしぶスマホを取り出し、召喚アプリを起動させる。

その行動をとった時、ロイド先生の顔はどこかニヤついているように見えた。

(それよりトリエル、召喚出来る状態なんだろうな?)

『うん、問題ないよ。どーんと任せてっ!』

この世界に来る前に行った召喚の構えを取り、気合を入れる。

その様子に生徒達は固唾をのんで見守っていた。

「それじゃあ・・・行きます」


「我、ここに願う」

「異界の門よ、開いて異界の者にこの声を届かせたまえ」

「我は願う、汝の力が必要であると、我は欲する、汝の存在を」

「我が声が届き召喚に応じる者よ、門をくぐり我の前にその姿を現せ」


・・・・・・「異界召喚、発動!!!」


スマホの画面が光り、周囲を閃光が覆い尽くした。

「ま、眩しい・・・!」

「なんだこの光・・・!?」

光が収まり、その場に居たのは二人の女性だった。

二人とも同じロングヘアをしているが、片方は群青色・もう片方は桃色の髪の色をいた。

さらに注目するのは、二人の背中に生えている四つの透明な羽。

大きい方が羽にはドクロのペイントが施されおり、それはさながら悪魔ベルゼブブを彷彿とするものだった。

「あらあら、ゼブ。私達を呼んだのはこの人かしら?」

「そうね、ベル。この人で間違いないわ」

まるでオタク向けのミニスカメイドのようなヒラヒラして上着から胸を強調させるようなシャツが目立ち、ミニスカートをヒラヒラとなびかせながら近づいてきた。

「あぁ、えっと・・・二人は・・・」

「自己紹介ね、私は“ベル”」

「私は“ゼブ”。二人合わせてベルゼブっていうの、二人で一人、一人で二人よ。くすくす・・・よろしくね?」

「あー・・・うん、ベルちゃんにゼブちゃんね?(トリエル?これどういう事だ、明らかにこいつらベルゼブブ・・・)」

『わ、私にもわかりましぇ~ん・・・と、とりあえず私は力使って空腹状態・・・暫くしたら連絡どうぞ~・・・きゅう・・・』

「(あっそういえばそうだった)さて・・・どうだ?これで満足かよ、ロイド先生?それから・・・コーラル学園長?」

「いやはや、隠れて見ていたのにバレてしまったか・・・」

いつからそこに居たのか、柱からヌッと出てきたコーラル学園長は笑いながらこちらに近づいてきた。

まさかの学園長の登場に生徒達は驚きを隠せずにいた。

「しかし、これが異界から喚び出したモンスターですか・・・」

「そうですよー・・・んで?これで満足ですか?」

「満足?いやいや、もっと知りたいですねぇ・・・その機械の力を・・・」

そう言いながらこちらを見る学園長の瞳は沼地のように深い瞳をしていた。

ネクトの方も睨み返し、周りは少し険悪な雰囲気になっていた。

それを破るかのように・・・

「はいはい♪ご主人様そこまで、こんな意地汚いのをずっと見ていてはダメですよ~?」

「ベルの言う通りよ。さぁさぁお話はこれでお終い、私達はご主人様とお話したいの、だから邪魔しないでね?」

グイッとネクトの身体を引っ張り、学園長との距離を放すと共にこちらを余裕の笑みとあざ笑う瞳で学園長を見つめていた。

それにはさすがの学園長も聞こえにくいように小さく舌打ちをした。

「まぁ良いでしょう。それよりロイド先生?これで第一召喚試験は生徒全員合格というわけですかね?」

「はいはい~。宝玉の力もありましたからねぇ~、次回からは宝玉の力抜きで頑張って貰いましょう♪」

「宜しい、ではこれにて今日の授業は終了とする!これから昼食、その以降は自由時間を設ける!生徒諸君は勉学に励むなり床につくなり今日一日好きにしたまえ!何か分からない事があれば教員に相談するように、以上だ!解散ッ!」

まるで怒涛のように現場を仕切り、解散の合図と共に生徒達は召喚したモンスターを連れて各自散り散りになった。

ネクトも、あっという間の出来事に少々呆然としていたが、こちらに近寄るグリーズ達でハッと我に戻った。

「御無事ですか、ネクト様!?」

「グリーズ、リシア、アオイ」

「あらあら、ご主人様のお仲間、つまり私達の先輩ですか?」

「先輩?あ、あぁそういうもんだが・・・」

「あらまぁ、あらまぁ♪見てゼブ。私達の先輩はこんなにもモフモフよぉ~♪」

「そうね、それからとっても強そう・・・♪」

そう言いながらグリーズの両腕にソッと巻きつくように抱きつく二人にグリーズは戸惑う。

「えっ!?あっ、えっ!?」

「あぁ、グリーズそういうのに慣れてないのか・・・とうっ。」

そう言いながらネクトもグリーズのお腹にもふっ!とダイブする。

「おぉぅ!?ネ、ネクト様!?」

「嗚呼~・・・確かにベルとゼブの言う通りだなぁ・・・すっげぇもふもふ・・・ヌイグルミみたいに気持ちいい~・・・」

ほんわかする三人を傍にグリーズは自分の腹部に抱きついてきたネクトに少し興奮していた。

「ネ、ネクト様!?その・・・ここ人前ですし、その・・・!?(うおおおおおおおおお!!!)」

「大変やなぁ・・・」

「ピィ・・・」

その様子に少し呆れてみるリシアとアオイだった。

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