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ステータス

「ううう・・・」

気力を振り絞り、何とか立ち上がって何とか椅子に戻る。

これはマウンティングと呼ばれるペットを飼い始めた時に、上下関係を叩き込む躾のたぐいなのではなかろうかとの考えに思い至り、身震いをしながら椅子に座った。


「・・・・・・・・・・話の続きをお願いします」


僕は数秒の沈黙の後、話の続きを聞かせて貰う事にした。


「もうよろしいのですか?」

「・・・・・・・・はい」

「・・・・では、まずROGでは地球人の誰であっても魔法を使用するジョブになる事は可能です。前衛でも条件を満たせば魔法スキルを取得する事は出来ます」

「えっ、そうなんですか? てっきり魔法使いになる才能とやらが無いと使えないのかと・・・」

「まぁ、キャラクター選定時に色々と条件はありますが、ステータスを満たしていれば魔法を使う事は出来ます」

「えっとそれなら・・・」


わざわざ童貞を連れて来る必要無いんじゃないの?


「まぁ、才を得て魔法職に就いた者と比べれば、ロクな威力も効果も期待できないという事です」

「えっと、才ってのは・・・」

「処女と童貞の事ですね」

「ぐは、やっぱり」

「男性の童貞は30歳になると魔法職に必要な能力が一気に跳ね上がりますが、女性の処女は10歳から魔法職に必要なステータスを得られます」

「えっ!? それじゃあ10代の少女の方が魔法職キャラクターとしては僕なんかよりも良さそうですけど・・・・?」


ゲームやマンガの世界では、聖職者や魔法使い的な役柄には可愛い10代少女がなるのが当たり前だしね。

こんなお腹の出た三十路のおっさんよりも見栄えもいいだろう。


「そうですね、見栄えや才能は10代の少女の方があるでしょう」

「でしたら・・・・」


僕のネガティブな発言をしようとするのを遮るように、神様は言葉を被せて来た。


「ですが、魔法に必要な知識や知力が足りないのです」

「知識と知力ですか?」

「分かり易く書いてみましょう、地球人女性・地球人男性を例にすると」


サラサラとペン立てからペンを取ると一息に書き上げた。

     魔法職  

一般女性  知識B+  魔力B+ マナB

一般男性  知識B+  魔力B  マナB

     魔法職(禁欲状態)

中学生女子 知識C+  魔力S マナA  

高校生女子 知識B+  魔力S マナA

大学生女子 知識A   魔力S マナA

 貴方   知識S   魔力S マナS

(知識基準、中学生C+、高校生B+、大学生A、専門職S)


「ゲームのシステムによって違いますが概ねこの程度の差が出ます」


神様の書いた表を見ると知識に極端な違いがみられる。


「これ、知識に随分と差がありますね」

「まず、魔法に必要なのは知力と魔力です。そして、知力とぱ精神力・学力・工学・物理・科学・自然科学等、それまでの人生で学んできた知識を総合し、知力のステータスとして反映されます」

「ああ、それだと人生経験が短い女子中学生は知力ステータスとして不利ですね」


剣と魔法の世界だと知識は武器になるだろうしなぁ、ムダに思える科目も異世界でなら全部役に立ちそうだし。


「知力はどんな教育を受けて来たかが色濃く反映されますね。ゲーム世界における現地人の魔法使いで地球人の高校生ぐらいの知識であると仮定したとしても、魔法職には若い事が不利にしか働かないのです」

「だから女子は避けたんですか」

「ええ、やはり圧倒的に知識と経験が足りないからです」


まぁ、そこは仕方ないだろうな。

魔力があっても知識が足りなければ意味が無いし。

頭の弱い魔法少女が通用するのはマンガの中の世界か・・・・


「男性の場合も魔力に関しては禁欲の修行で底上げされますが、魔力を生かす為の知識はそれまでの人生の積み重ねです」

「なるほど・・・」


神様の話には納得したが、ふとした疑問が湧き上がって来たので神様に聞いてみる事にした。


「・・・・えっと、ちなみに大卒30歳の処女の女性という場合だと色々ステータスが高くなったりするんでしょうか?」

「禁欲で30歳になると魔力のステータスが上がるのは男性だけです。女性の禁欲は10歳で条件を満たすので、わざわざ30歳の女性でプレイする神はいないでしょうね。それに大卒30処女は色々とこじらせているので、駒としては不向きという理由もありますが・・・・」


うっ、そういうもんなのか・・・

10歳も30歳もステータスが変わらないのであれば、体力の落ちた30歳の女性から始める意味は無いしな。

まぁ、神様の選定基準は判らないが、取り敢えずは納得した。


「しかしゲームの設定が随分と細かいんですね、一般的なRPGやMMOは魔力ぐらいしか反映されないのに」

「仮にアースボールという土塊を飛ばす攻撃魔法があると仮定しましょう。これを放つのに”術式作成・土塊生成・飛距離・高さ・風向き・味方の位置”これらを処理する為に必要なのが知識で、魔力の大きさでや威力や効果範囲が決まります。これらを総合した術式にして放つのが魔法の行使と考えて下さい」

「それは・・・10代少女に求めるのはなかなか厳しいですね」


マンガやアニメみたいに何となくで出来る訳では無いらしい。

恐らく、職人による専門職みたいな感じなんだろう。

どうやら僕が三十童貞社会人という経歴は神様の求める魔法職にはピッタリハマるみたいだ。


「僕自身の能力って全部ステータスに置き換えるとどうなるんでしょう?」

「そうですね、それにはまずゲームに参加して頂けるのか、最終的な確認をしないといけません」


神様は居住まいを正すと僕に向かって口上を述べる。


「私は優勝を目指してROGゲームに参加するつもりです。時には過酷な選択をするかもしれません、しかし貴方は私自ら優勝の為に時間をかけて探し出してきたPCプレイヤーキャラクターです。どの様な困難にも立ち向かう資質を備えていると信じています」


神様は椅子から立ち上がると、僕に向かって聞く。


「それでは問います。私プレイヤーのキャラクターとしてROG大会に参加して頂けませんか?」


状況は理解できた。

僕自身にあると言う魔法の才能を生かせる世界・・・、その世界に降り立つキャラクターとして神様が僕を選んだと言うならば、僕の答えはもう決まっている。


「はい、僕で良ければ」


まぁ、ゲームに興味があるというのが本音だ。一時はネット廃人になりかけたぐらいだし。

それに、自分の存在を必要とされた事の嬉しさもあったからだ。


「覚悟は決まった様ですね」

「ええ、元々ゲームは好きですし、元の世界にも未練は余りありませんので・・・」


そもそも僕が断って不参加になった場合、消去させられちゃうだけだなんだろうけどね。

実質僕には拒否権なんて物は無いっぽいが、ここは前向きに行こう。


「それではこちらに手を乗せて下さい、参加認証を済ませてしまいますので」


手の原寸大の絵と文字がびっしり書かれたプレートに手を乗せると青い光を放ってすぐに消えた。


「もう手をどけて貰って構いません、これで私からステータスへのアクセスも出来る様になりましたので一度モニターに映します」


神様がサッと左手を上げるとモニター(50インチ台の枠みたいな物)が現れ”MOGへようこそ”と表示されその後、RPG>MOG大会>参加登録済みキャラメイキングと経由して僕のステータスにたどり着いた。


 参加登録選手

キャラクター 未登録

プレイヤー  ♰赤い閃光♰

サーバー   銀河サーバー


ぐはっ、神様本当に名前”♰赤い閃光♰”だ。神様のこれ本当に実名なのか、キツいわー・・・

神様の名前に心の中でツッこんでいると、神様からの視線を感じた。


「何か?」

「ヒッ! ・・・いいえ! 何もありません!」


あぶなっ! ニヤけるの我慢できて良かったわー

ジロリと人を殺しそうな目で僕を睨む神様に、慌てて首を振って誤魔化した。


「え、えーっと・・・。あれーっ? 僕の名前未登録になってますね。どうしてでしょう?」

「こちらの世界に来た時に自分の名前は忘れてしまう仕様になってますので、新たに付けなくてはいけません」


そう言えばこっちに来てから名前呼ばれて無かったな。

ん? あ、本当だ?

記憶から辿ろうとしても自分の名前が思い出せない。

なるほど、そういう事か。


「無理に思い出しても良い事は何もありません。新しい名前を考えた方が良いですよ?」


うーん、咄嗟にいい名前なんて浮かばないんだよなぁ

暫く悩んでいると神様が何か思いついたらしい。


「では私が神託して差しあげます」

「はぁ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・来ました!☆ウニ軍艦☆でいきましょう!」

「いやいや、待って下さい。痛シリーズの枠に巻き込むのやめて下さい!あっ、ちょっと!☆まで付けて、ダメですってば! 現地で名乗れない名前は止めて下さい!」

「痛シリーズ?」


やべっ!

僕は神様から目を逸らしてトポケてみた。


「いえ、何も言ってませんよ」


神様が僕を睨みながら名前を入力してゆく。

空欄だった僕の名前の欄が『☆ウニ軍艦☆』に切り替わった。


「ちょっ! ☆が声に出して読めませんよ!」

「フフフ・・・・あなたもこれで痛シリーズ入りです」

「ひいっ、すいません!」


見逃して貰えなかったか。

しかし『☆ウニ軍艦☆』はないわー

これ、現地の人は読めないでしょうに・・・・

あっ!


「これ、神様が憑依して行動する時に呼ばれる名前でもありますよね? 神様もこの名前じゃ色々大変じゃないですか?」

「くっ・・・・」


現地の一般人NPCに変に思われるからと土下座の説得をし、とっさに思いついた東京都の用紙記入例で有名な”東京太郎”で何とか許して貰えた。

痛シリーズと言って怒らせてしまった所為で、普通の名前すら許して貰えなくなったらしい。


僕には今までの名前は既に記憶に無いので、これからは東京太郎として生きて行く事になったという事でもある。

微妙な名前だなぁ・・・・

やれやれ、気を取り直して別の事を確認しよう。


「神様、ステータス画面へ行きましょう」

「ええ、そうですね」


東京太郎

ステータス

体力   気力   精神力マナ

1000   500    2000


「この数字で初期は殆ど変わらないでしょう。年齢やジョブを考慮すればマナとも呼ばれる精神力だけは伸びるかもしれませんが」

「このマナというのはゲームで言う所のMPというヤツでしょうか?」

「便宜上、精神力と言っていますが、MPもマナも同一の物です」


そうか、どっかのゲームで勇者が旅立ちの村を出た時にHP20とか見た事あるな。

ラスボス前ではHP1000ぐらいだったけ、だとするとレベルアップの概念が無いゲームなのかな?

精神力ってのがMPって事であれば、MPはかなり多いみたいだ。

神様が次の画面へ送る。


スキル潜在能力一覧

体力 筋力 敏捷 動体視力 反応 持久力 気力

C  C  C   B+   C   C  C


「動体視力がかろうじてBで残り全部Cですか・・・」

ほぼ平均値・・・・体力系は正直どうでもいいや。

まぁ、格ゲーやったりしてたから、かろうじて動体視力がB+を取れたのかも。

神様が次の画面へ送る。


精神力 魔力 理論 工学 科学 物理 自然

 A  S  S  S  S  S  S 


「うわ、何だこりゃ。Sだらけ」


神様は満足そうに頷くとステータスの要因を教えてくれた。


「太郎は工学系の大学まで出てエンジニアになっていますからね。それまでに得た知識がステータスに反映されただけです」


ん? 太郎って・・・僕か!

呼ばれても気が付かなかったよ、慣れるまでは反応が遅れそうだな。


「だからって評価し過ぎではありませんか?」

「いいえ、もしMOGのゲーム内で自力で学んでもSは取れません。文明の成長度の差が簡単に数値に現れるのです」


神様はステータスを次のページに進める。


信仰 道徳 倫理 モラル

D  B  A   A


「ええと、神様の前でこんな事を言うのも何ですが、僕には信仰心はありません。お盆に仕事は休むしクリスマスも祝いますが、神様に祈ったのなんてお腹を壊した時ぐらいでしたから」

「別に信仰心なんて物はあまり必要ありません、せいぜい僧侶系のスキルの習得が楽になるぐらいです。特に魔法系に必要なステータスではありません」


それって神様が言うセリフでは無い気はするが・・・

まぁ、ゲーム上必要ないのであればいいか。


「平和だったからですかね? 倫理とモラルがAなのは」

「日本人は平和な国ですから仕方が無いでしょう。それにマンガやアニメーションの規制の所為で、倫理やモラルのバランスが著しく崩れています。ゲーム内では注意して下さい」

「それって、どういう場合の事ですか?」

「ゲーム内では人間を相手に魔法を行使する事もありますし、現地の人間に襲われて殺されそうになる事もあるでしょう」

「うっ、そうなんですか」

「そうなった時に、日本の常識は通用しません」

「何が駄目なんでしょうか?」

「犯罪者は改心なんてしませんし、情けをかけてもすぐに忘れるからです」

「捕まえた犯罪者を逃がせば、別の場所で同じことをするって事ですかね?」

「どの様な世界が舞台かにもよりますが、犯罪者には厳しい対処をしなくてはいけないでしょうね」

「逃がしてやったら仲間になったり、後で助けてくれたりするかもしれませんよ?」

「その様な考えでいれば、すぐに殺されます。その考えは捨てて下さい」


ま、僕も日本のマンガやアニメで育っているので、自分の・・・いや日本人の倫理観がおかしいのは何となく理解をしている。

日本のマンガやアニメでは敵ですら殺さないのに、ハリウッド映画のヒーローはバンバン敵を殺す。

安全な文化に浸っているから、日本人は感覚がマヒしていると言いたいのだろう。

これから行く世界は犯罪率が極めて高いに違いない、気を付けよう。


「努力します・・・」


神様はこちらをチラリと見てさらに何か言いたそうにしていたが、それ以上は言わなかった。

神様はステータス画面から出て習得済魔法のページへと画面を進めた。


「何も無し、そりゃそうか」


僕のボヤキも終わらない内に習得済魔法のページから所持スキル一覧に移動した。

だがこちらも何も無し。


「スキルは実際に行動を行えば自動的に増えて行きます。剣を一振りでもすればスキルレベル0でこちらの一覧に掲載されるでしょう」


習得可能スキル 128個 スキルP1500


「あれ?スキルポイントっていうのが最初から結構ありますね」

「元々与えられるポイントと予約購入特典のポイントの合計ですね。他にもオープン1日前からログイン権等も付いてます」

「地球にあったのゲームの購入システムと似てるんですね」


どうやらスキルや魔法はポイントと交換して習得するシステムらしい。

ゲーム中はこのスキルPが溜まって行くのかな。

一つ一つスキルを無言で吟味していく神様。


「習得出来るスキルは沢山ありますね」

「クラスに直結するスキルを選択すると、そのスキルが使えるクラスに職業が固定されます」


なるほど、忍術スキルを選んだら職業は忍者に固定される、みたいな事か。

忍術スキルを選択した時点で、職業が忍者以外選べなくなるみたいな職業直結のスキルがあるって事らしい。


「このスキルもレベルは0からなんですか?」

「クラス選択に繋がるスキルはスキルのレベルが最初から最大になっています。スキルを使い込む事でスキルPが溜まり、より上位スキルを覚える事が可能になるのです」


ゲームはキャラメイキングの時が一番好きかもしれない。

ルーレットみたいにステータス数値が毎回変わるゲームが昔は結構あって、まる一日良いステータス数字が出るまでずっと振っていたことがあったのを思い出した。


128種類もスキルがあると、変な特技とかオリジナル物も沢山あり目移りしてしまう。

剣技や特技、変わった物では悪食(お腹を壊しにくくなる)とか。

などと一覧を眺めていると突然画面に選択画面が現れた。


リターンを習得しますか

     →はい/いいえ


僕が選択肢だと気づく前にカーソルが移動した。


     →はい


習得可能スキル 127個 スキルP0


「えぇぇーーーーっ!何をやったんですか神様!?スキル一つでポイント0になってますよ!?」






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