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呪われ少女のロッテ  作者: 雪希悠斗
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幸せを掴むために

 授業が終わり、私は担任であるアルバート先生に呼び止められた。

 アルバート先生はとても優しい先生で、授業が分からない子の為に勉強会を開く様な人だ。

 艶めく茶の髪を後ろで束ね。翡翠の色にも似た綺麗な瞳をしている。目尻が垂れ泣き黒子がある先生で、平凡で親しみのある顔をしている。先生の目は精霊の加護を受けていている特別な証なので平凡に見えても実は凄い人なの。翡翠は風の精霊の色、だからか先生の回りには時々爽やかな風が吹く。

「ロッテ君、学園長がお呼びだったよ」

 笑顔で告げる先生は優しくて、授業に身が入らなかったことには触れなかった。

「先生ありがとうございます」

 言伝てのことも、授業のことも、全てを含めた感謝の言葉を込めてお辞儀をした。


 呪われてるなら必ず呪いを解くことができる筈、私は呪いと向き合うことを決めた。呪いのことをレイスさんに話す勇気はまだない。この気持ちが折れないうちは、一人で解決したいと思っているから。


 レイスさんの工房の戸をコンコンとノックすると、中から入ってくれと言われ、失礼しますとそろりと戸を開けて中に入った。レイスさんは研究の真っ只中で私も急いで手伝いをする。


 レイスさんの工房は、こじんまりしていて、そこらじゅうに魔法書が積み上げられている。そして重厚な木の机にはビーカーやフラスコなど薬を作る道具が置かれ、魔方陣の描かれた紙からは精霊が姿を現している。窓辺には魔法植物の鉢植えが置かれていて、実験メモを羽根ペンで書き込み貼り付けている。

 一見埃まみれになりそうな部屋だけど、風の精霊が部屋を綺麗にしてるから大丈夫なんだって。


 レイスさんはスポイトで試験管の中に一滴魔法でできた薬を落とす。すると、ぽんと音をたて試験管から紫色の淡い煙りが輪になって出てきて、それは甘くてけど苦い不思議な匂いをしていた。


「レイスさん、新薬の開発ですか」

「そうだよ。失敗してしまったけどね」

 レイスさんは眉を下げ息を付く。

「今度の特効薬は上手くいくと思ったんだけどな。ダメだったみたいだ」

 レイスさんは私の頭を優しく撫でてくれて、それが嬉しくて私の目が細くなる。


 もう片付けて帰ろうか。と、レイスさんは笑いかけ私の手を取ると、さっさと工房を出て歩きだした。

 手をつなぐなんていつものことなのになぜか心がざわついた。

 それは多分私の呪いでレイスさんが居なくなってしまうかもと考えたから。

 お願い呪いよ。私から大切な人を奪わないで、私の胸は締め付けられたのだった。


 それからは呪いとの格闘だった。ありとあらゆる文献を読む毎日は必死で、それは時を忘れてしまう程だった。だから色々な人に心配をかけてしまった。


「どこにもないわ」

 本を膝の上に置いて私ははぁとため息をつく。どうしたらいいのかも分からず、図書室の窓から空を眺めぽつりと呟く。

「本当は呪いなんてないのかな」

 凹みそうで勘違いであって欲しいと思ってしまう。でも楽観的に考えちゃダメだと自分を戒めた。

 ふと目についた文献に目を止める。

「真実の鏡、満月の日に写した者の真の姿が見えるか。これが本当なら私の呪いが分かるかもしれない。満月の夜に真実の鏡を見るしかない」

 今日は偶然満月の夜だ。夜中にこっそり学園の旧校舎に行こう。そして月夜に照らされた鏡を見に行かなきゃ。

 ただその為には家の者、特にレイスさんに見つからないようにしなくちゃいけない。

 窓からこっそりホウキで出かけるしか思い付かないけど、やるだけやって見るしかない。

 決行は今夜、私はいつもより早くに家に向かうと直ぐに眠りについたのだった。

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