サバイバル部、全員集合
翌日もいつも通り学校に通う。
居住区内に魔獣が現れたことはちょっとしたニュースにはなったが、それでも社会は回るのだ。
皆真面目だ。こんな時には少しくらい休めばいいのに。
「おはよう、巽君。それより聞いた?昨日居住区内に魔獣が出たって」
教室に入ると、クラスメイト兼部活メイトな支倉沙耶が話しかけてきた。
「あぁうん。てかお前今日は学校来たんか。良き事よ」
何気なく言った言葉であったが、一瞬沙耶の顔が曇る。
ミスった。
魔獣が出て以降、沙耶はあまり学校に来なくなった。
もっとも、最近はそのような学生は沢山いる。
理由は様々。
学校に行くのは危険と親に言われた者、外を出歩くのが怖くなった者、休む大義名分が出来たからとこれ幸いと休む者、etc......。
これらはまだ軽い方。
もっと深刻な理由だっていくらでも考えられる。
だからこそこのご時世、人に休む理由など聞くべきでは無かった。
「......悪かった。ちょっと無神経だった」
「いやいや、別に大したことじゃないから、気にしないで」
そう言う沙耶の表情はいつもと変わらない笑顔で、少し安心した。
「ただ、休んでた分のノート見せてほしいな。それでチャラってことでさ」
「その位なら喜んで見せてやろう」
沙耶が椅子をもってこちらにやってくる。
そうして一つの机を挟んで向き合う形になる。
近い。
ドキドキする。
このイベント、どちらかと言うと俺へのご褒美になっていた。
そんなこんなでドキドキしながら過ごすこと数十分、授業始業の時間はとっくに過ぎても、生徒は半分も集まらない。
今日は教師も来ない。
これは中々珍しい。
授業開始予定から三十分経過したところで、担任の教師がやってきた。
「今日は先生があまり来なかったので、このクラスは休みにします。ということで、今日は解散して結構ですよ」
突然の休校。
珍しいが、たまにあることだ。
こんな感じで、最近の学校運営は結構適当である
その分生徒は自由だ。自由万歳。
「さて、どうしよう?」
ちょうどノートを写し終わったらしい沙耶に声をかけてみた。
「どうしようねぇ。暇になっちゃったよ」
「何すっかねぇ......」
自由とは与えられてみると意外と困ったりもする。
やることない者は特に。
さてどうしようか......。
「......部活でも行くか」
まだ時間は早いが、もしかしたらもう他の人もいるかもしれない。
沙耶と共に部室へ向かうことにした。
果たして、その予想は大的中であった。
麻子部長、美樹の二人は既に部室にたむろっていた。
「あ、巽センパイだ。お疲れ様です。あれ、沙耶センパイもいる。お久しぶりです」
「美樹ちゃんたちも休校になったの? 久しぶりだね」
こうして部室には4人。
ほぼ全員揃った。
ただ残り一人、氷川雄二だけは不在なままである。
「部長、雄二は」
「今日はまだ連絡は来ていないわ」
「......雄二センパイ、大丈夫かなぁ。昨日魔獣が近くで出たって話だし......」
美樹が不安を口にする。
どうやら魔獣事件が世間に与えた衝撃は思ったより大きいようだ。
だからこそ、俺は一つの提案があった。
「皆、聞いてくれ。一つ提案が......」
その時、部室の扉がガラッと開いた。
「全くついてない。俺の教室だけ授業があるなど......」
そこにいたのは五人目。
氷川雄二だった。
「雄二センパイ今日は来てたんですね。お疲れさまです」
「あぁ。皆久しぶりだな」
俺の提案は雄二の登場によりあえなく遮られた。
だがまぁいい。俺も奴には聞きたいことがある。
「お前は何をやってたんだ?」
結局休んでた理由を聞いていた。
先程の反省は何処へ。
まあこいつのことだし大して深刻な問題でもなさそうだからいいけど。
「なに、ちょっと散歩にはまっていてな」
「散歩?」
「あぁ。居住区の外に出てみたりしていた」
「は?」
馬鹿だ。
居住区外は魔獣で溢れている。
そんな中に出歩くなど、ただの自殺行為だ。
美樹も沙耶もポカンと口を開けている。
麻子部長は悩ましげに頭を抱えていた。
「お前アホか。死ぬぞ。それに居住区の周りは軍が警備しているはずだけど」
「そこが一番苦労した......」
そこから雄二は、いかに軍の警備を突破するのが大変だったかについて力説した。
だがぶっちゃけそこは興味は無い。
「なんでそんなこと......」
俺の一番の疑問を沙耶が聞いてくれた。
「調査さ」
「調査?」
ピンとこない。
「なぜ世界は変わったか、気になるじゃないか」
「それで、何か分かったのかしら」
麻子部長が尋ねるが、雄二は首を横に振った。
「何も。ただし、俺が”魔法”を使えるのは分かった」
雄二は過去最高のドヤ顔を見せた。
確かに衝撃的な内容だった。
しかし、場に広がったのは、衝撃より困惑の空気だった。
「雄二君"も"魔法が使えるようになったの?」
戸惑いながらも沙耶が雄二に尋ねた。
雄二君も、だと......。
それではまさか......。
「私もなんか使えちゃうんだよねぇ......」
「私もです」
「......私も。まさか皆使えるなんてね......」
oh......。なんてことだ。
この部活は魔法使いの集まりだったようだ。




