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魔法転生 転生したら魔法だった  作者: かゆゆゆゆる
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第一話 魔法に転生

 そのトラックは突然にやってきた。

 下校途中――。俺は気づけば近くにいた女性を突き飛ばした。

 何やってんだ俺。そう自分に対して思ったね。

 女の子にかっこいいところを見せたい男としての意地のようなものでもあったのかもしれない。

 女の子は俺の突き飛ばしによってトラックの軌道から逃れ。

 だが、俺は強い当たりによって身体が吹き飛ぶ。人間とは思えないようなバウンドを見せ、俺はアスファルトに叩きつけられる。

 視界があるだけマシなのかもしれない。下半身はちぎれたような激痛に見舞われている。

 ああ、たぶん死ぬんだろうな。頭が自分でも驚くほどに冷静な判断を下した。


「きゃぁぁぁ!」


 女性の悲鳴が遅れて聞こえる。助かったみたいだな。俺が生きていればむふふな展開もあったかもしれないが……さすがに無理そう。


「……ひっ!」

 

 トラックの運転手が俺を見て短く悲鳴をあげる。そんな醜くなってるの俺?

 人通りこそ少ないが、事件が起きればすぐに人はやってくる。なんだなんだとわらわら集まってくる人々。興味本位で見て後悔の悲鳴をあげるもの。

 しかし、みなが悲鳴をあげるだけでなかなか適切な対処をしてくれない。

 おーい、誰か救急車呼んでくれよ……。

 なんてもう助かる可能性がないのはわかっている。

 ここにいる人たちはこの事件を面白おかしく友人に伝えていくのだろう。

 まあ、話のたねになるのならいいか。どうせ数日で忘れ去られる小さな町の小さな事故だ。

 随分と能天気に俺は目を閉じる。

 薄れゆく意識のなか、大したことのない人生だったなぁと目を閉じた。



 ○



「ありがとうございました!」


 店主はそういって頭をさげる。かごに入れられている俺はその様を棚から眺めていた。店主の禿散らかった頭がよく見える。

 この店は魔法屋だ。この世界の魔法とは契約して獲得するものだそうで、俺はその契約を待つ魔法なのだ。

 俺はトラックにひかれたのに意識がある。たぶん、魔法に転生したのだ。せめて人間がよかったよ。

 新たな客がやってきて、別の魔法が買われていく様を見届ける。そんな生活がもう三日くらい続いている。

 ……さすがに飽きた俺は、隣のかごに入れられている魔法を見る。

 青い人魂の形をしている。俺の体もきっとこのような形をしているのだろう。色は白だが。


『おい』


 と声をかけると、青色魔法は俺のほうを見て、 


『かgrごいあgkなb』


 な、なんて?

 さっぱり意味がわからず、俺はがくりとうなだれる。

 会話が通じる相手などこの店には一人もいない。そもそも魔法相手であるので、一人という数え方もおかしいだろう。

 この店にある魔法はどれも似たような反応だ。つまり、俺のような思考があるほうが特殊、異常なのだろう。

 窓からさす日もだんだんと薄暗くなり、魔石による証明が店内を照らす。

 今日も無駄に一日が過ぎていったな。

 明日も、明後日も……いったいいつになったら、この生活は終わるのか。

 やることもなくじっと一日を過ごすよりかは、学校に行っていたほうがまだよかったな。

 などと俺の愚痴でも聞こえたのか、むんずと店主にかごごとつかまれる。


「……やっぱり、こんな弱い魔法の契約者なんていねぇよな!」


 叫び、店主はかごごと鞄にしまう。

 おいおい、いったいどこにつれていくつもりだ。真っ暗闇で揺らされるのは非常に心が不安になっていく。

 カブトムシとか虫かごに入れてぶんぶん振り回した幼少期を思い出し、少し反省。

 としばらく揺れに任していると、やがて鞄から出される。


「おら、さっさとどっかにいけよ。くそ魔法が!」

 

 作ったのお前だろ? という言葉を放つが、もちろん聞こえるはずもない。

 俺はどこかの大地へかごから出される。

 店主は周囲を見回してさっさとかごをしまって逃げだす。

 その姿はまるで、泥棒のようである。

 俺はしばらくぷかぷかと浮かんでいると、狼の姿を発見した。画像で見たことはあるが生は初めてだ。

 狼は俺を見つけると駆け出してくる。こうしてはいられないと、あわてて俺は逃げ出す。

 俺は前世と同じくらいの高さでぷかぷかと浮いて徘徊していく。これより上には飛べないな。

 空を飛ぶというのは慣れないのだが楽しい部分もある。行きたい方向に念じると体がそちらに動いてくれるのだ。

 なるべく魔物に見つからないよう移動していると冒険者を見つける。

 この世界では魔物と戦う人々を冒険者と呼ぶらしい。

 現在の俺は野良魔法だ。野良の魔法は処分対象である。慌てて逃げようとしたが、冒険者と目が合う。

 あ、俺の人生終わったと思ったら、


「魔物だ、集中してっ!」


 女性のみで構成されたパーティーはそういって、俺に目をくれずウルフと戦いを始める。

 ……いや、確かに俺の存在よりもウルフと戦うほうが大事だろうけど、どういうことだ? 

 女性たちの前をぷかぷか浮いてみるが、彼女たちが文句をつけることはない。

 そういえば、思い出した。

 現在の俺は最弱な魔法であり、たぶん人に見えるほどの魔力もないのだろう。濃い魔力は人の目にも見えるという話を聞いたことがある。

 店主が持っていたかごは、魔法を視覚できるようにする魔道具だ。

 これならば、緊急で死の危険はないだろう。魔物は人よりも魔力に過敏であるため狙われるが……それは気をつけていればどうにかなるはずだ。

 ウルフを倒した女性たちをストーカーしていると、国の管理する迷宮であることがわかる。

 ……なるほどな。

 広大な大地はまるで外であるかのように思えるが、天井はある。魔石のおかげで夜であろう今の時間帯でも非常に明るい。


 ずっといると時間の感覚がおかしくなりそうだ。

 冒険者たちが地下二階層へと降りていってしまったため、俺はそこで彼女たちと別れる。

 これからどうしようか。

 俺としては人間になって、世界を旅してまわってハーレムでも作りたいのだが……この体じゃ無理だしな。

 ……いや、不可能ではないか。


 この世界では魔法と契約することで、初めて魔法を使用できるのだ。

 つまりだ、俺が成長さえすれば美少女に契約してもらえるかもしれない。

 優秀な魔法となれば、契約したいという女性が増えるかもしれない。複数と契約する手段は知らないが、俺を求めてくれるなんて嬉しい状況だ。


 決まりだな。

 俺はこの迷宮で強い魔法になって、誰か美少女に契約をしてもらう。

 それを目標に生き抜くしかない。

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