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龍は眠らず  作者: 讃嘆若人
第二章 朱雀ホテル事件
7/23

小氷期

※一部、設定変更(8月19日)

2026年11月20日、金曜日、早朝。


眠たい中、樹依莉は決死の覚悟で布団から抜け出す。


今の世界は、小氷期なのだという。樹依莉にはそういう、難しいことは分からないが、父と兄が、「本当に小氷期だったら、もっと寒くなっていないとおかしいよな。」「みんなが気付いていない間に、地球温暖化は進行しているな。」というようなことを話していたのを、覚えている。


「地球温暖化」など、樹依莉は聞いたことがない。兄が『京都議定書』云々を語っていたが、なんのことか、理解できなかった。


ほんの十五年ほど前まで、人々は地球温暖化で騒いでいたのだという。地球が熱くなることを、温暖化というらしい。


それを聞いた樹依莉は、父に対して、「それなら、今は地球は寒くなっているから、温暖化になってくれたらちょうどいいんだね」と言った。その時の、父の無言の表情は、樹依莉の記憶からは消えることはないだろう。


今日に学校に行くと、あとは三連休である。樹依莉は、もう、明日の事を考えていたのだ。


今日の夕方に、兄の弘樹が朱雀市へ行く。渡橋幸樹の結婚式に行くためだ。


「釣樹依莉!」


ふと、弘樹の声がした。


「え?」


「あ、いや、前、樹依莉と釣りに行く約束をしていたでしょ、なんで、樹依莉が釣りに行きたくなったのか、よくわからないけど、その約束が、守れなくなったなあ、って」


「ああ、そのことか。それなら、なんで、私もお兄ちゃんにそんなことを言ったのか、理解できないぐらいだから、別にいいよ。」


そういって、樹依莉は、微笑んだ。






岡本先生は、昨日は寝れなかった。


宿題の採点に追われていたこともある。岡本は、特に日記については、積極的に、細かいところまでコメントしてあげる、熱心な教師であった。


よし!今日は宿題なしにしてあげよう!


そうすれば、子供たちも喜ぶに違いない。


岡本には、恐れていることがあった。


最近、家の周りに怪しい車が止まっていた。


教育局にその車のナンバープレートを調べてもらうと、今日の朝、それが、白鳳県警特別捜査部の車であることが判明した。


『岡本、お前、何をしたんだ!!』


受話器の方から、教育局の知り合いの職員が、驚いた様子で言ってくる。


「そんなことをいわれましても・・・・・」


「特別捜査部」とは、検察特捜部をモデルに作られた、白鳳県警独特の部署である。


この組織は、戦前の特別高等警察を思わせる部隊であると、一部でささやかれていた。


この時代、国民党の政策により、『日本国憲法』は大幅に改正されていた。


第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。


警察の権力を弱らせてきたこの条項も、改正されていた。


第三十四条 何人も、正当な理由がなく、若しくは理由を直ちに告げられることなく、又は直ちに弁護人に依頼する権利を与えられることなく、抑留され、又は拘禁されない。


この改正により、「直ちに弁護人に依頼する権利」も、正当な理由があれば、与える必要がない、という風に解釈されることとなった。


この憲法改正によって、警察の捜査能力は、大幅に上昇した。


今や、警察は「市民の味方」ではなく、「市民の敵」と化していた。


そこに、岡本が睨まれているとは、どういうことだろうか?


もしかして、春風が何かやらかした?


実は、昨日眠れなかった理由の一つには、春風家の家庭の事情が気になったことがある。


一体、あの家はどうなっているんだろうか?

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