担任にとっての樹依莉
2026年11月18日、柚木小学校。
「春風さん、この問題なら、わかりますか?」
柚木小学校の教師で、四年三組の担任である岡本彰浩は、自分の担当のクラスの中で一番の美少女である、春風樹依莉を指名した。
「台形の面積の問題です。上の辺の長さが5、下の辺が長さが6、高さが7の台形の面積は、いくらでしょうか?」
そういいながら、岡本は、台形の図を黒板に書いた。
「ええと、上の辺が5センチ・・・・・」
よしよし、この美少女をちょっと弄ってやれ!
岡本は、あえて、いつも勉強をしていない、樹依莉に細かい突込みをしてやった。
「春風さん、もう、その時点で、間違えています。」
「え?」
「いいですか、算数の問題では、全ての数字に単位がついているわけではありませんよ。勝手に単位を付けると、減点されます。」
こんな説明で、理解できる樹依莉ではない。
しかし、とりあえず、単位を付けずに、計算をしてみた。
こんな問題、暗算でできる。
「15×7で、75です」
お見事!二重に間違えるとは、さすがwwwww
いや、ここで笑ってしまうと、教え子の樹依莉が可哀そうだ。
だけど、うん?もう、手遅れなんじゃないのか、この美少女!
気が付くと、教室中が爆笑に包まれていた。
あ~あ、樹依莉が恥ずかしそうに立っている。
岡本は、さすがに、同情してしまった。
みんなが春風に注目する中で、岡本は言った。
「春風、どうして、15に7をかけると75になるのかな?」
樹依莉は、顔を赤らめながら、筆算をしてみた。
「あっ!わかりました、答えは105です!」
ちょっと、弄りすぎたかな?
もう、笑いを止められない!!
「残念!不正解!」
岡本は、吹き出しそうになるのを、こらえながら言った。
教室の生徒は、みんな、例外なく笑ってしまっていた。
「おい!高田!お前、そんなに笑っているけど、どこが間違っているのか、わかるのか?」
あまり春風だけをいじめると可哀そうだ。岡本が、明らかに、つられて大爆笑しているやんちゃ坊主の高田を指名すると、元気な返事が返ってきた。
「わかりません!だって、春風さん、全然、公式と違う計算をしているもん!」
笑い声が、一段と大きくなってしまった・・・・・・。
さて、どうしたものだろうか?
岡本は、幕引きに困ってしまった。