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賢者の石

通信機付け忘れの件で、ゴン爺さんに焼肉食べ放題を奢ってもらった。


腹いっぱいになってゴン爺さんの家に帰り、

あてがわれた客間でベッドに寝転がる。

リナも、別の部屋で休んでいる。

疲れているのだが、何かが引っかかってどうも寝付けない。


「賢者の石」は、コマンド処理で必要不可欠な触媒。

異星人の宇宙船から発見された、固体とも液体ともいえない赤黒い結晶だ。

軍事機密どころか、その存在もコマンドを使うのに必要 ってことも、

きょうび、子供でも知っている。


「電気信号でコマンドを賢者の石に入力すると、

 賢者の石は入力されたコマンドを実現させる……」

小学校の教科書にも書いてある。


リリスの行った多重コピーは、見た目は派手だがやってることは『copy』である。

地球上では重力があるので、あれほど大掛かりに増やせないだけのこと。

何故、それが軍事機密と言われるまでになるのだろうか?

そういう「戦術」がある ということを秘密にしたいのか?

なんとなく気になってしまい、寝付けなかった。


賢者の石をネットで調べると、コマンド絡みの情報が大量に出てきた。

150年ほど前から「賢者の石」といえば、コマンドに使われる触媒のことを指すようになった。

それ以前の「賢者の石」は、不老不死や無限の力を与える伝説の存在を指す。

一方で、コマンドに使われる触媒は、300年前のコマンド発表当初の論文だと

「エネルギー結晶」という、身もふたもない呼ばれ方だった。


また、何かが引っかかる。

どうして、150年前から「賢者の石」などと呼ばれるようになったのだろう。

コマンドは決して万能ではない。

初期の『move』は座標の登録ミスで、何度も事故を起こしたと聞いている。

『copy』にいたっては、不老不死以前に、人間をコピーすることが出来ない。


悩んでいるうちに、いつの間にか、眠ってしまった。



■夢

誰かが、叫んでいる。

「どうして!どうして、私たちだけ、こんな目にあわなければならないの!?」

リナが叫んでいる。

赤い髪は泥だらけ。顔には涙の跡があり、たくさんの煤がついている。

周囲は、廃墟と化したような建物が立ち並ぶ。

リナは何人もの宇宙服を着こんだ人間に囲まれ、銃を突き付けられている。

骨董品のような古いデザインの宇宙服には、国連軍のマークが光る。

彼らは、何人かの人間を囚人のように連れて何処かに連行しようとしている。

その中から、手錠を何重にもかけられた一人の女性がリナに歩み寄って来た。

「私は、ユニックス。私も、あなたと同じ。生き残ることができた」

「でも、でも、お父さんもお母さんも、みんな、みんな……」

リナが、ユニックスの腕の中で泣き崩れる。

ふと周囲を見渡すと、たくさんの肉の塊が蠢いている。



翌朝。リナにひとつの事を尋ねてみた。

「なぁ、リナ。ユニックス って名前しってるか?」

「う~ん」

リナは、腕を組んで真剣に考え込む。

「なんか、聞いたような気がする。童話とか、有名なお話に出てくる人?」

「いや、いいんだ」


150年前。

それは、地球が複製された年だ。

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