双方の幕間
■
数人の男女が円形のテーブルを囲んでいる。
「僕らのIEを使ってくれるなんて、うれしいネ」
青い短髪の男が、脚を組み替えながら発言する。
「ですが、ゴドウィン様。このままですと、奴らはもっと食い込んできますよ」
黒いビジネススーツをびしりと着こなした女性が応じる。
「けけっ。お前にはもう関係ないだろ、エクリシア」
パンクロッカー風の、革ジャンを来た男がちゃかす。
エクリシアと呼ばれた女性は、無表情に彼を見つめる。
「私もあなたと同じ ね。九丈」
二人の間に、無言の火花が散る。
「じゃ、じゃあ、私が行ってきましょうか?」
割り込むように、眼鏡をかけた真面目そうな女性が立ち上がる。
「いいわ、ナナセ。まだ戦闘になると決まったわけじゃ無いもの。
一度、話をしてきても良いでしょうか?ゴドウィン様」
ゴドウィンと呼ばれた、青い髪の男性は、少し考えてから決断する。
「僕は、今はクルミの事でいっぱいいっぱい。
適当に時間稼ぎが出来ればいいヨ」
「はい、わかりました」
「はーい!」
今まで無言でやり取りを見ていた、白と青のロリータ服の少女が手を上げる。
「あたしも行っていいかな?ゴドウィン」
「ミィがやる気になるなんて珍しいネ。いいヨ」
■
「木星を見るのは飽きましたか?」
ぐだるようにごろ寝をしていた女性に、彼女の上司からの通信が入る。
窓からは、太陽系最大の惑星、木星が縞模様をくゆらせているのが見える。
「いえいえ、そんなことは~ないですよ。もう、ここ最高です。
なーんにもしなくてもいいんですから」
伸び放題の黒髪に隠れ、彼女の表情は見えない。
「ふふ、あなたらしいですね。ソラリス」
「そりゃ、アタイはそういう産まれですからねぇ」
「すみませんが、地球圏に戻ってもらう必要があります。
セントがリナックスと戦闘し、かなりのダメージを受けたようです」
「あちゃ~。アイツ、リナが絡むと頭に血が上るから」
「えぇ、リナックスの探索と回収は、フェドラにお願いしていたのですが、
セントの方が先に出会ってしまったようです」
「で、アタイは何をすれば?仕事は一回にいっこだけですよ」
「セントを回収してきてください」
「らじゃ~。ユニックス司令」
ソラリスは、通信が切れた後も、しばらく寝っ転がって木星を見つめる。
「は~、全くもう。フェドラの事だから、ガチ迷子になってるんだろうなぁ」
よっこいしょ と掛け声をかけて立ち上がる。
向かうのは、久方ぶりの地球圏。
■
「神よ。世界の、迷える子羊たちをお導きください。
ついでに、私たちもお導きください」
純白の服を着た女性が宇宙船の床に跪き、熱心に祈りを捧げる。
すっぽりと被った白いベールで、彼女の表情は見えない。
「アレ、どう見ても火星じゃないですか?」
宇宙船の窓からは、赤い惑星が見える。
「神父さま。神は、我々に試練を与えているのです
彼女に会うためには、この道を通る必要があったのです」
神父は、そんなわけねーだろ と言いたいのを我慢する。
伊達に聖職者をやっているわけでは無い。
「フェドラさん、次はちゃんと『move』してくださいよ」
「神父さま。私は、まだ、本当の信仰(faith)に辿り着いては居ません。
Fを冠する資格が無いのです。エルドラ とお呼びください」
faith(信仰)のエルドラ。
その信念は、硬い。
次話「クライムリリス」
2人目のヒロイン登場です。
ミィは、「Me」でなくて「3.1」です。