ニンゲンって残酷
ニンゲンって残酷
交差点。
歩く人間達の手前、一人の少年、はうめき声を上げて何かを言っている。
「・・・・けて」
・・・・けて。さて、これは何か暗号なのだろうか。なんていう意地悪な解答よして、少年、は救いの手を望んでいる。
「助けて」
確かにそう言った。
けれど、人々はことごとく無視という選択枝を使って少年の乞いを無駄に終らす。
「な、なんで・・・・」
さて、なんでだろうな。俺も理解できないよ。
しかし。それが、ニンゲン、だからとでも言っておこうか。
「た、助けてくれよ!!」
叫んでいる少年。
真ん中の道路に存在している少年の下半身はまったく動かない様子で血があふれ出ている。先ほど、女、にナイフで刺されたところが運悪く神経に傷を付けてしまったのだろう、まったく神様は惨いことをしてくれる。
最悪だな、少年。
「はッは」
俺は笑って信号機を通り過ごし少年の側まで近寄る。
おやおや。
「・・・・誰かあああああああ、助けてくれー!!」
なんて、情けない声を出していやがる
「・・・・・・痛ッ。・・・痛い痛い。ゆ、許せねえ。殺してやる。ぶっ殺してやる。俺の足を傷つけやがて、許させねええええ!! 女あああああ!!!!」
倒れている少年の側まで来た俺は鞄から人形を取り出した。
本物とは違うけれど、しかし最後の見届け人としては少年も本望だろう。
「はッは」
俺は笑い、少年の真正面に立つ。
「・・・・あ、アンタ、助けてくれええ!」
「すまんがそれはできない相談だ。が、お前の大好きな人間、まあ、人形だけれど置いといてやろう」
倒れている少年の横に人形を立てた。
「ふ、ふざけんな。助けろよ!!」
俺はそんな少年の言葉を聞きながら振り向いて交差点を渡る。
「お、お前も! 殺してやる!!」
はッは。
やれるもんなら、やってみな。
「・・・・じゅあな」
極悪非道な殺人犯さん。
信号は赤から青に変わった。
・・・・女はブレーキを踏む素振りもないまま自動車を前に進め、少年の全身を踏み砕いた。
「ふッふ。ぶっ殺してやったわ」
女そう呟いて。
隣に倒れている息子を撫でた。
けれど。
あの撫でられた時の喜んだ笑顔は一生返ってこなかった。