社交的になった透明人間
なんとなーく、ノリで書きました。
その男はとても内気だった。
女性と話すのは苦手……。だけど、彼女はほしい。
彼女はほしいけど、異性との交流は皆無。
そんなわけだから、いつまでたっても彼女なんかできるはずがなかった。
しかし――だ。
しかしながら。
中島敦の『山月記』や、フランツ・カフカの『変身』くらいに、突拍子もない設定だが。
その男は内気な性格ゆえに――透明人間になることができたのだ。
透明人間――
コメディーのオチとしては定番である。
だが、この男の持つ能力は少々特殊で、『消えたいときにだけ姿を消せる』というものだった。
消えたいと願えば、姿が消えるのである。
このような能力を、さきほどのシャイな男がもってしまえば、一日中、自宅にこもってしまうにちがいない。
そう考えた読者もいるはずだろう。
だが実際には、そうはならなかった。
どころか、男は一回も姿を消すことはなかった。
なぜならば――
いざとなったら姿を消せばいいと思い、異性に話しかけてみたところ……
思いのほか楽しく、雑談に興じることができたからだ。
それからもたくさんの友だちができた。
そして男はだんだんと社交的になっていったのである。
もし――姿を消すことを選んでいたら、こうはならなかったはずだ。
『消えたいときにだけ姿を消せる』……それが、この男が得た能力。
消えたいときにだけ姿は消せるけれども、姿を消したらそれっきり――もとには戻れないのだから。
「透明人間になったら、女風呂をのぞく」というのは定番のギャグですが、もし本当に透明になれるのだとしたら拍子抜けして、気力がなえてしまうのではないでしょうか。