印河泰治死す
尊師♪尊師♪尊師尊師尊師♪
テレビから尊師の美声が聞こえる。ここ神聖シャンバラ連邦共和国は朝4時になると各テレビ局は聖尊歌を流さなくてはならないという法律がある。この聖尊歌は初代尊師が考案し3年かけて作り上げた物である。そしてこの歌には尊民(尊師の為の国民)のPOAを高める力があるらしい。
だが、その効果は私には効かないらしい。私は修行を始めて今年で17年、父は正大師であるというのに私にはPOAを使いこなす所か、POAを発動、具現することすらできないのだ。
そんな事を思いながら私はいつも通り一人で朝食を食べる。父は先月、尊師に緊急の聖尊会議に呼び出され不在である。母は2年前にPOAの暴走により自爆した。父の正大師としての仕事もあり、この二年、常に私は一人だった。だが私は父を恨んではいない。父が正大師であるおかげで私はあの超難関大学「シヴァ聖尊大学校」への裏口入学が決定しているのである。このおかげで私はPOAが無いとしても今後、人並み以上に幸せな生活を約束されているのである。
そして今日も学校へ行くのである。
「行ってきます」
家に誰もいないというのにこの言葉を言うのは自分を一人だと思わない為らしい。
家のドアを出るとそこには父である泰男が立っていた
「父上!」
「泰治ゥ…」
1ヶ月ぶりの家族の会話である。しかし彼等にこれ以上の会話は不可能である。なぜなら…
ドサッ!
「父上ェェェェェェェェェ!!」
父の背中にはナイフが刺さっていた。
「アイエエエエ! チチウエ!? チチウエナンデ!?」
泰治の言葉は言葉になっていなかった。
「落ち着けェ…泰治ゥ…」
「チチウエ!?」
「お前に私の聖名を託すゥ… これからは、カルザイ・ウランバートルと、名乗れェ…」
「チチウエ!オキヲタシカァニィ!」
「お前に、、最後に伝え、なくてはな、らないことがあるゥ…」
「チチウエ!シャベラナイデクダァサイィ!」
「お前、の本、当の、父は、尊、、師、、、、だァ」 ガクッ…
「チチウエエエエエエェェェェ!!」
泰治は目の前の事実を認識できなかった。
泰治は二年に前にも目の前で家族を失ったのだ。そして今回も大切な人を失ったのである。
(゜∀゜)アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
「ダレダァ!?」
何も無い虚空から一人の青年が現れた。
「私はクリストファーロビン・クアラルンプール、次期尊師候補№1にして最強の正大師だ」
「オマエェガァチチウエェをコロシタァノカァ!?」
「もち」
「ナラ、俺バ貴様オ゛ムッ殺ス」
その時、泰治の右手にメロンパンが具現した。泰治は父を失った痛みと怒りでPOAを発動させたのである。
「聖尊力…たったの30か…ゴミめ…」
クアラルンプールは泰治をメロンパンごと矢で射抜いた。
「………」
泰治は完璧に沈黙した。
「所詮、最弱が正大師最強である。俺に勝てる訳がないだろう」
こうしてクアラルンプールは去っていった。
ここでクアラルンプールが泰治の生死を確認していたならば、後の勝敗は大きく変わっていたのであろう…