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7

 春の日差しが教室に差し込む。

 悠祐と啓太は授業に少し遅れたものの、「生徒会の仕事の手伝いです」と言って難を逃れた。教師は仕方がない、という顔をして授業を再開する。


 副会長の淳也はいい顔をしなかったが、生徒会長の許可は取れている。というか、そう言えと言ったのは会長自身である。悠祐と啓太はその効力に驚きながら、席に着いた。



 気だるい古文の授業を受けながら、先ほどの侵入者を思い浮かべる。

 胸が、締め付けられるような錯覚に陥る。

 悠祐は気を紛らわそうと窓の外を眺めた。

 広々としたグラウンドでは、青天の下、隣の二クラスの生徒たちが体育の授業を受けている。

 そこへ走って合流する二人の生徒。

 淳也と璉だ。

 先ほどの新入でダメージを受けていたようだが、回復したようだ。

 二人は体育教師に会釈し、おそらく事情を話し、また礼をすると自分のクラスへと走っていく。

 ホッとしながらも、その二人を見る悠祐の心は複雑だ。


「何考えてんだろうなぁ……紅架は」


 声にならない声で呟く。

 思考を巡らすのはこの町の頂点に立つ紅架一族のこと。

 有力者のほとんどは紅架出身か繋がりの深い者である。この学校もそうした紅架一族が作ったものであるのは誰が何を言わなくても知っている事実だった。

 そして、悠祐が先ほどから眺めている二人も、紅架一族である。

 というより、


(池田に至ってはほぼトップだしな……)

 

 池田璉。

 彼女はこの学校の理事長の娘である。

 そしてこの学校の生徒会長でもあった。

 そう、生徒会の名を使うように言ったのは彼女である。


 再び巡る思考を元に戻す。

 紅架一族は自分たちの一族以外が権威を持つことを嫌悪する。

 悠祐が扉を守る鍵に選ばれることを良いと思っていないことは明白であるが、こうやって助けたりもする。


 鍵。

 扉を守る「門番」と呼ばれる七人の上に立つ唯一無二の存在とされる。

 その力は門番達を凌ぎ、扉を絶対的に支配することができる。


 つまり、あの扉の力を使って、世界を渡ることができるのだ。




 三年前、悠祐は鍵に選ばれた。

 その時は選ばれたことの本当の意味を知らなかったし、喜ぶ両親の願いを叶えられたと嬉しくもなったものだ。


 鍵は、長年紅架から選ばれていたから。


 しかし、鍵になってしばらくすると、不可解な出来事が多くなった。

 まるで、悠祐を亡きものにするかのような。

 両親は悠祐の代わりに命を取られ、今この世にはいない。

 親族の者は、紅架のせいだと影で噂した。

 悠祐もその通りだと思ったが、次第にそれだけではないことが分かってくる。


 後々、「鍵」という存在自体が狙われているのだと、知ることになった。



 チャイムが鳴り授業が終わる。

 悠祐は回想を中断する。

 古文の教師は早々に教室を後にし、悠祐に解答の順番が回ってくることはなかった。


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