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「今日もお弁当おいしいなぁ」


 にこにこしながら(れん)は友人2人との昼食を楽しんでいた。

 会話内容はもっぱら恋愛か、人気のある教師の話か、ダイエットかおしゃれの話かである。


「璉はどんな人がタイプだっけ?」


 結に聞かれ、璉はんーと考え込んだ。


「包容力があって、決断力もある人かなあ」


「それって相当大人な人じゃないとだめだよね。ま、私も似たようなもんだけどさ」


 結が笑いながら自分のお弁当をつまむ。


「でも結には雅之、っていう立派な彼氏がいるじゃん」


 もう一人の友人、沙希がにやにや笑いながらパックジュースのストローをくわえた。


「まーね。でも、璉だっているじゃない」


 ほら、と結が教室の入り口を指差す先に。


「噂をすればなんとやら」




「璉!」


 教室に声が響く。教室で食事中の生徒は何事かと声のした方を見た。

 そこには、この学校の生徒副会長が険しい顔をして立っている。そして璉を見つけると、すたすたと歩み寄った。


「ちょっと来い!」


「いた、ちょっと淳也痛いって!」


 腕を掴まれた璉は、ずるずるとドアに向かって引きずられていく。


 結と沙希はにっこりと笑いながらひらひらと璉に手を振った。


 他の生徒たちはまたか、という顔をすると自分たちの話を再開する。

 「おべんとーがっ!」という悲痛な叫びは、聞かなかったことにしておくのが身のためだ。過去にせめてお弁当だけでも、と追いかけた生徒が半泣きになって帰ってきて以来の暗黙の了解である。




 ずるずると人気の少ない廊下まで引きずられた璉は、自分を引きずる相手に抗議の視線を向ける。


「まだ卵焼き食べてないんだけどー」


「……おまえ、俺見ても何も感じないか?」


 ここまで璉を引きずってきた淳也は、璉の抗議などお構いなしに、真剣な表情で詰め寄った。

 璉はと言うと、目線を合わそうとしない。ほんのり頬が染まっているのは気のせいか。


「じゅ、淳也にそんなこと言われるなんて…」


 璉の横顔を呆れ顔で眺めた淳也は、ため息をつき言葉を続けた。


「何勘違いしてんのか知らないけど、錠として何か感じないか?」


「え…ああ、なんだ。なんかさっきからむずむずするけど、大丈夫。もうすぐ悠祐君着くみた…ひあっ!」


 少し残念そうな顔をしながら質問に答える璉が、唐突に声を上げた。

 脱力し、その場に膝をつく。


「どうした?!」


 淳也がくず折れる璉を支えた。


「なんか、変!体が熱くなって……!」


「大丈夫か?攻撃されてるのか!?」


 璉は淳也にしがみついた。その手はカタカタと震え、目には涙が浮かんでいる。


「何なんだろう…体が、ばらばらになるみたい。気持ち悪いよぉ…」


 顔は血の気が引き真っ青である。



「…仕方ない。璉、ちょっと我慢しろよ」


 周りに誰もいないのを確認すると淳也は璉の頭を胸に押しつけるように抱きしめた。

 璉の目が軽く見開かれる。

 二人を中心として陣が浮かび、瞬間、その姿は消えうせた。


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