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彼は階段の上から町を見下ろす。
朝焼けに染まる家々。大半の人々がまだ夢の中であろう町。
彼は、数日前に最期を迎えた少女のことを思っていた。
「思ったより、早かったな……」
少女と少女の姉のために行使した力。後でもの凄く怒られたが後悔はしていない。それができないなら自分の力など要らないと思った。そのことを伝えると、渋々ではあるが納得してくれた。
少女は彼にとって忘れられない存在であった。そしてその姉も。
彼は目を閉じる。少女の笑顔。彼女の姿。思い浮かぶものは彼を切なくさせる。
自分がしたことは正しかったのか。
後悔はしないが疑問は残る。あの姉妹にできること全てできたのか。それはもう、わからない。
日の角度が変わる頃、彼は目を開く。町は装いを少し変え、人が動くざわめきが遠くに聞こえた。
彼は大きく伸びをすると振り返る。
その先の拝殿。その前で声をかけた年下の女の子。
会えるかはわからない。けれどいつかもう一度彼女に会えたら聞いてみたい。
あれで良かったのか、と。
彼は、彼の日常を過ごすために階段を駆け降りた。
微かな揺らぎを胸に感じながら。