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12

 悠祐は不思議だった。


 なぜ、こんなことをしてしまったのか。

 会って二回目にも関わらず、まるで以前から知っているかのように振舞ってしまうのはなぜなのか。


「ほんと、寝てなかったんだな。隈出てるからそうかと思ったけど」


 腕の中で眠る後輩を眺めながら、先ほどまでのことを思い出し……。


「恥ずかしさで死ねる……」

 赤面した。


「なんつークサイことを俺は……」


 言いながらも、理由は分かっている。

 なぜ悠祐が彼女を気にかけるのか。

 十分すぎるほどに。


「仕方ねーか……」

「何が?」


 ぼそりと呟いた悠祐の言葉に問う声。

 驚いた悠祐が顔を上げると、目の前に啓太が立っていた。


「おまえ、こんなとこで何してんの?寝てる女の子抱きしめて……セクハラもいいとこだぞ」


「そうかもな……っておまえ、どっから見てたわけ?」


 慌てる悠祐に啓太はにやりと笑う。


「見られたら困ることでもしてたんですね、悠祐君」

「……」


 悠祐は何も言い返せず、視線をそらす。


「……まじで?」


 聞いた啓太が焦ったように悠祐と絢理を見比べる。


「何もしてねーよ……」

「説得力皆無だな」


 啓太は呆れたようにその場でため息をついた。


「ダメだからな。おまえ、今自分の立場よーく考えとけよ。もし紅架のおやじさんの耳にでも入ったら……」

「わかってるよ。それに、ちょっと、その、何というか、やましいことはしてない……はず」

「不安すぎる」


 断言した啓太は再度息をつくと、改めて悠祐に向き直る。


「で、何。恋でもしたか、おまえは」

「……みてーだわ」


 思っていたのとは逆の答えに、啓太は驚き硬直する。


「あの時から、気にはなってたけど……今回で確信したかも、俺」



 あの時。

 神社の境内で、毎日のように真剣に何かを探す彼女が気になった。

 気付けば目で追うようになっていた。

 

 あの日。

 いつもより長く願い事をしている彼女が気になった。

 そして、声をかけた。

 その時には、もう。



「好き、みたいだわ」

 

 彼女の寝顔を眺める。黒い髪が肩をさらりと流れ、白い肌が夕闇に浮かぶ。

 その細い指は、悠祐の制服をしっかりと掴んでいた。


 悠祐の脳裏に、彼女が意識を失う前に言った言葉が響く。



 『約束、ですよ』



 彼女がどんなことを思って呟いたのか。


 それは、彼女が目覚めてもわからないかもしれない。


 それでもいいと、悠祐は思った。



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